第三話 「Earth nEws」

「え~それじゃあ、とりあえず、面下の記事の方は


 エレーナさんと中根さんの


 記事でどうですか...」


「ああ、それでいいかもな」


「Несмотря ни на что,


 я съел слишком много


 в эти дни ...

(いくら何でも、最近はちょっと


 食べすぎだけどね...)」


「ちょっと....」


「太田....」


第四編集局の室内で、自分達が担当している


「アロ!・コムソモーレツ」紙の


インターネット版のサイトに掲載する


記事を決める会議の様な物が始まり、


隆和が室内の部下たちに紙面の構成の


アイデアを出させていると、


いつの間にかデスクの役職が付いた新人社員


礼文 健一が自分の席で周りの局員に向かって


声高に意見を発しているのが見える....


「少し、よくないですね...」


「・・・ん。」


隆和、そして太田は礼文の動きを見て


局内のパワーバランスが崩れている事を


敏感に察知したのか、


すぐ側に座っていた太田がきな臭い表情を見せる


「あいつ...」


"クイッ"


「え~、じゃあ、の記事の方は....」


「先週と同じ、中根君の、食レポでどうですか?」


礼文と三咲がやり取りをしているのを聞きながら、


太田は何か会議の様な物をしている


他の同僚達に向かってアゴを傾かせると、


脇にいる隆和に視線を送る....


「ちょっと、あいつ....」


「(・・・・・)」


視線の先を見て隆和は、自分の先輩、


上司であるヨーロッパ管区総局長の河野が


この藻須区輪亜部新聞社を訪れてからの


三か月ほどの出来事を思い返す....


「(―――――礼文...)」


~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~


「おい! また礼文の記事が、


 Earth nEwsに掲載されてるぞ!?」


「あ、本当ですか?」


【Earth nEws】


日朝、そしてその日朝と業務提携をした


フランスに本社を置く、世界的な通信社、


"アラベスク"が新しく立ち上げた


全世界版のニュースサイトの事で、


この新しく立ち上がったインターネット版の


Earth nEwsのニュースサイトに日朝、そして


アラベスクの各国の記者たちが


記事を寄稿する事によって、


このEarth nEwsのサイトは成り立っている....


「Earth nEwsには、日本とか


 ロシアだけじゃなくて


 ほとんど全世界の記者が寄稿した


 記事しか掲載されないんだろ?」


「それで、掲載されるって、礼文君、


 すご~い!」


「い、いや、そんな事は....」


「(・・・・)」


この、アラベスク。そして日朝本社が


共同で運営に携わるEarth nEwsのサイトに


記事を掲載する事ができれば、それは


日朝本社、引いてはアラベスクや


世界中の報道機関から


評価、そして認知を受ける事になる....


「(だが....)」


このEarth nEwsに自分が発案した記事を


掲載される事が日朝の社員、更には


アラベスクの記者達の至上命題となっていたが、


そのEarth nEwsにこの三か月程の間で


最も記事を掲載されたのは


編集長である隆和でも無く、


そして他の中堅社員達でもなく


日朝の新人社員である、ロシア人のクォーター


"礼文 健一"だった....


「いや、たまたま、河野さんと一緒に


 仕事してたから、


 それのおこぼれみたいなもんスよ」


「いや、だからってお前


 この記事の掲載本数は


 大したモンじゃないか...


 他の各国のヴェテラン記者だって


 みんなこのEarth nEwsに記事を


 掲載されたがってるんだろう?」


「ハハハハ....」


「(―――――)」


「こりゃ、本社から何か表彰されるとかも


あるかも知れんな!」


「表彰ですかー....」


「(―――――)」


「いえ、礼文君、これは、ワンチャン


 河野総局長がいるドイツ支局に


 栄転もあるかも知れないですよ」


「い、いや、そこまでは―――!」


「(―――――、)」


「Вы новичок, но это


 большое дело!

(アンタ、新人だってのに、大したモンだね!)」


「(――――礼文...、)」


「いや、これもみんなのおかげですよ」


「そうだな!」


「アハハ! アハハハ!」


「(―――――、)」


「おいおい! 今日は


 メシでも食いに行くか!?」


「え、またっスか~!」


「おいおい中根!? あんま食ってっと


 糖尿病になっちまうぞ!?」


「おい、止せよ~」


「アハハ!」


「アハハハハ!」


「(―――――...)」


第四編集局の社員達の視線が


礼文に向かう中、


「(―――――"3人"か...)」


隆和は、自分が最近立ち上げた


個人サイト


"トゥルーレジェンズ・暁 麻衣(風属性)"


「(もう少し、アクセス解析とか


 した方がいいか...?)」


"カチッ カチチッ!


のホームページに表示された、この一月の


サイトへのアクセス数を確認しながら


「(そういや、もうすぐ、"トゥルレジェ"の


  2が出るらしいな...)」


"カチッ カチチッ"


一人別ブラウザで


"アーマー・アンド・トゥルーレジェンズ~

(天界に降り立った、最後の女子大生)


の公式サイトを見ていた....


「おい! シュガー! シュガー食おうぜ!」


「ま、またですか~?」


「アハハ!」


「アハハハハ!」

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