第59話 本当の貴方へ

「……」


目の前にいるのは、父親なのか、父親のコピーなのか

ただ確かな事として目の前にあるのは死体なのだ。



「ミナト、色々思う所あるんでしょーけどね」

「すまないフリル、すぐ俺も引き上げよう」

「作戦でね?間違った映像を流させる……ってあったでしょ?」

「ああ、それがどうした?」

「それは銃が発射された映像の方だけだよ」

「え」

「各国から私たち空を飛ぶ魔族が、兵を集めてきたの」

「どうやって?俺が弱っているとでも言ったのか?」

「……魔王様が魔力が無い事は言って無いよ」


不思議だった、いくら各国がバースの脅威を分かっていても

兵士という貴重な人材を派遣してくれる事が

『魔王に任せておけばいい』という空気の中である

自分もそれは間違った選択だとは思わないし実際、回復すれば街の一つぐらい消し飛ばすだけの火は吐ける



「何で、そんな事に」

「父親だって言ったのよ」

「え」

「子供が父を殺せないと言ってるのよ?普通でしょ、だったら各国で兵だすしかないじゃない」

「……そんな」

「親子だって知られた事が嫌とか子供じみた事言わないわよね?」

「ああ、もはやどうでもいい」

「え」

「一刻も早く、愛する妻の元に帰りたくなってきた」



「怪我してるんでゆっくりお願いします」


イチは帰ったら溜まっているであろう書類にげんなりしつつ



――――――――――――――――――――――――――――――――



ナナショク王国に戻って来た、フリルに頼んで城に上空から降ろして貰い妻の姿を見つける。



「6024!」

「良かった……本当に良かった」

「どうしてそんなに泣いてるんだ?俺は生きて戻って来たのに」

「ゼルっさんが!!」



階段を駆け下り、兄が寝ている筈の医務室へと向かった



「にい、さま?」

「……」


そこには兄が『二人』いた

ベッドにいる方は少しも動かない



「こっちの身体はもう、駄目ですね」

「何いってるんだ!?移植手術はしただろう!?成功したってヴァイドは!!!」

「……私なら、ここにいますよミナト」


動ける方の兄が、振り向く

違う、コピーは、違う、だけど否定したら

なんでそっちは動かない?



「くそ兄貴!!!」

「……」

「何でいつも、自分の事は大切にして……くれないのですか?」


動かない兄と動く兄、コピー、クローン



「ミナト、おげんきで」

「!?」

「……私はもう、行きます」

「ど、どこに行くっていうんだ!?」

「処刑場ですよ」

「え」

「私はバースを手伝っていたんです、あの世界の私は死にましたが……各国の転生者は気づいて、今回の事もバースの手先として見ています」

「兄様は今回、手伝ってくれたではありませんか!」

「大罪人をかかえたままでは、国の信用がおちますよ」


外に出て行こうとするゼルを王妃が止めた







「僕、これがほしい」




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