第51話 バース

旧世界



「このままでは、日本は駄目になってしまう……」


栄養が足りない、人の手が足りない、なのにロクデナシどもが増えていく

血のつながりがあるだけで育てなければいけないなど

産まれたら『命』だ殺すなだの、たった一人の赤ん坊に資材をどれほど使い

薬だって高いしそんな死にやすい役立たずに何故



「いや、待てよ?」


最初に考えたのは『遺伝知能』、我が子ならば最高の助手になるだろう

レイプでは犯罪だが何か手はないだろうか?


そこで考えたのがクローンを運営するというもの

世界各国から非難の声が在る中だが日本という国がらは批判はあっても実際動く者は少なく

子供を産ませるための肉体がいくつか手に入ったので試験を開始した。

何人かは失敗して『廃棄』したが、ようやく一人だけ成功したのが出来たのだ。


「ゼルだけか……まぁいい」


だがしかし成功とは言えなかった、彼は『家族』という曖昧な物にすがりついた

家庭教師を雇っているのに父親に教わりたいだのと

専門家に教わる方がいいと分からないほどに愚かな息子を持ってしまい絶望していた頃


ついにクローンを量産する事に成功した、姿形が同じで優秀な存在。


「おめでとうございます、お父さま」

「これで完璧な人間を量産できる……そうなれば優れていない人間の要らなさなどすぐ分かる」



しかし結果としてクローンがただ消費され、人間が優れている筈のクローンを虐げた



「こんなはずでは……うん?」



一人の失敗したクローンの体内に形成された余計な臓器

それはまるで『魔力』とでも呼ぶべきエネルギーで

ハッキリ言って何でも出来る物質だった



「これだ、これを未来につなげられれば……!」


様々な演算の結果、古い人々をを消して新しく1億年後の未来に作り直すのが最善だった。

だがそのためには自分と同じ遺伝子の者が増幅装置となる必要がある

再びクローンに子供を作らせた、最後に文字が読めなくては『魔法』とでも呼ぶべき物が発動出来ない。

家族だから大切などと言っていた兄の存在は丁度よく世話を任せていた。


そしてようやく計画を実行しようとすると、教育プログラムに反対だなどと言って来た

そもそも自分が何のために産まれたのかすら知らないのだ、礎になれるというのに

世間では処刑としておいていよいよ計画の最終段階に入った。


信じられない事が起きた、ミナトがゼルにより逃がされたのだ。


「……とうさ、ま!?」

「出来損ないがっ!!!!」


ゼルを銃で処分して事故とした、しかしこれは最後に役だってもらえるかもしれない

最後のコードを3710番目に産まれたあの子に言わせれば計画は終わりなのだ。

わざと屋敷の警備を緩めて帰りやすくしておこう

そして死体のそばに珍しい紙媒体があれば遺品として持っていく

完璧な筈だったのに、計画は狂った。

呪文を唱える時に近くにいるのは私の予定だったのに、訳が分からないクローンの死骸

さらに何故か『呪文を読み間違えた』のだ。

おかげで世界最強の私が支配する計画が狂ってしまった


だがしかし、まだどうにかなる、魔王の魔力を創る臓物さえこちらの手中に収めれば今世界を握るすべてが手に入るのだ。






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