第49話 魔王

その狙撃は、誰もが予想外だった

部屋の中で壁を破壊せずにゼルだけを狙い

正確に心臓があった場所に穴をあけていた。



「そんな……兄さま、兄さま!!」

「動かさないで、カイフ」

「傷を治す魔法とはいえ間に合わないだろ!?」

「王妃様、ヴァイドを大至急呼んで来て下さい」

「分かった!」

「俺が……」

「いいですか、今からとんでもない事いいます……多分魔王様の腹を切ります」

「何故!?」

「説明している時間がありません、私を信じて下さい」




―――――――――――――――――――――――――――――


医務室にて


「魔王の心臓を切り取れ!?本気で言ってるのか!!」

「はい」

「そんな事したら死ぬだろ」

「死にません」

「……ミナト、まじでやるのか?」

「6155を信じる」

「王妃様が反対しないのか!?」

「僕らのお兄ちゃんを、助けて」


――――――――――――――――――――――――――――




そして








「手術は終わった」

「どうでした?」

「魔王の回復力が化け物だったの忘れてたが……切り取った心臓生えた時には化け物かと」

「あーはい」

「移植手術なんて本来死体からやる手術を生きた奴でやれとはな」

「そんな変な事いいました?」

「クローンにとっちゃ普通かもしれねぇけどなぁ!?」

「良かった、良かったぁッ!!」



お兄ちゃんが死んだかと思った、例え血のつながりはなくとも兄という憧れの存在

それも優しくて、いろんな事を犠牲に家族を守ってくれる優しい兄が

良かったと泣く王妃を魔王はよしよしと撫でている

医者ヴァイドは煙草に火をつけつつ


「だがゼルの方は絶対安静だからな、魔王はケロっとしてるが」

「頑丈だとは思いましたが心臓きって元気なんです?」

「やれって言ったのお前だろ!」

「そんなすぐ元気になるのまでは想像してませんよ?ただ大怪我してもちょっとすれば何時もすぐ元気になっていたのでハッキリ言ってカケでした」

「なんつー事やらせるんだ」

「最悪死んでもいいかなって」

「はぁ!?」

「どうも敵は魔王様を殺す気がないので、何かしら手はうってあるだろうなと」

「……」

「立ったまま気絶してますよ、器用な人ですね」



「お前なんて事やらせて―――!」


「あ、ヘリウズさん」

「丁度良かった、この人を部屋で寝かせてあげるの手伝ってください」

「お前やることいつも肝がすわり過ぎてんだよ!!」

「そうですかね?」


「いや、俺が運ぶ」


魔王が医務室から出て来た、ピンピンしている


「今お前心臓切られたんだよな!?」

「俺がその程度で死ぬ訳ないだろう、強いからな」

「確かにいつも頑丈だとは思ってたけど」

「そういう訳で俺がいってくる」



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