第35話 自分

魔族とは『魔法が使える種族』の他に『勇者のいた世界で悪魔のような行いをした者』という意味もある



「何故、王妃様はあのような命令を……聞く事は出来ても、デタラメかもしれないんですがね」


6155は頭を抱えていた、クローンの過去を暴けと言われ実行する決意はしたものの

流石に聞いたら何でも答えてくれる訳でも無いだろう

肉体のメーカーぐらいは聞けるか、あるいは住んでいた地域なら?

『過去を聞け』という指示も漠然としすぎである



「兵士長さん」

「ダイヤ部隊の兵士さん?」



兵力増強に伴い分かりやすくトランプのマークでダイヤ、ハート、クラブ、スペードで部隊を分けた。

それぞれ制服がわずかに違い、見分けられるようになっている。

集まった兵の大半が魔族かクローンなので前世はある。


「とりあえず私のフルネームは長いのでペネと呼んで下さい」

「一応フルネームも教えてください」

「RBシリーズ500B69」

「ペネさん、何用で話しかけました?」

「私ダイヤ兵代表でさっき、会議にいたのですが」

「ああ、そうだったんですね」

「……私でよければ話しますよ」

「とっっっても助かります!」



部屋に招いて、とりあえず聞く流れになったのだが


何故か8人も来ていた



「なんだか多いですね?」

「こっちの世界に来てからプライドってものが心に張り付きまして」

「それで?」

「今、街中で噂になってるんです『役立たずの駄目兵士』って」

「えーと、私が?」

「いいえ我々『トランプの兵』がですよ、褒美だけが目的だったから所詮かざりとか」


確かに事件はあっというまに城下町に広がってしまった

国中誰もが知り、噂には尾ひれがついて兵士たちは嫌な思いをしただろう


「そう、ですか」

「何より『本当にかざり』として置かれるのは嫌なので」

「えーと」

「つまり役にたつ為に私たちの過去を話します」

「助かります」

「それと先にお聞きしたいのですが、兵士長はどのような過去をお持ちで?」



質問されて10秒ほど固まった


「え」

「手本をお願いします、それに合わせて私たちも話そうかと」

「確かに手本はいるのかもしれませんが、平均とはだいぶ違う生活をしていたので……」

「先に言ってくだされば、こちらも言いやすくなりますから」



8人全員が此方を見てる、というより



「単純な好奇心では絶対失礼にあたる恐れがあって聞けないのを、聞けるチャンスですからね」

「興味本位で集まったんですか、いいですけどね」


まさか自分の事を話せから来るとは思わなかったが

きちんと『違う』ことを話しておくべきだろう

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