第13話(上)


「おぉ、いい部屋ですね~~」


「すごい……」


「ありがとうございます。ここの部屋でしたら広縁の窓から覗ける山の景色が絶海ですのでよろしければ後でご覧ください」


「はいっ、ありがとうございます!」


「お荷物、こちらに置かせていただきますね。それと、フロントには内線電話の8番におかけください。モーニングコールもやっていますので是非。では、私たちはこれで、ごゆっくりお楽しみくださいませ」


「頑張ってくださいね」


 一人の方が深々とお辞儀しながらドアを閉める瞬間。もう一人の方が翔の方を見つめながらニヤニヤと視線を送っていた。


 さすが、混浴があると補足を教えてくれだけあるんだなと思うと同時に余計なお世話だよとも感じる。


 全く、美人なのにそういうこと言う女の子はモテないぞと教えてあげたいくらいだ。


 とまあ、それの逆にだ。

 今回の旅行はそう言った目的ではない。今までの変な関係を払拭しこれからも仲良くなっていき、清純な付き合いを始めるためでもある。


 まぁ、葵が先走ったのもあるけど。葵なりもちゃんと選んでくれたのだろうと文句は言わない。


 とりあえず、終わったことを考えるのはやめてこの後をどうするかだ。


(ただ、混浴と足湯……せめて足湯にはいきたいし、って——やめようか、余りやましいことは考えちゃいけない。葵が行きたいなら俺も赴けばいいのだ。言い出しっぺはあくまでこいつだしな)


「とりあえず、どうする?」


 葵がリュックをごそごそとして着替えなどを取り出しているのを見ながら翔がそう訊ねると葵も同じように訊き返す。


「ん~~、翔はどこに行きたい?」


「え、俺?」


「うん……私、その……温泉以外考えてなくて」


「おい……まぁいいけどさ」


 とは言ったが葵がいろんな場所に連れてくれるのかと思っていた翔としてはあまり考えていなかった。


 理由としては車の運転をしていたのもあるし、それに予備知識もなく、道中にどこか寄りながら来た感じでもない。


 正直、この辺の地域の観光地もよく分からないし……こうなるくらいならしっかりと考えてくるべきだったなと今更ながら後悔しているわけだ。


(それに、だ。混浴と足湯しかおすすめされなかったしな)


「にしても、俺も分からんしな……見た感じ観光地は山奥っぽいけど」


「うーん、さっきのお姉さんもあれだよね。足湯とか……あとは、うん。そんな感じかな」


(おい、葵のやつ露骨に混浴については言わなかったぞ。まぁ、最近の混浴はご年配の方も多いし、おじさんに見られたくないとかあるのもかもしれないが……)


(混浴は早いよね……)


 どうやら食い違いがもう生まれているようだ。

 

 にしても、せっかくの旅行地に来てまで部屋でだらだらするのも変な気がする。


 今までもあまり外には出てこなかった翔としてはせっかく遠出して温泉街まで来ているのだから何かはしたい。


 それに、あまりこう言った室内にいると変な空気にもなってしまう。


「——まぁ、それなら足湯に行ってみるか」


「そ、そうだね……わかった」


 とりあえず二人は予防線を張るためにも外に出ることを決めたのだった。





 ——なんてそうは問屋が卸さない。


 コクっと頷く葵を横目に、翔の方もリュックサックの中身を整理することにした。とまぁ、さすがに外に出歩くのに重い状態で行くわけにもいくまい。手ぶらの方がいいだろう。


 ガチャガチャと要らないものを出したり、必要なものを上着のぽっけに入れたりを繰り返していると何か見覚えのあるものがぽろっと中から出てきた。


「うぉ」


 翔が少し驚いて言葉を洩らす。


「——ん、どうかしt」


 それに反応して隣で支度をしていた葵が振り向くと同時、その瞬間。床に無造作に落ちたそれが目に入る。


「え」


「——ちょっと‼‼」


 翔のリュックから出てきたのは真っ赤なパンツだった。ちなみに女用で、花柄の刺繍が入っているいかにも高そうなものだった。


「おい、なんで俺のリュックから―—」


「だ、黙って‼‼」


 いきなりの事でよく分からなくなった翔に、いぶかしげにジト目を向ける葵。その瞬間、理解する。


(え、俺じゃないよ? ま、ままま、まさか俺が付き合ってもいない幼馴染のパンツ盗むわけがなかろうよ!!)


 心の中で全力否定するもその言葉は聞こえない。ハッとして、すぐさま口に出す翔。


「——いや、別に俺じゃないぞ! 俺はとってないからな!!」


「変態」


「嫌だから俺じゃなくて——」


「うっさい、変態」


 そこから数時間、葵が口をなかなか聞いてくれなかったのは言うまでもなかろう。いや、だってさ。まさかリュックから幼馴染の色気むんむんな赤色パンツが出てくるとは思わないじゃん?









 

 すみません、本日色々と立て込んでいましてここまでしか書けませんでした。深夜0時あたりに新しく書けましたら(下)の方を投稿させていただきますのでよろしくお願いします。誠に勝手ながら申し訳ございません。














  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る