とあるエリートOLの冷蔵庫

平行宇宙

第1話

 高瀬唯26歳。

 日本で3本の指に入る国立大学を優秀な成績で卒業。

 日本でも有名な某外資系企業に就職。英語を使って世界を相手に仕事をしたいっていう夢が叶った、といっていいだろう。

 入社4年目。

 それなりに認められ、2人とはいえ、部下がいる。

 1人は女で1人は男。

 知ってるかどうか知らないけど、学生時代までは普通に男女平等だ、なんて育ったてもね、社会人になって思い知らされる男尊女卑。

 そんな中で、男の部下を持つ私は、かなり認められてるっていっていいと思う。

 実際、会社での私の評判はすこぶる良い。

 女性的な細やかさと、素早い処理能力、完璧な英語を操るスーパーガール。

 私のようになりたいと憧れる女性社員も多いと聞く。

 心の中でニマニマしても、外には絶対に表さない。いつもクールなスーパーレディ。



 私の今の部署は輸出部門でインボイスを製作すること。担当している相手の国が、イギリス、オランダ、ポーランドにある企業だから、時差を考えて、基本的には昼12時ごろ出社で20時定時の大体2,3時間残業がパターンかな。うちの会社は、基本的にフレックス制。出社は自由。8時間が正規労働ってなってる。相手が外国なんで時差を考えて、その方が便利ってことで、政府主導よりもずっと前からこういうパターンを取っていたみたい。


 女がそれなりの地位を得るのは、実は想像以上に難しい。

 まだ外資系で、相手の会社が海外も多いから、そう言う意味では私の会社はだけどね。

 海外だと女のボスも、そこそこ多い。

 出てくるのが男ばっかりだと、不機嫌になる人も多いのだとか。

 そういうこともあって、割と女性でも部下をもつことができるけど、あくまで他の会社と比べて、ってこと。だいたい同じ地位の男と女の優秀具合は、体感で1対3ぐらいあるんじゃないかって思う。

 平社員は別だけど、リーダーとか係長とか、班長とか、そんな地位を得る女の人は、基本的には同じ地位の男の人より優秀だ。あくまでも基本的には、であって、で、地位をゲットする女の風上にも押せない奴もいるから、絶対ではないけどね。

 なんでかっていうと、同じ能力ならその地位に就くのは男だから。

 任命者は男の場合が多いし、下につく人も同じ女ですら、女の上司は頼りないなんて思う人が多いからね。そんな逆境を乗り越えて、その能力で地位を勝ち取ったなら、十分に優秀な人材だっていえるのです。少なくとも同じランクにいる男より、優秀なこと間違いなし。


 長々と言ったけど、たとえ2人とはいえ、部下を持つ地位を実力でつかみ取り、あの人なら当然だよね、と言わしめている私は、まぁ、それなりに優秀だってこと。


 それにね、一応、お誘いは断らない。

 先輩だろうが同期だろうが後輩、得意先、基本的には交流は大事。昨今の若者は飲みに行かない、なんて言ってるけど、出世したいならこういう付き合いは大事だと思う。最後のチョイスの段階で、一緒に飲んだことのある人に天秤が傾くのは、人として当然だと思うから、小さなチャンスも逃したくないってのが本音かな。飲みだけじゃなく、休日の遊びのお誘いだって、極力行くようにしてるから、誘ってくれる人も多いし、親しくしてくれる人も多い。これって、かなりのアドバンテージ。

 自分の時間が大切です、ってのも分かるし、仕事関係の人と飲んだり遊んだりってつまんない、ってのも分かる。そうやって二の足踏む人がたくさんいるほど私にとってチャンスが増えるから、仕事よりプライベート、って人がいることも反対しないし、むしろチャンスをくれてありがとうって気持ちになる、かな。


 だけど、そんなお誘いだって、そうそうしょっちゅうあるわけじゃない。

 とくに最近は自粛だとかいろいろうるさいし、1週間なんにもない、なんてのも少なくない。

 今週も同じ。

 特に約束もなく、ただただ職場と自宅マンションを行き来する日々が、また、はじまる。

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