あの娘は、天使か悪魔か?

羽弦トリス

第1話初出勤日

僕の名前は平松貴史。大学を卒業して4月の今日が初出勤日である。

僕が所属する部署は、海運会社の総務課。

現場作業員は筋肉質で、僕は声が上ずった。

「お、おようございます。本日よりお世話になります、平松です。宜しくお願い致します」

作業監督が、

「お前、ガタイいいな。現場にこねぇか?」

僕が返答に窮していると、

「五島ちゃん。新人をいじめんなよ!さっ、あっち行った!しっしっ!」

五島ら、作業員はハイエースに乗り込み、現場に向かった。


この日は、各部署に挨拶周りをした。案内してくれたのが、朝、五島監督から救ってくれた、羽弦課長であった。

時間は午前10時過ぎ。

課長は

「おい、平松、ちょっとオレに付いてこいっ!」

「は、はいっ」

たどり着いたのは、会社から少し離れた喫茶店だった。

「平松、アイスコーヒーでいいか?暑いだろ?ジャケット脱げ脱げ!」

そう言われてジャケットを脱いで隣の椅子の上に乗っけた。

「平松、今日は緊張しただろ。今日は挨拶周りだけだからよ、暇潰そうぜ!」

僕は、羽弦課長がニッコリ笑うと、自然と安心する。


コーヒーが運ばれてきた。僕はブラックしか飲まない。課長は、アイスコーヒーにガムシロップ3つとミルクを2つ投入して、バシャバシャとかき混ぜている。

そして、ストローでチューチュー音を立てて飲んでいる姿を見て、大人ぶってブラックを飲んでいる自分の姿が恥ずかしくなった。

「課長はお仕事大丈夫ですか?」

「なんで?」

「い、いえ、僕なんかに付き合って頂けて」

「平松いいか~。出来るヤツは早朝に仕事済ますんだよ!君も早く10時のコーヒーを味わえる身分になりなさい」

「はいっ!」

「あっ、そうだ。今日は休みだが中川君ってね。かわいい女の子と今後、一緒に仕事してもらうから。彼女は高卒でうちに来たから、かれこれ4年選手だ。仲良くな!それと、現場作業員は皆、中川君に声かけたけど全滅だから、お前も変な気は起こさないように」

課長はストローでズズズーとコーヒーを飲んでいる。

僕は、今は仕事を覚えるのが第一の仕事だ!

女の子なんて、必要ない。

「さっ、平松、戻るぞ!」

「はいっ」

二人は喫茶店を後にした。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る