第35話
王太子の成人祝と誕生日祝のパーティーで、とても素敵なプレゼントが贈られましたわ。
私に。
王が公の場で大々的に発表してくださったのです。
王太子の血を受け継いだ男児の誕生を!
まだ正妃も迎えていないのに、後継ぎですか。
周りの高位貴族からは失笑が漏れています。
「王陛下、発言をお許しください」
お父様がにこやかに発言の許可を求めます。
何も知らなければ、祝の言葉でも言うのかと誤解しそうですわ。
「なんだ、言ってみろ」
王も機嫌良く許可しました。
「そもそも、そちらの令嬢はどなたなのですか?本来王家の方しかこちらの席にはいらっしゃらないはずですが……」
戸惑った様子で問い掛ける
「ちゃんと席が四つ有るだろうが!王太子の妻で王子の母だ!」
まぁ!いつの間に結婚なさったのかしら?
「そちらの席は、我が娘であり王太子殿下の婚約者であるアンシェリーの席です。そもそも、殿下は結婚されておりませんが」
「王太子は、卒業と同時に婚姻届を提出している!」
お父様が態とらしく困った顔をしております。
「残念ながら議会に上がって来ておりませんので、どこかで却下されたのでしょう」
一人の初老の男性が進み出ました。
大教会の神官長です。
結婚の許可を行うのは、王族だろうが貴族だろうが平民だろうが、変わらず教会です。
平民は近所の小さな教会で、貴族は領地にある教会や王都の教会で許可を貰えます。
しかし王族だけは大教会の許可が必要なのです。
書類を提出して、許可を貰うまでの確認を
「大教会は、王太子殿下とフローラ メルデス子爵令嬢の結婚を許可しておりません」
神官長がハッキリと宣言してくださいました。
「そして、未来永劫認める事は無いでしょう」
続いて言われた言葉に、王太子の顔が真っ赤に染まります。
血管が切れないのか心配になるほどです。
「なぜだ!後継ぎまで生んだ、素晴らしい女性だぞ!」
興奮した王太子は気付いておりませんが、会場内の貴族が移動を始めました。
高位貴族が王族の居る場所を離れ、私達の側へと動き出したのです。
この茶番劇が終わった瞬間に、皆様、私に挨拶をするつもりなのでしょうね。
王太子の行末を予想したのでしょう。
あまりにも馬鹿過ぎる発言ですものね。
そして王も王妃も、王太子と同じレベルだと露呈しました。
大教会が許可してない結婚に、結婚していないのに生まれた男児。
その意味を理解していないのは、もしかしたらあの一段高い所に居る彼等だけなのかもしれません。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます