第14話
怒涛の入学式から、既に三ヶ月が経過しました。
私は順調に自分の立場を確立しています。
出来の悪い王太子の代わりに、
それが今の私の評価です。
前回の『素晴らしい王太子の隣にいるだけの、派手好きな婚約者』ではありません。
「アンシェリー様、よろしいのですか?またあの子爵家の令嬢が殿下と人目もはばからずベタベタしておりましたよ!」
親切なクラスメートが報告してくださいます。
「殿下には学生時代しか自由がないのですから、しょうがありませんわ」
ウフフ、と笑う。
きっと私の表情は、躾のなっていない駄犬について語る飼い主の顔でしょう。
食堂で昼食を摂った後、生徒会室へ向かう途中の廊下です。
一緒にいるのは、勿論サンドラとカレーリナ。
先生に拝み倒されて生徒会副会長になった私は、条件としてこの二人も生徒会役員にしました。
生徒会長は王太子ですが、今のところ生徒会室に居るのを見たことがありませんね。
苦言を呈する人がいないからか、前回の五割増で駄目人間になっています。
立太子できたのが不思議でなりません。
これ、私が何かしなくても自滅しそうですよね。
しかし、それでは駄目なのです。
まずは王太子の評判を上げるところから始めましょう。
対外的には賢い王子に見えるように、ハリボテの鎧をまとって頂かなくては。
そう、本物の鎧では駄目なのです。
あくまでも必要なのは、
いつも三歩下がって付いて行っている、護衛の意味のない護衛。
王太子から生徒会室に呼び出されたのにもかかわらず、何の疑問も持たずにホイホイ来てしまうあたり側近としても護衛としても失格ね。
ノックと共に開かれた扉。
中の様子を見て呆けた顔で立ち尽くしているのは、伯爵家の者としてどうなのかしら?
「まず、返事が無いうちに扉を開くのはマナー違反です。扉を開けて入るでもなく、そのまま挨拶もせずに突っ立っているのもどうかと思いますが」
側に寄って行ったカレーリナが子息の背中を押し部屋の中へ招き入れ、扉を閉めました。
「で、殿下に呼ばれて来たんだ!お前達が居て驚いても当たり前だろう」
語尾が段々と小さくなっていったのは、隣に立つカレーリナから発せられている冷気のせいかしら。
「誰に向かって口をきいているのですか?貴方の身分は?」
私の隣にいるサンドラも、有無をも言わせぬ態度です。
さすが侯爵家の令嬢ですわね。
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