第41話 神の布使い誕生!

 騎士団の倉庫に着いた。


「えっと、先ずは野営道具一式ですね」


 言われて確認するとボロボロになった野営道具というか、テントがあった。


 皆晃司の後ろをついて回る。

 アモネスが回収の責任者だったのもあり晃司に同行すると意見を曲げず、結界金魚のフンのように皆がゾロゾロとついてきたのだ。


 そしてワーウルフの角と魔石がズラッと並べられているのを見て、皆がこれはどういった事なのかと不思議がっていた。

 そんな中、倉庫を案内していた若い騎士の次の言葉にアモネスとラミィ以外は絶句した。


「それとワーウルフの魔石38個と角を39本確認下さい。一夜、それもお1人で倒しただなんて凄いですね。うちの団長でも無理だって言っていましたよ。それと魔石は何処かに行ってしまったのか、数が合わないので承知願います」


「なっ!殿下、この晃司殿が1人で倒したというのは事実で?」


「セリーシャ様、晃司は私とパーティーを組んでいて、私なんかと違い元々単独でワーウルフを倒していたんですよ!強くて素敵ですよね!」


 3人娘が晃司の事をじっとりと見る。


「そうそう、1つ聞きたかったのですが、この角ですが、どうやったらこのようにスパッと斬れるのですか?」 


 騎士が質問をしてきた。


「ああ。それか。そこの薪の上にでもそれを置いてくれる?」


 晃司はバンダナ代わりに巻いている布を外し、魔力を込めてぴしっとした板状にするとその角へと振った。


 するとスパーンと綺麗に斬れて皆驚いていた。


「晃司様、それは武器なのですか?」


 アモネスに続きライラが驚きを口にする。


「それは発見時に頭に着けていたそうだが、私では外せなかったが一体それは・・・」


 アモネスがその布に手を触れようとしたが、その手を青毛のレナが掴んだ。


「駄目よ。それは駄目な奴よ。ライラなら良いけど、王族の貴女が触れてはいけないわ」


「どういう事かしら?」


「晃司と言いましたね。貴方、それが何か分かっているのですか?」


「これか?その辺に落ちていた布だぞ。ほら触ってみろ」


 レナはひぃーと唸りながら後退り、アモネスの手を引いて庇うようにした。


「止すのだ!乙女に何をする!斬るぞ!」


「ちょっと待て!ただの布だぞ!」


 ライラがその布を手に取り匂いを嗅いだりしたが首を振る。


「確かに布ですわ。それと晃司の匂いしかしないけど、貴女がそれ程の反応を示す物ではないと思いますわ」


「レナ、説明をお願いします。鑑定をしたのですね?」


「はい。アイテム名は神の褌。神が女神からの金的攻撃から身を守る為の褌。使い込まれており、臭いのきつい布。魔力を込めると何物をも斬り裂き、比類ない防御力を誇る。とあるのだが、使い古された褌をアモネス様に触れさそうとした貴様には万死に値する!」


 ライラが持っていた布をつい投げた。

 狙いが逸れ?わざと?晃司の方を向いていたレナに向かい、異変に気が付いたレナがライラの方を見ると、目の前に問題の布、いや褌が見えたが、避ける間もなく顔面を覆う。


 ひぃーと唸りながら気絶してしまった。


 晃司は震えながらその布を哀れなレナの顔から退けると手に取った。

 そしてライラのようにクンクンするも特に臭わない。


 しかし唸る。


「まじか・・・俺、ヘルム代わりに頭に巻いていたぞ。しかも顔を拭いたりも・・・」


「晃司様、既に洗われておりますわよね?」


「ああ。確かに最初拾った時に石を巻いて打撃武器にしていたけど、気の所為か小便臭がすると思ったけど、うげー!本当に小便だったのか・・・うん、その後アクション臭いから念入りに洗ったし、これのお陰で今生きているんだよな。しかし褌か・・・」


「プププ褌使いね!貴方らしくて宜しいのでは?」


「可哀想よ?せめて神の布使いにしてあげれば?神の褌使い?ふふふ」


 晃司は皆にいぢられていた。


「晃司殿、私は気にしないわよ。だって褌を頭に巻いていたのであって、女性の下着をかぶっているのではないから。でもそれもやりそうよね」


 ロリっ子にも言われてしまった。


「これは元々褌だったかも分からないが、今は俺の大事な布だ!布なんだよ!ほら臭わないから!なっ!頼むからそんな目で見るなよ」


 ネリスが手に取り臭いを嗅ぐ。


「ああ。晃司様の匂いしかしませんわ。大丈夫ですわ。晃司様、皆が虐めてもこのネリスは晃司様の味方ですわ」


「あのう、受け取りは大丈夫ですか?」


「ああ、済まない。大丈夫だ」


「それではお取り込み中ですので私は失礼します」


 若い騎士は居づらくなりその場から逃げてしまったのだった。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る