第24話 話し合いと字が読めない件

 アカデミーの事を中心に話がなされていた。

 アモネスは基本的にライラ以外をさんづけで呼ぶと言う。

 ただ、晃司に対しては殿だ。

 本当はライラの事はさん付けで呼びたかったが、侍女やメイドに対して主人がさん付けで呼ぶのは基本的に御法度とされている。


「はい。分かっております。お嬢様のお気持ちだけ頂戴致します」


 そう言ってそのままどうぞ呼び捨てにとなった。


 晃司の事は当然勇者だという事を伏せる関係で、晃司はアモネスの事をアモネス殿下と言う事になり、これは晃司も納得している。

 一応ギルドから護衛役として城からの指定の者を従者とするようにとし、ネリスをアモネスの護衛としてギルドから派遣される協力者となる。

 基本的に宿舎以外では従者と主人は一緒に行動をするのが基本なので、ネリスをアモネスの護衛に貸し出す形になる為、必然的に晃司はアモネスと行動を共にする。

 最初のパーティーは主人3人だ。

 だからアモネス、晃司、ラミィの3人プラス従者の3人となる。

 主人と従者は同じパーティーに入る事がルールとして決められていて、更にややこしい事に、大幅な男女比の違いがない限り、異性を含む決まりだ。又は特別な事情があれば別だ。

 アモネスの話だと晃司に仕える3人は従者も女で、これは国からの申請で許可済みなのだとか。

 その為、アモネスも誰か1人はパーティーに男が必要で、丁度良いのだ。


 晃司は従者を王族の護衛として送り込む協力者として学園に在席する。これは当初から伏せずに取り巻きとしている事に違和感を持たせない為だ。あくまでギルドからだ。


 そしてこれから国王とアモネスが話し合いをするというので、晃司達はアモネスの書状を持ってエリーの所に行き、エリーをラミィの従者扱いにて学園生にさせる事になる。そしてエリーの事以外は同意済みなので、万が一エリーが拒否した場合、別の者を従者として宛がわなければならず、その時はその時だというような感じだ。


 その時は姫騎士達の中から剣の腕が立つものを設定するだろうとの事だ。

 また、王族からの使者である札を持っており、もしエリーのところに人が並んでいたとしても、この札を見せれば割り込みができる。

 王族からの要件は最優先になっているのだ。


 そうしてエリーの所に行ったが、エリーは涙を流して喜んだ。ただ、ギルドマスターに事情を説明し、逆に晃司に依頼を出して貰う等体裁を整えなければだった。


 その為にライラを連れてきていた。ギルドマスターがライラと面識があるからで、メイド服のまま来ていた。


 ギルドへの依頼をする側が、メイドや執事に書状とお金を渡して送り込む事は多く、ギルドマスターと直接話す事も多いので、メイドや執事の格好をした者が来た=有力者の使いとなり、誰も関わろうとはしない。

 それは貴族と関わると碌な事が無いからだ。


 ギルドマスターのところに行くと大いに驚いていたが、ライラがアモネスの代理として書簡を携えており「うん」というしかなかった。


 エリーはギルドを休職扱いになり、アカデミーの卒業後は退職するもよし、復帰するも良しとしてくれた。


 あれよあれよと言う間に話が進み、後2週間でアカデミーに通う事になるというが、晃司はアモネスに突っ込みを入れる。


「俺の立場は分かったし、逃げも隠れもしない。だけどな、アカデミーに入るのに試験はいらないのか?確かあるような事を言っていなかったか?」


「はい。形式だけですが、7日後にありますわ。従者となる者は、魔力持ちか最低限の剣技又は何かのスキルを持っている事が条件です。そして私達も筆記と実技試験がありますわ」


 聞き捨てならないワードが出た。

 筆記だ・・・


「ちょっと待て!元々召喚された者を学園に入れる予定だったんだよな?でも俺はそれとは別口扱いだろ?筆記試験なんて無理だぞ!」


「どうしてでございますか?勇者様は頭がかなり良いはずというよりも、実際切れ者ですわよね?」


「それはよく分からないですが、この世界の文字の読み書きが出来ないからだよ」


「ちょっと待って下さい。過去の文献から、召喚された者は例外なく文字の読み書きが出来ると有りましたわ」


「俺にはさっぱりだぞ。試験までに取り敢えず教えてもらわないとまずいよな?」


 アモネスを始め、皆焦るのであった。

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