第12話 昼から

 晃司はラミィの手の事を考えて交代をしようと提案した。


「なあラミィ、1度交代しようか?」


「じゃあお言葉に甘えて少しだけ交代をお願いします」 


拒否される事もなく受け入れられたので見張りを交代し、晃司が採取に回った。


 晃司は採っている最中に既に次を見つけており、ラミィが見付けるよりも早く次に移っていた。


 ラミィは晃司の薬草を採る速さや正確さに驚いた。


 「あっちに弓を!」


 おまけに晃司から林の出口にいるホーンラビットの存在を伝えられ、矢を放って倒していた。

 自分は見張りなのに、魔物の気配に気が付かないなんて自分はいらない子じゃない?完全に晃司の足を引っ張っているよね・・・と落ち込んでいた。


 ただ、晃司は慣れない作業に30分程で手が痛いと音を上げていた。


 そこからまた交代したが、晃司はこれを午前中に2時間も文句一つ言わずに良くできるよなと、30分で音を上げた自分の情けなさを呪った。


「ラミィ、ごめん。俺が足を引っ張っているね。俺なんか30分で音を上げたのに、ラミィは午前中ずっとこれをやっていただなんて凄いな」


「えっ?そんな、私こそノロマで、警戒もろくにできていないんですよ。晃司は凄いな」


 お互いの事を凄いなと本気で思っていたのだと分かり、2人は安心して笑い合った。


 午後から1時間半位採り、周辺を取り尽くしたので場所を変える事になるが、初日に根を詰めてもろくな事が無いとし、早いけど引き上げようかと言うと、ラミィも同じ考えだった。


 帰りは怖い位に順調だった。

 荷物の大半は晃司が持ったのだが、体格もそうだが体力は晃司の方が上だったのだ。


 そうしてギルドに戻った2人はエリーの所に真っ直ぐに向かう。


「エリーさんこんにちは」  


「お帰りなさい。今日は2人で行ってきたのね。それにちゃんと帰ってきてくれたから私は嬉しいわ!」


「早速買い取りをお願いします」


「あら?ホーンラビットを2匹倒したのね!凄いわね!昨日のは偶然じゃなかったのね!」


「晃司の指示で矢を放ったら、普段だと外れる距離なのに今日はさくっと当たって、私が1匹倒したんですよ!」


「ラミィさん、凄いわね!ってこの薬草、レイルの森ね。大丈夫なの?」


「私1人だと無理かな。晃司と一緒だから行けたの。晃司だと1人でも行けるわね。1匹は剣でサクッと倒していたもの」


「確かに1人でも行って帰るだけなら問題無いと思うけど、薬草を30分採るのが限界だぞ。だからさ、2人揃っていたからこれだけの量を採れたんだと思うよ」


「仲が良いのね。ちょっと嫉妬しちゃうな。うふふ。初々しくて良いわね。さてえー、査定、査定っと」


 エリーが薬草を確認していった。


「凄いわね。よくこれだけ上級ポーション用の薬草を見つけたわね。えっと、ホーンラビットが2匹で1万G、上級用が3万Gでしょ。その他が28000Gね。合計料68000Gよ。それと規定でランクをEに上げるわね」


 ラミィは凄い凄いとはしゃいでいた。


 2人はお金の配分で少し揉めた。晃司は自分は大した事をしていないから2万Gで良いと言うも、ラミィが逆だと言う。どちらも引かないので、エリーが間に入った。


「普通はね、取り分が少ないと揉めるのに、あなた達は逆なのね。えっと、じゃあこうしたらどうかしら?報酬は人数割!いいわね?これからもよ?」


 2人は笑い合い、エリーの言葉に従った。


「そうそう、エリーさん、俺って魔力が有りましたよ」 


「えっ?昨日測定したら無しでしたよ」


「湯浴み場の魔道具に手をかざしたら少なくとも3回はチャージ出来たので、魔力量はラミィより上ですよ」


「ちょっと待って下さいね。今持ってきます」


 エリーが昨日使った魔道具を持ってきた。


 晃司が測定するも反応が無く、次にラミィが試すも反応が無い。


「あれ?確かに壊れていますね。別のを持ってきますね」 


 そして別の魔導具を持ってきた。

 エリーが晃司を先に測ろうとしたので、先にラミィを測るように促した。


 反応があった。


「あれ?ラミィさん、魔力量が3倍位に増えていますよ」


「うそ?じゃあ、お湯をもっと使えるの?」


「そういう事になりますね。じゃあ次は晃司さんね」


 晃司を測るも反応がない。  


「あれ?おかしいですわね」


「思う所が有るので、ラミィをもう一度お願いします」


 言われるがままに測定するも反応がない。


「うそ!どうして?」


「その、俺の魔力がこの測定機の測定上限を超えていて、耐えられずに壊れているのでは?」


「な、なくはないですけれども、ちょっと待っていて下さい」


 他の職員に聞いていたが、どうやらアドバイスを受けて いた。


「あのですね、これ以上の魔力測定は出来ないので、代わりに魔道具にチャージして魔力の有無を確認するしかないようです。取り敢えずこのランプにお願いしますね。ごめんなさい」


 言われるがままに晃司は魔道具に手をかざすと、さくっとチャージが出来た。


「晃司さんは魔力持ちなんですね。あのう、明日朝一番でこちらに来る事は出来ますか?」


「ラミィは大丈夫?」


「はい」


「じゃあ明日ここに来て、それから今日の所にいこうか?」


「えっとですね、魔力量を確かめるのに最適な依頼があるんです。貴族王族向けの神殿浴場が有るのですが、そちらですと浴槽用のお湯を大量に使うのですが、毎回5万7千G相当の魔石を使っているそうです。もしも魔力チャージが出来れば4万Gを報酬で出すという依頼が有るのですが、そちらで試されるのもひとつの手になります。もしチャージ出来れば宮廷魔術師の方よりも魔力量は上になります」


「出来なかったらどうなりますか?」


「先方から残念な目で見られ、報酬が無い事位ですね」  


「魔力をチャージするのって時間がかなり掛かったりするのですか?」


「魔道具に魔力をチャージするのは1分も掛かりませんよ。移動の方が時間が必要な感じですね」


 明日のギルドのオープンと同時に来る事になり、エリーにまた明日ね!と挨拶をしてからギルドを引き上げたのだった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る