Episode2:玩具




「え、いやです…」


 反射的に言ったけど、たぶんこういうの意味ない。


「じゃ、仕方ないね、君が腐男子だってバラしちゃうね」


 意気揚々と楽しそうに言って、本当に屋上から出ていこうとし、俺は慌てて引き止める。


「まっ、て!!それはだめだ!!言わないで…」

「うん、分かったよ。なら、言うこと聞いてくれるよね?」


 これは、きっと地獄の入口だ。寝る前の数分前に戻りたい。俺は泣きそうになるのを堪えて、頷いた。


「良かった!聞き分けのある子で安心したよ、僕、あんまり嫌がられたら殴るところだったよ」


 開いた口が塞がらない…。なんて、物騒な。可愛い顔は詐欺だったのだ。

 これ、あれだ。鬼畜。BL漫画でもいるよ。でも、自分で体験すると震えるほど怖いと実感した。

 まじで、怖い…。

 俺は顔が見れなくて、下を向いたままだったけど、顔に手が伸びてきてハッとする。

 秋山の両手が頬を挟み、さっそくキスしてきた。


「んっ!?んん、」


 嫌だと叫んで拒みたくても出来ない。指が唇を押し開き、その隙間に舌が入り込む。


「ん、んふっ、ふぁ」


 無意識に声が漏れる。嫌でも気持ちいいのだからどうしようもない。唇が離れて、安堵したのもつかの間、秋山の指が口内に入ってきた。

 口の中に溜まった唾液をたっぷり掻き出し、唾液で濡れた指が引き抜かれた。

 その指、どうするんだ?

 嫌な予感がして、尻の穴を無意識に絞める。

 そんな抵抗も虚しくズボンがあっという間に脱がされ、案の定、尻穴に唾液を塗り出した。


「ちょっ、待て、汚いからっ、やだ、むり!」

「抵抗されたら逆に燃えてくるよ…可愛いよ、僕のネコちゃん」


 ズブッと指が入ってきた感覚が分かり、身震いする。まじで、入れやがった!!

 嫌だ嫌だ、俺はまだ処女がいい…!

 尻穴を執拗に掻き回し、聞きたくない音が聞こえ始めていた。

 それ以上したら、秋山が見つけてしまったら!


「あっ!うあっ、まっ!そこはっ!!」


 当てられた!!俺のイイところ!!


「あ、なにこれ、ここが気持ちいいの?いっぱい擦ってあげる」


 何度もソコをかすめられ、出したくもない声が止められない。頭がぼんやりしてきて思考は停止した。


「あっ、あん、いくっ、でるからっ」

「いいよ、見ててあげる」


 力の出ない抵抗など虚しく、秋山の服に精液が飛び散る。


「あ…」


 どうしよう、嫌だな…。


「ね、名前きいてなかったね、なんて言うの」


 絶対に教えたくない。


「…加藤…学」

「学くん、君、本当に凄いよ!初めてなのに、お尻で気持ちよくなれるなんて才能あるんじゃないかな?気に入った!僕が呼んだら君は必ず来ること。約束やぶったら…分かるよね」


 まだ、夢見てるような気分だ。

 才能があるなんて知らないけど、尻があんなに気持ちいいなんて知りたくなかった!癖になったらどうするんだ。


「…変な時間に呼び出されるのは嫌なんだけど」

「大丈夫!僕も鬼じゃないよ、これからよろしくね」


 俺は可愛く笑う悪魔が恐ろしかった。

 見ないようにしていても視界にチラチラと入ってくる秋山の股間がズボン越しにもデカいのが分かる。あれ、入れられたら絶対裂ける。

 俺はもう限界で逃げるように屋上を抜け出した。押しかけてこなかったが、これから待ち受ける運命に泣きたくなった。




  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る