復讐の狂門〜魔法使いにあらゆるものを奪われた俺が全てを蹂躙するまで〜

砂糖しゅん

  

復讐の狂門

プロローグ—起源—


 骨が砕け、肉が裂ける不快な音が残響した。

 すでにその音源は痙攣すらしなくなった亡骸へと成り果てている。


「ったくよ、結局何も吐かずじまいかよ」

「……情報を吐くまでは殺すなと言ったはずだが?」

「コイツらが自ら死を選んだんだ、殺したくて殺したわけじゃねぇ」


 両親二人と産まれてから数ヶ月の男児一人——計三人の遺体に向かって男が吐き捨てる。


「だとしたら禁忌の魔導書グリモワールはどこかの赤子に継がれたか……想定外の最悪の展開だな」

「探し出すのは現実的じゃねぇ。この謀殺に直接手を出した俺達九人以外からの応援なんて以ての外だしな」


 そうだろ? と野蛮に笑うニヤける男が背後を振り返った。


 各々反応は違ったが男の見解に意を唱える者はいない。

 ただ、禁忌の魔導書例の物を奪えなかった落胆の面影を浮かべているだけだった。


「時間の無駄だったな。拷問などせずに初めから殺しておくべきだったか」

「それを言っても仕方ねぇだろ……だがまあ、計画は失敗だ。禁忌の魔導書アレがそこら辺の赤子ガキに入っちまった以上諦めざるおえねぇ」

「一応アタシが今日産まれた赤ん坊の事は調べ上げる。だがまあ全部は無理だからな」


 だりぃなクソが、と物憂に女が口にした。


「ではその役は貴様に任せた。ワタシも探しはするが……期待はするな」

「話は終わりか?——だったら魔導学校ウルテイオに戻ろうぜ、酒が飲みてぇ」


 男が荒々しく歩き去る。それを皮切りにその場を一人二人と離れていき——最後まで残った一人もまた例に漏れず去った。




「……」


 三人の亡骸のすぐそばで、身体を恐怖と絶望にふるわせながらも呪文によって守られている少年に気づく事なく。

 

 

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