第36回「2000文字以内でお題に挑戦!」企画 クロノヒョウ
大海原のド真ん中、空は数日曇、見渡す限りは水平線しかない。
文明の利器とは凄いもので、こんな状況でも波と風を受け波と風に任せて進む帆船でも方角を合わせれば目的にたどり着く。
これはメルカトル図法と羅針盤の力だ。
メルカトル図法は常に南北との角度のみが正確な地図だ。地図上で真っ直ぐ進んでも最短距離でないし距離も面積も方角も南北以外はめちゃくちゃである。
だが羅針盤とメルカトル図法があれば、常に船を南北に対して進行方向を一定の角度に保てば遠回りだが、目的にたどり着く。その一点のみに特化した地図なのだ。
なぜこんなことになるのか?それは地球は球なのでどんなに頑張っても平面に書くとひずみかでる。地図とは、何かを正確に書くと何かを捨てなければならない。
もしも全てを正確に書けたら、世紀の大発見どころか、数学界も含めてノーベル賞なんてこえた凄い事だ。ぜひとも自信があるならチャレンジして欲しい。
最も精度の高い地図は地球儀だったりする。半球しか、一度に見えないという問題はあるけども。
羅針盤ようはコンパスがあれば方角が分かる。これとメルカトル図法の地図さえあれば目的地へ行ける航海地図それがメルカトル図法だ。
「船長、羅針盤がクルクル回ってます」
「そうだなぁ、こんな速度で船が回ってたら遠心力でえらいことになりそうだなぁ」
「いや、その前に強制グルグルバットは嫌ですよ」
船長と航海長は現実逃避している。だってメルカトル図法はコンパスがなければ役に立たない。どこにいるのか、どっちへ進んでいるのか分からないのでどんな地図も無意味なのだけど。
「羅針盤直すか?」
「羅針盤って磁石が簡単に動くようにして北が分かるようにしただけの単純な構造ですよ?逆にクルクル回す方が難しくないですか?そんな原因分かります?」
「だってさ。羅針盤が壊れたとか船員にバレたら暴動ものじゃん」
「どこに進めばいいか分からないだけで暴動になります?」
「世の中ではそれを迷子もしくは遭難って呼ぶのだよ」
「船長も知ってましたか。とりあえず羅針盤を分解しましょうか」
羅針盤を分解して、問題が見つからないので組み立てた。
「やっぱりクルクル回りますね」
「なんでだろうな?もう一回分解するしかない」
現実逃避でまた分解される羅針盤である。
「船長、針だけでなく文字盤も超高速回転してますけど?」
「なんでこうなった?」
羅針盤が使えない事に変わりはないが、壊れ方が酷くなったのだった。
「なんでと言われましても、物理法則仕事しろ、としか」
「羅針盤ないと、太陽も、星も見えないからなぁ」
「太陽と星が分かっても正確な角度が分からないから、遭難がプチ遭難になるけど陸地には向かえますね」
「そうなんだ」
「船長?それはマジで暴動もののオヤジギャグですよ?」
「うん、羅針盤壊れたのは秘密にしような」
「直れば儲けものです」
このあと無事に遭難出来たのだった。
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