自国の問題点と未来への違和感が科学と融合した良作

ライターが、「トークルーム」というサイトのAIと話している。
どうやら放火殺人があって、ライターはそれに関係しているらしい。
事件の内容が明らかになるにつれ、日本の病理ともいえる「外人」に対する差別意識が浮き彫りになっていく。

容疑者は、AIのモデルになった青年であった。
AI=犯人であるが故に、トークルームとAIにまで怒りを向ける世相が語られる。
しかしライターは、トークルームのAIモデルに起用されるくらいの人格者である青年が、凶行に及ぶ人物とは思えなかった。

上辺しか見ずに騒ぎ立てる世間の大きな流れと、真実を追い求める一部の小さな流れ。
そして差別が対人ではなく対AIにまで及ぶ懸念。これが、冒頭浮き彫りにされる差別意識の問題と繋がっていく。

自国の問題点を炙り出しながら、未来へ続く違和感を説き、それらが科学と融合した良い短編だと思いました。