第3話長島攻め




「長島ですよ。味方の人数が少なくないですか?」


「仕方ないだろう。お主の強さでどうにか出来ると、殿は信じているのだから。それにしても殿は変わられた。やはり死にぎわを体験したせいで上洛をおやめになった。尾張を豊かにしてから上洛すると言い出した」


「それにしても2000人でどうしろと言うのですか?」


「お主が考えるしかないな。わしはお目付け役でしかないからな」


山田のおっさんは、無責任なことを言っている。



そしてあれから色々とあった。

織田信長は、熱田神社で自害。

舞を舞ったか舞わなかったかは知らない。

付き添っていた家来も3人で、同じく自害していた。


桶狭間の奇襲は、今川家の怒りを買い悲惨な結果を招いた。

そして、尾張を支配した織田は、今川によって滅亡したのだ。


完全に歴史が変わった。やはり俺の存在が歴史を変えてしまったのだ。

色々考えるのは止めて、俺は自分自身に正直に生きようと思う。

変わった歴史は元に戻せないからな。



そして、一番びっくりしたのが、俺が若返っていた事実だ。

曇った銅鏡ではじめて見てしまった。驚く程に若返った顔に何度も触って確認をしてしまう程に。

見た目は18歳だから、この時代ではいっぱしの成人男性だ。


そして、今川義元の命の恩人の俺は、今川義元の直臣じきしんになった。

直臣は大名に直接仕えている家臣のことらしく、その直臣に仕える家臣は陪臣ばいしんと言うらしい。

しらない事ばかりで、笑われてしまった。


どうやら今川義元が、俺を気に入ったみたいで、武将にしたいらしい。

しかし、太原雪斎たいげんせつさいは俺の事を知らないので、長島攻略を言いつけられた。

成功すれば武将に取上げる約束で、密かに取り決められた。

そして長島攻略を成功させれば、ここが俺の領地になると確約も頂いている。



太原雪斎も無理なことは分かっているはずだ。

今川義元が、懸命に俺のことを褒めるもんだから、意地悪な気持ちが湧き上がったのかも知れない。

それでも、今川義元がその申し出を受けてしまった。

そんなことを山田のおっさんが、こっそりと教えてくれた。



それにしても無茶な話だ。

いくら今川に従わないからと言って、長島の勢力は凄いはずなんだ。

たしか織田信長さえ5万以上の軍勢で、攻略したと少ない知識で覚えている。

それも、何回も負けて結構な期間を費やしたはずだった。


船も22隻しか、集められなかった。

この辺の支配者は長島だからだ。

そして、新たなクエストが表示された。

【クエスト発生 長島の戦いに勝利しろ】



「山田殿、噂を広めて下さい。「千人殺しの鬼が、長島の悪党を皆殺しに向かった」そんな噂でいいので」


「それだけで良いのか!」


「はい、それだけで良いです」




千人殺しの鬼の噂が広まり、伊勢長島一向一揆は長島に立てこもった。

その数は6万とも言われている。


空を見ると満月が照らして、暗い夜でも明るく感じる。

何日か経過した満月の下で、俺は単独で決行した。

風魔法を使って、空中に浮かび長島城を目指した。



そして、長島城に向かって風魔法の【乱舞斬らんぶきり】を放った。

竜巻に襲われたように無残に半壊して、更にもう一度放った。

それで、長島城は全壊してしまった。


俺は浮かんだまま言い放った。


「悪い奴は居ないか、居たら殺してくれよう、ワハハハハ」


本当の悪役が言うセリフを言い残して、次の願証寺へ向かった。


大勢の人々が外に出てきて、何事かと騒いでいる。

多分、願証寺だと思う寺に、【乱舞斬り】を放った。


これは見事に人々が空中に舞いながら、次々に斬られていた。


「鬼だ!赤い鬼が空に浮かんでいる」


「本当に鬼が居たんだ。するとおれらは地獄行きなのか?」


「こんな所に居たら、地獄へ行ってしまう。皆ー逃げろー」


「逃げるぞ、地獄には行きたくねー」


俺は蓮生寺や善明寺と善宗寺などを次々に襲い、


「悪い奴は居ないか、居たら殺してくれよう、ワハハハハ」


そんな繰り返しをして、帰って来た。




朝になっても、逃げる人々は後を絶たない。

坊主の数は少なく、着の身着のままの百姓が大半で、「天罰だ、天罰だ」と唱えていた。


「山田殿、100人程であの者らに、改心するなら田畑を耕すことを許すと言い回ってくれますか?」


「又も反逆するかも知れぬぞ、それでもいいのか?」


「昨日のことで、仏など居ないことが分かったと思うのです。やり直す機会を与えたい。あのままだと山賊か盗人になるしかないでしょう」


「お主、それで良いのだな、分かったわしに任せろ」


200人程を選び、百姓を追い駆けて行った。




俺らは1800人の軍勢で、長島の後始末をする為に、警戒しながら攻め入った。

ほとんど抵抗する者は居ない。

取り残されたのは怪我人が殆どで、絶望に満ちた顔をしている。


そして瓦礫を撤去していると生存者を発見。

足を大きな柱に挟まっていて動けない状況だった。

しかし、俺が簡単に持ち上げたすきに助け出した。


ここを早く去った坊さんの証言で、この人物が服部左京亮であることが分かった。

この左京亮が、長島一向一揆を指揮していた人物だった。

今川に味方したらしいが、桶狭間の情報もコイツから出ていたらしい。


それが原因で、長島は信用ならずと今川義元が怒った。



そして、長島城は更地になって、そして周辺には赤い血が散らばっていた。


「これは一体なにが起こったのでしょうか?やはり天罰なのでしょうか?」


証言した坊さんが、その光景にお経を唱えだした。

主要人物を探す為に連れてきたが、この坊さんはクソ坊主と違うようだ。



そして、この長島の戦いに勝利したのだろう。

【クエスト完了 報酬に土魔法と回復魔法を差し上げます】



本郷勇ほんごういさむ


Lv10


HP400

MP200


亜空間収納・錬金術・風魔法・土魔法・回復魔法



新たな土魔法と回復魔法が手に入った。

そして何やら更に、強くなった気がする。



折角だ、回復魔法をここの怪我人で試してみた。


傷付いた左京亮に近付き、足に手をそえた瞬間に淡く光って、傷ついた足が元に戻っている。

治った足に驚き、俺の顔と足を交互に見ている。


そんなことを傷ついた人に試してゆくうちに、俺を拝みだす者が増えだした。

あ!やってしまった。やったことは後悔しない。

あんなに痛そうにしている者を、見捨てられない。




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