第010話、黒い瘴気消滅、院長の頭って、、、


2022/03/02、修正してます。


俺は再び親ドラゴポイの近くへ戻り、隙を伺う、素早く後ろへ回り込み、親ドラゴポイ背中に飛び乗る! 背中に手をあて、イワ先輩に教わった魔法を使ってみる。


「さぁ~ 効いてくれよ!  "クロキエロ"!!」


「ギュルーーー!! ギュルリー!」


見た目は変わらないが明らかに親ドラゴポイは嫌がっている、苦しんでいるようにも見える。


「おおっと! 嫌がっているな、効いてるのか?」


「ギューイ、ギュイ~、ギュ~…」


黒い瘴気は消えてる、というより一ヶ所に集まっている? なんか一つの塊にも見えてきた、その黒いモヤの塊が俺に向かって飛んできた、俺の身体にまとわりついてくる。


「おっと! あれ? 消えるんじゃないの?? えーと、どうしようか、、、 あっ!?」


徐々に気持ち悪くなってきた、黒いモヤは濃くなってきている、俺はもう一度、全力で魔法を使ってみた。


「やばっ! う"っっ! …あ"ーー! …うっとおしい!!! もう一度、クロキエローー!!」


俺の全身に白い光が集まり、黒い瘴気は薄くなり消えていく、蒸発しているように見える、黒いモヤは消滅し、身体の白い光も消えてきた。


「おおっ! 今度はちゃんと効いてる! なんか身体も光ってるな、、、 あ、光が消えてきた」



「サルナス君!」


イワ先輩が駆け寄ってくる、他の冒険者達も寄ってくる。


「大丈夫でした、なんとかうまくいきました」


俺はは ニゴッ と笑った、その笑顔を見た冒険者達がちょっと引いている、何気にショックだ。


「呪文はほんとに効いたの?」


「はい、親ドラゴポイに向かって試したら少しだけ効いて、その後に黒い瘴気が俺に向かってきて、、、」


イワ先輩達は少しだけ後ずさる、その目は疑惑に満ちている、なんかバイキン扱いみたいで悲しい。


「だ、大丈夫なの? 近づいても」


「大丈夫ですよ、瘴気は俺を覆いましたけど、もう一回クロキエロを使ったら白く光って、瘴気は消えました」


「そうなの、それならよかった」


皆の視線が親ドラゴポイに向かう、親ドラゴポイは大人しくなっており、目つきも穏やかだ、イワ先輩が抱いていた子ドラゴポイは、サッと地面に降りて親ドラゴポイの元に走っていく、今度こそ親子の再会だ。


「ギュ~イ、ギュ~~」

「キュ~ キュッキュッ~イ!」


仲良くお互いの身体を擦り合わせていく、ふと、親ドラゴポイがこちらに目線を向け、頭を下げたように見えた、そして親子で街から離れていく。 これで問題は解決した、ただあの黒い瘴気についてはこらから調査が必要だ。



「サルナス君お疲れさま、終わったばかりで悪いんだけど治療院の院長への報告、一緒に行ってくれるかしら? さすがに私だけじゃ、報告が難しいわ」


たしかにそうだな、院長には会ったことないけどお偉いさんだし、怖いのかな。


「院長? そういやお会いしたことないですね、わかりました」


「ありがとう、じゃあ街に戻りましょう」


俺とイワ先輩、冒険者達は街へ戻っていく。


街へ戻ると、まだ怪我人は残っており、治療院総出で各治療にあたっている、命に関わる重傷者はいないようだ、時間は昼過ぎになっていた。


(そういや、昼御飯の時間だな、動き回ったせいかいつもより空腹感がある、今から院長に報告? 昼御飯の後じゃダメかな、、、腹が…減った・・・)


俺の頭は昼御飯でいっぱいになりつつある、肉汁たっぷりのハンバーグ、醤油が香る焼き魚、それとも筋肉に合わせて鶏ササミにしようか、いつも空腹感がすごいからガッツリしたものにしようか、あぶらまみれのジャンクフードも捨てがたい、そういやあぶら先輩どうなったかな、、、 といろいろな事が頭を巡りながらイワ先輩の後を歩いていく。



***



治療院へ戻り、院長室へ向かう、こんな奥まで来たのは初めてだ、廊下の雰囲気も違う、綺麗に清掃されている。 院長室に到着し、扉をノック、イワ先輩は中に向けて声を発する。


「院長、サルナス君を連れて参りました」


中からは穏やかな声で返事が帰ってきた、男性のようだ、トップは女性だと思ってた。


「入りなさい」


「はい、失礼します」


中に入ると院長が椅子に座っていた、部屋の中にはテーブルが2つ、院長用の小さめのテーブルと話し合い用の大きなテーブルだ。


「初めまして、サルナス君、院長のウチです」


院長は笑顔で挨拶してきた、後でイワ先輩から聞いた説明によると、院長は男性で治癒魔法は使えないがその分、知識や政治的能力は高く、この治療院を取り仕切っているらしい、俺は笑顔を頑張って挨拶をした。


「初めまして、サルナスです」

ニゴッ


(院長は男なんだな、あ~ なんというか、、、残念なハゲ散らかった頭部、いっそスキンヘッドの方がスッキリして良いような)


サルナスは視線を院長の頭部へ向け、心の中でつぶやいた。


「なにか?」


視線に気づいて院長は俺に声をかける、鋭い目つきだ。


「いえ、なんでもございません」


「今回は大活躍だったそうですね、治癒院の院長として誇らしいですよ」


「ありがとうございます」


「ところで、サルナス君は前は魔法道具の仕事をしていたとか? その時から魔法を使えてたのですか?」


「いえ、その時は道具を作ってただけで、自分が魔法を使えるとはまったく思ってなかったので知りませんでした」


「なるほど、では冒険者ギルドで初めて知ったと?」


「そうです、研修で教えてもらって、それから魔道書を読んだりして独学がメインです」


同席しているイワ先輩は思った、、、


(子ども向けの『治癒っちの大冒険』は魔道書ではないわ)


「実は冒険者ギルドからサルナス君の魔力等について詳しく調べたいので来てほしいと連絡がありました、その話をする前にこのような騒ぎが起きてしまったわけですが、、、 今日は疲れてるでしょうし、明日にでも冒険者ギルドへ行ってください」


「あ、はい、わかりました」


「ところで、、、 イワさんはそろそろ仕事へ戻ってもいいですよ、サルナス君にはもう少し話があります」


「えっ? あ、わかりました では失礼します」


イワ先輩は退室する、俺はひとりで院長の前に残っている、なんだが緊張する。


「さて、サルナス君」


院長は真剣な表情をしている


「はい」ゴクッ


「イワさんからの報告では、とても珍しい魔法を使えるそうですね」


院長は真剣だ、目付きが更に鋭い、瘴気についての話しかな。


「えと、"クロキエロ"のことですか? そうですね、イワ先輩からは昔の本に載っていたらしいと聞いて、、、」


「いえ、それではなくて、、、 その、、、」


(なんだろ? なにか言い辛そうに見えるな)


「怪我した男性の胸に毛を生やした、、、とか」


(そっちか!? やべっ、怒られるかな ふざけてやったら胸毛が生えましたとは言えない)


俺は汗が滝のように出てきた、目が泳いでいる。


「そのような治癒魔法は聞いたことがありません、ぜひこの目で見てみたいのですが、試しに私に魔法をかけてみてはくれませんか?」


「え? えと…? 院長も胸毛を?」


院長も目を泳がせながら話を続けていく。


「そちらではありません、ん~ その、、、 頭に、、、  ん""っ けっして私欲のためではありません、院長として未知の治癒魔法があるのならこの身をもって確認、検証をする義務があります」


院長は咳払いをしてもっともらしい発言をしている。


「、、、はぁ わかりました」


院長の頭部へ向けて魔法をかけてみる。


「ん~、ケガハエール!」


パァァァっと頭が輝いた! 太陽の反射ではなく魔法の効果で輝いた! ほんとに魔法の効果による光です。 院長はすぐさま、机の引き出しから鏡を取り出して頭を確認している。


「おおっ!! か、鏡、、、 これは懐かしきフサフサの!」


院長は鏡を見て、涙ぐんでいる。


「はっ! う"んっ! サルナス君、君の魔法は本物のようだ、これからこの頭を観察して更なる検証をしていこうと思います」


院長は表情を整えてサルナスに向き直った。


「、、、はい」

ニゴッ


サルナスは優しい眼差しを院長の頭部へ向けている。


「では、後は怪我人の治癒に戻り、落ち着いたら今日は帰ってゆっくりしなさい」


「はい、失礼します」


俺は退室した、直後に部屋の中からとても嬉しそうな声が聞こえたがそのまま怪我人のもとへ戻っていく。


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