第16話 一方、連れていかれた二人は?

彼女のことを責める使用人など、一人もいない。むしろ、彼女のことを擁護する声の方が多いのだ。そんな彼らの温かさにシーラは少しだけ、涙ぐんでしまう。


奇しくも、そんな彼女の姿をビートルは見つけてしまった。


「おや、ご主人様、泣いておられるのですか?珍しいこともあるのですね。」


「はっ?泣いていませんよ。あなたが泣いているからそう見えるのではないですか?」


「ふむ、それではそう言うことにしておきましょうか。」


いつもであれば、ここからさらに突っ込んでくるはずのビートルだが今日だけはそんな無粋なことなどしなかった。


自分たちが理不尽な目にあったというのに文句の一つも言わない使用人たち、彼らをねぎらうためにシーラは事前にとある用意をしていたのだ。


「さぁ、みんな!今日はあいつらが出て行ったお祝いよ!今まで、フラストレーションがたまっていたでしょ。今日はお酒もご馳走もたくさん用意したわ。みんな、今日は何も気にしないで食べて、飲んで、楽しみましょう!」


「「「「「おーっ!」」」」」


こうして、屋敷は本来の持ち主の元へと戻り、使用人たちは今までに受けたストレスを発散させるがごとく、翌日まで飲み明かしたのだった。




一方、多額の借金を背負うことになったアルフレイとタニラ、彼らは男たちに連れていかれ、檻の中に閉じ込められていた。彼らが逃げ出さないようにだ。


「くそっ、これもすべてお前のせいだ!何が使いきれない財産があるだ、だましたな。お前にあるのは借金だけではないか!」


「そ、そんなの知らなかったんですから、仕方ないじゃないですか!」


「うるさい!普通、遺産なんだから、確認の一つや二つ、するだろう。お前がそれを怠っていなかったらこうはならなかったんだ!」


そんな二人の元へ、二人組の男が現れる。それは、彼らを連れて帰る際にシーラと話していた男たちのリーダーと彼らがボスと呼ぶ存在だった。


「ボス、こいつらが例の二人組です。正直、こいつら金になるんですか?どう見てもヒョロヒョロで使い道なんてなさそうですが。」


「何言っているんだ、人間なんてどうにでも使い道はある。世の中にはこういう連中を欲しがる人間がいるんだよ。もちろん、こいつらには拒否権なんてない。金を返せないほうが悪いんだから、何をしても問題ないしな。」


「なるほど、それにしてもこの国は怖いですよね。金を返せなくなったらどんなことをしても大丈夫なんて。」


「そうだな、だがそれもこれもこいつら貴族が作った法なんだから自業自得だろ。」


そう、この国では金を返さないほうが悪いのだ。契約通りの約束で金を貸しているのであれば、違法な金貸しでも何でもない。逆に言えば法にのっとって金を貸している場合、金を返せないものが現れればどんな方法を使っても問題が無いのだ。


先ほどまで言い争っていた二人はボスと呼ばれる人間の貫禄に恐怖してしまい、プルプルと震えている。そんな中でアルフレイは自分だけ助かる方法を思いついてしまうのだ。

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