第2話 3か月後

さて、私が屋敷を追い出されてから瞬く間に時は進み、三カ月がたった。私がこの間、何をしていたかというと特に何もしていない。しいて言うなら旅行を楽しんでいたともいえる。


私の商売は基本的にすべて優秀な人間を雇って彼らに任せている。私の商売が大ヒットしたのは本当だが、そんなのはまぐれのようなものだ。そうであれば、私自身が引き続き、商売を行うのではなくその道のプロに任せた方がいいだろう。


そんな私は実質何もしていないが会長として、売り上げの一部を継続的にもらうことが出来るのだ。不労所得万歳!


お父様は生前によく私に自由に生きなさいと言ってくれた。きっと、お父様は自分の死期を察していたのだろう。お父様が亡くなった後に私がちゃんと生きていけるように背中を押してくれたのだ。


3カ月ぶりの我が家は何も変わっていなかった。あいつらに屋敷を明け渡せば3か月後には屋敷は荒廃しているものかと思っていたが、そこまでではなかったのだ。流石に、自分たちの家をそのようなものにするはずもないか。


私は屋敷に足を踏み入れると執事のビートルが迎えてくれる。


「ご主人様、お待ちしておりました。私はこの3か月が人生で最も長く感じましたよ。」


「ごめんなさい、あなた達には本当に迷惑をかけたわね。」


「何を仰いますか!私たちはご主人様に救ってもらった恩があるのです!」


この屋敷はとても大きい、そんな屋敷を維持するためには何人もの執事やメイドが必要になってくる。彼らは私が追い出されたとしても3カ月だけ待って欲しいと事前に伝えていたのだ。彼らには今回の計画をすべて伝えていた。


彼らには本当に迷惑をかけたと思う、あんな奴らの世話をさせてしまったんだから。でも、そんな生活も今日で最後だ。なぜなら、本日をもって私は彼らを追い出すのだから。


「ビートル、みんなを集めてくれる。この屋敷の正当な持ち主が誰なのかをあいつらに教えてやりましょう!今から追い出すわよ。」


「いよいよ、この時が来たのですね。みな、あいつらには迷惑をかけさせられて怒りがたまっていたんですよ。あの二人にはせいぜい抵抗してもらいましょうか、そうすれば強引に追い出す大義名分になりますから。」


ビートルは悪い顔をしながらにやにやと笑っている。正直、ビートルのことをよく知っているはずのシーラですら少しだけ、恐ろしく感じてしまった。

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