みてないよ

青い空に純白の羽が舞う

思わず見蕩れ手を伸ばす


子ども時代に見てた

あのヒーローは今どこ


新しい光を見つけて

がむしゃらに追い続けて

意気も絶え絶えに

謳歌を乞う


白鳥のように

蓮の花のように

雪解けた川のように

ただひたすら美しく輝け


そのバタつく足元を

その泥の重さを

その氷下ひょうかの寒さを

誰も知らない

誰にも伝わらない

それは

貴方だけのものだから

難しいけれど愛して


障子の向こうの鶴の痛みは

一人では立てない足の痛みは

叩かれた心の痛みは

誰も知らない

誰にも伝わらない

それは

あの人だけのものだから

苦しいけれど呑み込んで


赤い空に漆黒の羽が舞う

思わず恐れ手を戻す


青年時代に見てる

あのヴィランは今どこ


新しい闇を見つけて

がむしゃらに追われ続けて

意気も絶え絶えに

嘔吐を請う


からすのように

彼岸花のように

荒れた海のように

ただひたすら鈍く輝け


その嘴の鋭さを

その毒の効果を

その水の強さを

誰も知らない

誰にも伝わらない

それは

貴方だけのものだから

難しいけれど愛して


何気ないことの価値は

大切かどうかの価値は

走ることの価値は

誰も知らない

誰にも伝わらない

それは

あの人だけのものだから

感じないけれど分かって


みてないよ

その意気はさ


みてないよ

その辛さは


みてないよ

その痛みは


みてないよ

その嫌悪と忌みは


みてないよ

その価値は


だって


見えないものだから


美しさも醜さも

光も闇も

全て全部最初から最後まで

まとめていつまでも

ただひたすら撃ち抜け







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