第13話 ギルマスに会いに行こう!

 まおちゃんとがぶがぶさんを抱っこして、冒険者ギルドに向かう。

 冒険者ギルドに入り、カウンターへ向かう。カウンターに居たお姉さんに声を掛けて、ショコラの街のギルマスからの手紙を渡した。


「ギルマスに話しをしてくるから、少し待っていてね」

「はい、分かりました。よろしくお願いします」


 10分ほど待っていると、さっきのお姉さんにギルマスの部屋に案内された。ドキドキしながらソファーに座る。まおちゃんは膝の上、がぶがぶさんはむぎゅっとしている。緊張してつい力が入っちゃう。


「本当にお前さんが、ショコラの街を救ったのか?」

「えっ? 救った?」

「手紙に書いてあったのは、そのサメだろう?」

「あっ、えっと……そうです」


 封印した事を言っているんだろうけれど、ちょっと怖い。せっかく王都に着いたけど、追い出されたりしないと良いな。


「それに、海底ダンジョンをクリアしたんだろう?」

「それはこの二人が強かったからです。私は何もしてないんです」

「いや、まずは封印出来た事が凄い。それに、それだけ強い魔物を封印出来ている事はもっと凄いんだぞ」

「はぁ……そう、なんですか?」

「ただ、国王陛下に報告はしなくてはならないから、もちろん封印術師の事も報告させて貰う」

「えっ……それは……」


 私はまだ国王様にお会いしたことはないけれど、この国から追い出されたりとかしたらと思うと怖くて身体が震える。


「おいっ、大丈夫か?」

「あっ……す、すみません」


 まおちゃんとがぶがぶさんが私の両脇からすりすりしてくれる。一度むぎゅ~っと抱きしめて、気持ちを落ち着かせる。


「すみませんでした、もう大丈夫です」

「あ、ああ。だが、まだ顔色が悪いぞ。本当に大丈夫か?」

「はい、大丈夫です。あ、あの……国王様にお会いする……なんてことは?」

「あるかもしれんな」

「えぇっ!? む、無理ですっ!」


 そう言われてドキッとした。追放された時の事を思い出してしまって、心臓がバクバクする。身体が自動的にガタガタと震える。


 私の様子を見たギルマスが、不思議な顔をして申し訳なさそうにしながらも色々と聞かれた。封印術師の職業を頂いた時に家から追放されて、街からも追放された事とかを話しをした。

 その話を聞いたギルマスは、物凄く怒ってくれた。それを見てやっと少しだけ、肩の力が抜けた気がした。


 そして、私が辺境伯の娘である事も伝える事になった。それを聞いて、なるべく国王様にお会いする事がないように進言してくれると約束してくれた。

 それでも、廃れていた封印術が使える事は本当に凄い事だから、どうなるかは分からないとも言っていた。ギルマスは、私が子供だからとごまかしたりしないできちんと説明をしてくれるから、とても信頼出来る。



「悪いようにはしないから、安心してほしい。なんといっても、封印術を使えるっていうのが凄い事なんだから、胸を張っていれば良い」

「あの……追放されたりとか、しませんか?」

「誰も出来なかった封印術を使って街を救っているのに、追放なんてするわけないだろう!」

(我が許さんがな)

(もちろんですね)


 街からも国からも追放されたらとずっと不安だったから、そう行って貰えてホッとした。

 落ち着いた所で、ドロップ品を見たいというので地下にある倉庫に来ている。


「ここに全部出して貰って良いか?」

「分かりました。まおちゃん、ドロップ品を出して貰える?」

(ああ、任せておけ)


 まおちゃんがお口を開けると、次から次へとドロップ品が取り出されて山のようになっていく。まだこんなにあったんだね、ちょっとびっくりだよ。


「……これは本当に凄いな」

「私もまだこんなにあるとは思いませんでした」

(後はこの海底ダンジョンのボスのドロップで最後だな)

「なんだ、これはっ!? 本当に見たことのないドロップ品ばかりだな」


 まさか王都のギルマスでも見たことないとか凄すぎる。海底ダンジョンが未踏破だったのだから、知らない魔物もいるのは当然なのかな。そうなると、これの価値って一体?


「すまないが、これが何に使えるのかとか調べたい。預かっても良いだろうか?」

「はい、大丈夫です。よろしくお願いします」

「これについても国王陛下に報告をさせて貰うが、悪いようにはさせないから安心して欲しい。それと、多分これらは国が買い取る事になると思うぞ」

「そうなのですね。買い取り出来ないって言われたらどうしようと思っていたので、とても助かります」

「ただ、この国に魔王が来ているという情報があってバタバタしているから、少し時間を貰うかもしれない。責任を持って預かるからよろしく頼む」

「はい、分かりました」

(我はここにいるがな)

(我々の言葉が聞こえていませんから、仕方ないですね)

(まあ、好きにさせておけば良いだろう)


 魔王が来ているって攻めてきているってことなのかな? 戦争とかにならないと良いのだけど……。

 ただ、私とは無縁の話だからいまいちピンとこないけどね。でも、魔王と戦争とかになったらと思うと、とても怖い。


「商業ギルドのギルマスとも相談をするから、明日の午前中に来てもらっても良いか?」

「はい、分かりました。でもあの、えっと……少しだけ買い取りして貰っても良いですか?」

「どうした?」

「えっと、今日泊まるお金がぎりぎりで……」

「ああ……そうだったな。すまなかった、先に少し買い取りさせて貰おう。それと、宿の代金はこちらで出そう」

「えっ!? そこまでして頂くのは申し訳ないです」

「いや、そもそも買い取りを待たせているのとか色々あるからな。それに買い取りまでどれくらい掛かるか分からんから、気にしなくて大丈夫だ」

「はい、分かりました。ありがとうございます」

(当分宿に泊まれそうで良かったな)

(そうですね)


 冒険者ギルドで当分の宿代を出して貰える事になった。正直とても助かる。何週間も待って欲しいと言われたら、お金が足りるか分からない。

 まだ封印術師ギルドにも行かなきゃだし、数日は冒険者ギルドでの依頼を受ける時間が取れなそうなんだよね。


 冒険者ギルドで手配してくれた宿に向かおう。手続きをして貰ったら、まずはお夕飯だね。

 二人のお口にも入れてあげながら、仲良くお夕飯を食べる。今日ももぐもぐしている二人がとってもとっても可愛いです!

 二人にはごはんが足りなかったかもしれないけれど、今日は許して貰おう。そのうちご飯を作れる所に泊まれるようになったら、沢山作ってあげるからね。


「明日は午前中に冒険者ギルドに行くけど、午後は何をしようか~」

(くまを作る材料はあるのか?)

(そうですね。早々に封印してしまいましょう!)

(よし!)

「どうしたの?」


 まおちゃんの身体がむにゅむにゅっと変形していく。くまの形になったまおちゃんを見て、手芸屋さんに行かなきゃいけないことを思い出した。


「あっ、そうだったね。手芸屋さんに行こうね! くまさんは何色が良いかなぁ」

(可愛くなくて良いぞ!)

(魔王様?)

(我がすりすりして貰えないであろう!)

(ユアに聞かれたら、しょんぼりされますよ?)

(何っ!? い、いや、これは違ってだな……)

(聞こえてませんけどね)

(がぶーーーっ!!)


 なんだか突然まおちゃんとがぶがぶさんの鬼ごっこが始まった。可愛い、可愛すぎるっ!!鼻血出そうなくらい可愛いっ。

 くまさんの色を考えていたけど、ぽーんと飛んでまおちゃん達の鬼ごっこが終わるまで眺めてしまった。とっても癒された。


(つ、疲れた……)

(私もです……)

「あっ、そうだ。色だよね~。でも、くまと言ったら私の中では水色のくまさんなんだよね。良い生地があると良いんだけどなぁ」

(ふむ。水色なのだな)

(あのクマ、そんなにかわいらしいですかね?)

(いや、ないな)

(ですよね)


 ショコラの街の手芸屋さんも大きかったけれど、王都の手芸屋さんはさらに大きいみたいで、とっても楽しみなんだよね。

 まおちゃんとがぶがぶさんをもふもふムニムニして癒される。今日もまおちゃんは枕になってくれる。がぶがぶさんを抱っこして、ベッドに入る。王都の宿のベッドはかなり気持ち良いです。

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