第4話 シロップの街

 シロップの街に無事に入れたので、手芸屋さんに行きたいけどその前に冒険者ギルドに向かおうかな。私が寝ている時にまおちゃんが倒してくれた魔物の素材を売りに行かないとね。冒険者ギルドに入り、買い取りカウンターに向かう。


「こんにちは、買い取りお願い出来ますか?」

「ああ。カウンターに出してもらえるか?」

「まおちゃん、お願いして良いかな」

(うむ)


 まおちゃんがぽよんと揺れると、口をぱかっと開けてカウンターの上に色々な魔物の素材を出してくれた。


「うわっ! それマジックバッグなのか!?」

「えっと、マジックバッグではないのですが……何でしょうね?」

「ははっ、分からず使ってるのか」

「えへへ」

「マジックバッグじゃないなら良いが、高い物だから気を付けるんだぞ」

「はい、ありがとうございます」

(我だから問題はないがな)


 買い取りして貰ったので、少しお金が増えた。だけど、これはまおちゃんのお金だからまおちゃんに渡しておこう。


「まおちゃん。はい、これ」

(む? さっきの買い取りして貰った金がどうした?)

「これはまおちゃんのだから、渡しておくね」

(む、それはユアのだ。我はいらん)


 まおちゃんがふるふるっと否定した。でも、私はぐっすり寝てただけなんだよね。いくら言ってもまおちゃんが受け取ってくれることはなかった。私が使って良いって事みたい。だけど、なんだか申し訳ないな。


「まおちゃん、ありがとうね。じゃあ、ありがたく使わせて貰うね。後で美味しい物食べようね!」

(旨い物か、そいつは良いな!)


 美味しい物と言った途端、まおちゃんが嬉しそうにぽよぽよ揺れている。うん、美味しいとかわいいは正義です!


 とりあえず、これでまおちゃんの目を付けてあげよう。手芸屋さんの場所を聞いてから冒険者ギルドを出る。冒険者ギルドから少し歩いて手芸屋さんに着いた。


「こんにちは、見せて頂いて良いですか?」

「いらっしゃいませ、どうぞ~」


 この街の手芸屋さんは少し小さめな感じかな。まずはまおちゃんの目になるボタンを見せて貰おう。店員さんに声を掛けてボタンを見せて貰うと、とても目を引くボタンがあった。


「この黒いボタンを見せて貰っても良いですか?」

「はい、どうぞ。これはオニキスのボタンなんですよ」

「とっても素敵ですね。これを二つください!」

「ありがとうございます。後、肌さわりの良い生地を探しているのですが、ありますか?」

「うちにあるのはここにあるだけなのよね。ショコラの街か王都ならもっと大きい手芸屋さんがあるわよ」

「そうなのですね、ありがとうございます」


 ここよりも大きい手芸屋さんを教えて貰ったけど、まだ王都に行くか隣国へ行くか迷っているんだよね。夜にまおちゃんに相談してみようかな。

 手芸屋さんを出たら、日がだいぶ傾いていた。早く宿へ向かおう。まおちゃんをむぎゅっと抱っこして宿へ向かう。

 宿の部屋に入ってまおちゃんをベッドの上に下すと、ボタンをバッグから取り出した。


「そういえば、まおちゃん。この素敵なボタンを付けたいんだけど、もしかして痛い?」

(そんな針では我は痛くないから大丈夫だ)


 いつものぽよんと揺れるのとは違う揺れ方をしたから、大丈夫みたいだ。痛いとかわいそうだから、何度か確認をしてから、まおちゃんにボタンの目を付けてあげた。


「わぁ、かわいいっ!」

(うむ、よく見えるな)


 まおちゃんは嬉しそうにぽよぽよ揺れている。やっぱり目を付けたら、綺麗に見えるようになったみたいだ。まおちゃんは楽しそうにお部屋の中をぽよぽよ見て回っている。


「よし、出来たからお夕飯食べに行こうか」

(よし、いくぞ!)


 まおちゃんを抱っこして食堂へ向かう。昨日は干し肉だったけど、今日はちゃんとしたごはんで嬉しい。食堂へ着くと、何かのお肉のトマト煮込みとパンとサラダだった。


「美味しそうだねぇ。まおちゃん、半分こして食べようね」

(うまそうだな)


 まおちゃんのお口にも入れてあげながら私も食べる。お肉が柔らかく煮込まれていてほろほろっと崩れる。


「ん~、おいしいっ!」

(ん!!? 人間どもはこんなにうまいものを食べていたのか!)

「このパンに付けて食べるのも美味しいよ。はい、まおちゃん」

(うむ、うまい! このままユアと旅をしたら、うまい物が沢山食べられそうだな)


 まおちゃんが美味しそうに食べているのを見ていると、ぽかぽかと心が温かくなった。まおちゃんに目が付いたら、前よりもっと可愛くなった。

 表情が変わらないはずなのに、なんだか感情がわかる感じでとても嬉しい。


 まおちゃんとおいしくご飯を食べたら、お部屋に戻る。お腹もいっぱいでとっても幸せ気分だ。

 お腹がいっぱいでちょっと眠くなってきているけれど、明日はもう次の街へ出発しなくてはいけない。地図を出してベッドの上に置く。まおちゃんが不思議そうに地図を見に来た。


「ねぇ、まおちゃん。ここから北に行くか南に行くか迷ってるんだよね。今はここシロップの街、北に行くとショコラの街とかこの国の王都があるの。南に行くと、隣の国だよ」

(ふむ。確か、この国には我の部下である四天王がいたな。ユア、北へ向かうぞ)

「隣の国に行こうかと思うんだけど、どうかなぁ?」


 まおちゃんがいつものぽよんではなく、ぽよぽよぽよっといつもと違う動きをした。


「この国の王都の方に向かった方が良いの?」

(うむ。そして4天王のやつらも封印したら良いぞ)


 まおちゃんがそうだというように、いつものようにぽよんと跳ねた。まおちゃんが言うってことは何かあるんだろう。その後もまおちゃんとお話をして、王都へ向かう事になった。

まおちゃんが突然ぽよぽよと身体の形を変えていく。


「まおちゃん、どうしたの?」

(ユア、今度サメのぬいぐるみを作ってくれないか?)

「お魚?」

(サメだ、サメ!)

「うーん……あっ、もしかしてサメ?」

(それだ!)

「もしかして、サメのぬいぐるみを作ってほしいの?」

(そういうことだ!)


 隣のショコラの街へ行ってからでも大丈夫みたいなので、まずはショコラの街へ急ごう。また騎士達に見つかったらと思うと怖いから。

 そして、ショコラの街にある大きな手芸屋さんでサメのぬいぐるみを作るための材料を買おう。


 お話が終わって行く場所が決まったから、まおちゃんを抱っこしてベッドに横になる。


「ふふっ。今日はお布団で眠れて良かったね」

(そうだな。ユアにはきちんと寝て貰わなくてはな!)

「まおちゃん、おやすみなさい」

(ゆっくり休めよ)


 疲れていたからか、すぐに眠くなって寝てしまった。次の日の朝、目を覚ますとまおちゃんも気持ち良さそうに寝ているみたいだ。

 お口がぽかんと開いていて、よだれが垂れそうな顔をしている。


「ふふっ、かわいい」


 まおちゃんを起こさないようにすりすりして癒される。朝から幸せだ。そんなことをしていたら、まおちゃんが起きたみたいだ。


「まおちゃん、おはよう」

(うむ、おはよう)


 出発準備をしてから食堂へ降りていく。食堂へ行くと女将さんが朝ごはんを持ってきてくれた。


「おはよう、よく眠れたかい?」

「おはようございます。はい、とっても気持ちよく眠れました」

「今日はもう出るのかい?」

「はい、そのつもりです」

「そうかい」


 今日もまおちゃんと仲良く半分こして食べる。まおちゃんはとっても嬉しそうに食べるので、ついつい多めにあげちゃう。


「美味しいね~」

(うむ! これからの旅が楽しみになるな)


 食べ終わって宿を出る手続きをして貰うと、女将さんから包みを渡された。


「女将さん、これは?」

「お昼にでも食べなね。美味しいって言ってくれたお礼さ」

「わわっ、ありがとうございます!」

(それは楽しみだな)


 女将さんの気持ちが嬉しくて、心がぽかぽかだ。改めてお礼を言ってから宿を出る。今日は北にあるショコラの街を目指すから、北門へ向かって歩いて行く。

 途中で朝からやっているパン屋さんがあった。また夜までに辿り着かないかもしれないから、少しパンを買っておこう。


「まおちゃん。どのパンも美味しそうだね~」

(うむ。どれも食べてみたいぞ)

「少し多めに買っても大丈夫? まおちゃん、仕舞っておいてくれる?」

(任せておけ!)


 まおちゃんの返事は震えるだけだけど、会話をしながら少し多めにパンを注文する。お金を支払いパンをまおちゃんに仕舞ってもらう。


 お店を出て北門へ向けて歩きながらまおちゃんとお話をする。


「まおちゃんとお話が出来たら良いのにね~」

(そうだな。そうしたら食べたいものがすぐに食べられそうだな)

「次の街でも美味しい物沢山食べようね!」


 少し歩いていると北門に着いた。手続きをして貰い門の外に出ると、ここも道が整備されているみたいで歩きやすそうだ。馬車が来たら怖いから、道の端っこを歩いて行く。

 馬車もあったのだけど、あんまりお金持ってないし歩かなきゃね。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る