第11話 完・真菅怒られる。そして――
若めの男性が帰った後。俺と香良洲は異世界料理の試食のと――まだ話していた。
「とりあえず真菅さん。得体のしれないものはそのまま出さないように。味見必ずです」
試食後――再確認。再度注意を従業員にされていた。
「いや、まあでも結果美味かったし。そもそも食材が届いていたからな。勝手に届くもので食えないものはないと思うし。ここの謎なシステム多分最強だから」
「でもです。試食はしてください」
「あれは……キツイな。かなりの勇気いるし。まあ食べたら――だったが、俺すげーだよ」
「ホントに――まだゾクゾクしてますよ――まあ美味しかったから許しますが―—」
「でも頼まれたものを出す場所だからな。っか。香良洲。このままだとずっと手伝いすることになるぞ?さっきも言ったが。早く出た方がいい気がするし」
俺はそうそう。と思い出し。ちょうど今はお客さんが切れている。誰も来る気配がないため、香良洲にそう告げた。
「あっそうですね。ってそういえば――さっきの人も――ですよね。お店を出たら自然と――」
そう言いながら出口を見る香良洲。そこにはもちろん誰も居ない。そして――静かな空間があり。多分今ドアを開けても――普通に路地裏があるだろう。俺はそんなことを思いつつ。
「ああ、消えたな」
俺もドアの方を見つつ言うと――。
「やっぱり。ここはそういう流れなんですかね。留まるのはダメですかね?」
「ああ。おすすめはしないな。既におかしなことが起き始めている気もするが―—普通こんなに人来ないはずだし」
そう、香良洲と居るのは決して嫌ではないが――でも香良洲はもともとお客さん。何故か変なことがあって――少しお手伝い。それもかなりのハード。ブラックな職場を見せた気がするが――あと。俺がふと思っているのは――この香良洲という女性がここに留まっていると――何と言うのか。順番と言えばいいのだろうか?あっちの世界も多分こちら側から人が来ないと――と言うことがあると思うので、なんかズレてるぞ!?どうなってるんだ?的なことがもしかして起こっていて――こちら側の人をとりあえずどんどん呼んでいる可能性も――というのを思っていてな。まあそんなことはないと思うが――もしがあるからな。
本来ならこちらから向こうに。命が決まっているのかはわからないが――もし、何かそういうものがあり。1人でも向こうに行く人が行かない。どこかに忽然と消えてしまった。ということがあると――混乱が起きているかもだからな。だから――イレギュラーなことはするべきではない。ということだ。
だから俺は俺は香良洲に立ち去るように促した。
「……わかりました。あっ「塩むずび」ごちそうさまでした」
するとわかりました。という表情をして頭を下げる香良洲。
「いやいや。ってかホント塩むすび代なんか軽く超える働きだったからな。急遽ブラックな職場になったから」
「まあ――ちょっと後半は楽しかったですね。あっ、また機会があったらお手伝いしますね」
香良洲は笑いながらそんな冗談を言いつつエプロンを解いた。何で冗談だと思ったかって?だって――香良洲はもう知っているだからな。ここを出たら戻って来ることはない。とね。まあこういう場合の俺の言葉と言えば――。
「いやいや、もう来るなよ」
「そう言われますよね」
「もちろん。そう言っておかないと、半なことが起こった!お前の責任だ!とか言われてもだからな」
「真菅さんの上に誰かいるんですか?」
「全くいない。居ないはずだ」
「ならそんなことにはならないのでは?」
「わからんだろ?」
「まあ確かに。不思議な事ばかりですからね。ここは」
「ああ」
「—―にしても、お店なのに……不思議ですね。お客さんに来るなって」
呆れたように香良洲はいい。エプロンを畳んでカウンターに置いた。
「仕方ない。そういうところだからな。まあ俺ホントにここの事はちゃんとわかってないんだがね。馬鹿親が勝手に任せて消えたから」
「なんか急に1人は寂しいですね」
「慣れたよ。じゃ――もう来るなよ?元従業員」
「何回言うんですか。追い出したいみたいですね。ってか――実は真菅さん引き留めようと?」
「出てかないからだよ。引き留めようとは1ミリも思ってない」
「それはそれで酷くないですか?私かなり頑張りましたよ?」
「はいはい」
「もう――じゃ、私は――やり直してきますね」
「—―ああ」
「あっ。ちゃんと初めて作る料理は試食――って作るものは試食。味見してから出してくださいよ」
「何度それも言うんだよ」
「私が居なくなったら誰も言ってくれないですからね。多めに言ってます」
「不要だよ」
「——でわ」
「ああ」
俺が言うと香良洲は小さく手を振りつつ――ドアの方へと向かい。再度ドアの前で向きを変えてお辞儀してからお店を出て行ったのだった。
カランカラン……。
「……」
……そして誰もいなくなった。
香良洲という女性がお店を出てからしばらくお店にお客は来なかった。先ほどが忙しすぎただな。まあこのお店には人が来ない方がいいんだよ。そんなことを思いつつ俺は久しぶりの平和な1人の時間をのんびりと過ごしていた。
ちなみに――忙しすぎたからであろう。俺もちょっと疲れていたらしく。香良洲がお店を出てい言った後の事に注意を払っていなかった。
俺が見たのは――ただお店を出て行った香良洲だけだ。その後の事は――気にしてなかった。
だから……。
カランカラン……。
のんびりしていると。ドアの開く音が聞こえてきた。俺はため息をつきながら休息を終える。
「——1人になってもまだ客は来るか。実は現実世界で大量殺人とか。なんか変な病気が流行ってバタバタ人が倒れているんじゃないだろうな。こっちはもう一人になったんだから。さっきみたいな忙しいのは勘弁だぞ」
やっぱり今日はよく人が来るらしい。俺はそんなことを思いつつ立ち上がり入り口の方を見ると――少し暗めのベージュ色の髪を揺らしながら同年代くらいの女性が苦笑いをしつつ立っていたのだった。
その際だ。不意に俺は香良洲がこのお店を出て行った時の事を思い出した。香良洲はお店を出て行った。ただ出て行っただけだ。いつもここに来るお客さんは食べ終えて出て行くと――気配が消える。そしてそれは俺も感じることが出来て――来たばかりだった香良洲ですら感じることが出来るものだった。
なのに俺は――香良洲の時にはそういうことを感じることはなかったと思い出したのだった。
もう一度言う。俺の視線の先。
お店のドアのところには――。
少し暗めのベージュ色の髪を揺らしながら同年代くらいの女性が立っている。
俺は彼女を知っている。
当たり前だ。
ホント少し前まで――ここに居た元従業員なのだから。
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