存在自体が高慢であるという苦悩。


 二極化が進む世界。
 ごくわずかな富裕層と、明日すら安定しない貧困層。
 主人公は前者の方であった。恵まれた現状を自覚し、高層ビルから地上を見下ろす……



 身につまされる一作。
 表向き平等といいつつも、実際は隠しきれない上下が存在しているのは、過去も現代も変わらない……おそらく未来においても。
 聡明でも、善良でも、上に立つものは、それだけで高慢と見られてしまう。

 そもそも生活を維持するだけで、多くの電気、食料、人手を使わずにはいられない。どれだけの負担をまわりに強いているのかすら、はっきりはしない。

 そんな状況で「助け合いを」と差し伸べた手を、散々苦しんだ側はまっすぐに捉えられるだろうか。