第18話 体育祭

 空はからっと晴れ上がっている。


 正に絶好の体育祭日和だ。


「さーてと、オレ様の晴れ舞台だなぁ~」


 氷室が太陽の光に目を細めながら言う。


「きっしょ」


「身のほどをわきまえろよ」


「ザコが」


「あぁ!?」


 またチャラ友たちにディスられて、半キレしていた。


 目が合うと面倒だから、知らんぷりをしておこう。


「伸男くん」


 すると、岬さんが声をかけて来た。


「緊張するね」


「うん、そうだね」


「あの、まだ先のことだけど……リレーの時、よろしくね?」


「ああ。でも、大丈夫だよ。俺たち、あんなに練習したから」


「そ、そうだね……うふふ」


 岬さんは、ホッとしたように微笑む。


「おい、そこのエロ2人ぃ~」


 すると、沢村さんがニヤけ顔で絡んで来た。


「え、英子ちゃん?」


「始まって早々、乳繰り合ってんじゃねえよ~?」


「ち、違うよ、私たちはただ……」


「沢村さん」


「えっ?」


「お互いに、ケガしないように気を付けようね」


 俺が言うと、


「……お、おう」


 なぜか照れ臭そうにそっぽを向かれてしまう。


「何だったら、今ここで一緒にストレッチするか?」


「いや、この後すぐ、全体の体操があるでしょ?」


「ちっ、分かっているよ、バーカ!」


「なぜ怒られる……」




      ◇




 今日は快晴、絶好調、オレさま日和。


「伸男くん」


「伸男ぉ~」


 我が愛しのヒロインと、セ◯レちゃんは今日もイケてる。


「てか、お前の女2人(勝手に言っているだけ)、またモブ男んとこいるじゃん」


「フラれ男」


「てか、これってまさかのNTR? 流行の」


「うるせーよ、ザコ共が!」


「「「あぁ!?」」」


 ザコ共は睨みを利かせて来るが、そんなことはどうでも良い。


 こいつらの知能レベルの低さには、ほとほと呆れる。


 どう見ても、オレ様が主人公で、あいつはモブ。


 これは生まれながらにして決まっている運命だ。


 ではなぜ、今モブであるあいつが、主人公ムーブを決めているのかって?


 そんなの、真の主人公であるオレ様の前座に決まっているだろうが!


「てかさ、50m走は全員参加だから、英子も走るよなぁ?」


「うっひょ~、おっぱいボインボイン!」


「おい、ちょっとスマホ持って来いよ」


 ふっ、ザコ共が。


 お前らみたいな野郎は所詮、そうやって童貞ムーブをかますしかない。


 一方で、イケてる主人公のオレ様は、あいつの巨乳を直に揉むことができる。


 それだけでなく、あの生意気にエロく育ったカラダを……グヘヘ。


「おい、蓮のやつ、またキモい顔してんぞ」


「どうせ、妄想してんだろ」


「童貞かよ、きっしょ」


 ふん、ザコ共が。


 もうお前らとのくだらない戯言合戦は終了だ。


 オレ様は主人公だからな。


 ここからは、みんなの勝利のために、ひたすらかますぜ。


 そして、体育祭が終わった頃には……



『氷室、あんたやっぱ、イケてる男だね』


『氷室くん、ステキ……』


『おいおい、ハニー達。オレ様のことは、蓮サマって呼べよ☆』


『『蓮サマ~!!』』



 あぁ、ヤバい。


 オレ様が勝者すぎて、ヤバい。


 脳汁がドバッと溢れるこの感覚……早くセッ◯スして~(笑)


「どわああああああああああぁ!? 英子のやつ、長袖のジャージでびっちり防御を固めてやがる!?」


「おっぱいの希望がああああああああああああああああぁ!?」


「いや、でも太もものムチムチ具合もヤバいぞ」


「あぁ、確かに」


「あとでシ◯るわ(笑)」


 ふっ、ザコ共が!


 可哀想だから、後でこいつらにも恵んでやろうかな。


 もちろん、オレ様が散々と、しゃぶりつくした後でな。


 英子ぉ、乙葉のヒロイン度には及ばないが。


 お前のドスケベボディ、早く可愛がってやりたいぜぇ。




      ◇




 弾んだ呼吸を整える。


 ギャルで気だるいイメージのあたしだけど、運動は意外とデキる方だ。


 けど、あえて2位通過にしておいて。


 だって、エロ男子たちの視線がうざいし。


 氷室に至っては、マジでキモい顔で見て来るし。


 そんな中で、あたしの心を癒してくれるのは……


(……伸男)


 あいつは他のエロキモ男子たちとは違って、純粋な眼差しであたしのことを見つめて来る。


 それだけで、胸と子宮がキュンキュンと疼いた。



『沢村さん、お疲れ様』


『お、おう』


『ていうか、ジャージ暑くない?』


『もう、バカ。お前以外の男に乳揺れを見せたくないから、隠したのに』


『そっか、嬉しいよ』


『きゃっ……ねえ、伸男ぉ? あんたにだけは特別に……あたしの全部、見せたげる♡』


『うわっ……すごいエロい体だね』


『乙葉よりも?』


『うん。俺、やっぱり、おっぱい大きい方が好きなんだ。沢村さんみたいに』


『ねえ、英子って呼んで?』


『エロ可愛いよ、英子』


『いや~ん!』



 50m走よりも、妄想が加速してしまった。


 よだれが垂れたので、ハッとして拭う。


「……クソ、あたし、キモすぎんだろ」


 今まで、こんな風にゾッコンになる男なんていなかった。


 そんなあたしが、伸男にはこのカラダも心も全部、あげても良いって思っちゃう。


「……ワンチャン、体育祭の後、テンションハイでパ◯ッてくんないかな」


 爽やかな体育祭で、こんなこと考えちゃうのはバチ当たりかもしれないけど。


 それもこれも、ぜんぶ伸男が悪いんだ。


「やっぱ、乙葉には譲りたくねぇ~……」


 カラダは圧勝。


 でも、それ以外は……


「……大丈夫、弱気になるな。いざとなったら、この乳で伸男を窒息させて……って、殺したらダメだろ!」


 あたしがひとりごとで叫ぶと、近くにいた女子たちがビクッとする。


「あ、ごめん」


 適当に謝りつつ、あたしはクラスの定位置に戻って行った。




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