吸血鬼の生徒会長は「ひとりじめ」がしたい。

星野結斗

1:彼女との出会い。

第1話 出会い。

 俺は今、ある女の子に屋上まで呼び出された。

 二人っきりで話したいことがあるって言われたけど、どうしたらこうなるんだ…?屋上に集まる人々、そして目の前の彼女はウジウジしていた。何かを話したい気持ちは分かるけどな…、俺はもう決めたからその話には答えられないんだ。


「あ、あの…。井上先輩」

「うん」

「手紙…。読みましたか!」

「うん」

「す、好きです。先輩のことが…」


 俺の名前は井上星いのうえせい血蘭けつらん学院高等部の2年生だ。

 そんな俺が今、1年生の中で美少女と呼ばれている一瀬奏いちのせかなでに告られている。彼女は大手企業の孫娘でいつも人々に注目されていた。すごいお金持ちって噂されるのを小耳に挟んだことがある。


 周りの静寂、そして彼女の告白。

 人々は期待をしている。俺がその告白を受けるかどうかにおいて、お金をかける馬鹿馬鹿しい人も最近は増えていた。自分の口で言えるのは恥ずかしいけど、俺は学院の中で鉄壁のほしと呼ばれている。何度も告られたのに、それを全部断って一人だけの世界に生きていく感じ。まるで手が届かない星みたいな人、だからせいじゃなくてほしと呼ぶ。今更、考えても恥ずかしい噂だ。


「先輩…?」

「名前、何だっけ。一瀬さん?」

「一瀬奏です!」

「うん。そう一瀬さん、ごめん」

「えっ?」

「その気持ちに答えられない。いい人を探して…、俺は一瀬さんに釣り合わないんだよ」

「そんなことないです!先輩!頭も良くて、かっこよくて…」

「ありがとう。でも、それだけじゃダメ。そしてごめん…、一瀬さん」


 今日も告白を断る。


「本当に鉄壁の星ですね。先輩は…」


 噂を知っていたら告白なんかやらなくてもいいだろう。

 なぜ、そこまで人と付き合うことにこだわるんだ。その中には意地にも俺と付き合おうとする女の子がいる。やり遂げたいとか言って自分の気持ちを一方的に押し付ける人、そして断られたら泣き声で変な噂を流す。他にも偉い人が多いのに、何で俺にだけしつこいなのか…、それは分からない。それも噂のせいか…


 とりあえず、テストの勉強で教室に戻ってきた。

 噂はいつの間にか、学院の中に広がっていた。「聞いたか、また断られたって!」、「まじまじ?やはり鉄壁の星」、「でも、ちょっと嫌だ。そんな男子」とかコソコソ言っても全部聞こえるし、勉強に集中ができない。


 全く…、ため息をついてしまう。


「はい。そこまでみんな静かに」


 と、ざわめいた教室は彼女が一言を言っただけで静まり返る。

 あの人は血蘭学院高等部の生徒会長桐藤白羽きりふじしらはだ。日本で知られている桐藤財閥の次女で、この血蘭学院に通っているどんなお金持ちよりも圧倒的なプレッシャーを与える人。彼女はみんなの恐怖とともに憧れの対象である。


「……」


 やっと静かに勉強できるのか、よかった。

 それに比べて俺はただの凡人、特別選考で入学した普通の庶民だ。だから俺はそんなに偉い人と付き合うのができない、これは中等部の時から持っていた俺のトラウマだ。「ただの庶民が何で血蘭にいるんだ」と俺はお金持ちの子女にいつもいじめられていたから、なるべくそっちの人とは関わりたくない。


 こんなに普通の俺が何で今はいじめられないのか、不思議だろう?

 血蘭学院はお金も大事だけど、それより大事なのは勉強だ。今2年生の一位は桐藤白羽で、その後ろについているのが井上星、俺だ。だから勉強をして、その順位を維持しないと血蘭から俺の立場がなくなる。そして1年の時からずっと順位を上げたけど、そのトップにいる桐藤白羽には一度も勝ったことがなかった。


「おう!朝から熱心だな!星」

「裕翔?」


 こんな俺にも友達はいる。こいつの名前は今泉裕翔いまいずみゆうと、一度だけ会ったことがある裕翔の両親は弁護士の仕事をしていた。中等部の時からずっと一人だった俺にさりげなく声をかけてくれた裕翔。彼は勉強が得意ではなかったから、たまに勉強を教えたりして親しくなった一人しかいない友達だ。


「朝から勉強せず、ジュースでも飲もう!星」

「分かった」

「星、昨日のSNS見た?」

「何?」

「最近血蘭の辺りに吸血鬼が出るんだってー!」

「へえ…?そんなこといるわけな…」


 教室を出ようとした時、扉の前で思わず桐藤さんと目が合った。

 びくっとした俺はさりげなく先を譲る。


「先に…」

「ありがとう。井上さん」


 そう言ってから教室を出る桐藤さん。


「桐藤さんか…」

「何で裕翔がほっとする…?びっくりしたのはこっちだぞ」

「いや…、なんか桐藤さんはすごい美人だけど、怖いんだよな」

「そう?話したのは先が初めて…」


 その話を向こうから聞いていた白羽が廊下を歩いていく。

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