第10話  事件です!!

「尻がいて~」


「だから、それが目的だったのでは!?王子様のアバンチュールって!!」


「立場が逆だ~俺が女役になってどうするんだよ~」


 キースはまだブーたれていた。


「それでしたら、ご自分よりも大柄な人にすれば良かったのに……」


 呆れかえって、オーリは言った。


「そんな、ゴジラはタイプじゃないんだ~!」


「何処の国の召喚獣ですか?」


「知らん!!」


 キースは、朝までには洗濯をしてくれるという宿のサービスを使って、洗濯された自分の服に着替えた。

 オーリは、古着が何かないかと頼み、神官服を置いて行くから、旅人がここで着替え、置いていった古着に着替えていた。


「後は、礼金だな。」

「そんな、良いですよ……王子様のおかげで、こんな豪華な宿にも泊まれました」


 宿屋の朝ごはんを食べている時に、キースが礼金のことを言うと、オーリは断ってきた。


「遠慮することはないぞ。三日間もお前を拘束して、お前の本来の時間を奪ったんだ」


 オーリは驚いて、キースを見た。

 拘束していた自覚はあったようだ。


「なんだよ~その顔は~」

「お金でもらうと、旅をするのに物騒なので、アルテアの銀行に金貨を3枚分入れておいてください。オルランド・ベーカルでパーファー銀行に口座があります」

「いが~い!おまえ、金持ちなの?」


「両親の遺してくれた遺産です。大した額でもありませんよ。親戚も当てにならないから、銀行に預けてあるんです」


「わかった、そうしてやろう。」


 食事を終えて、二人は王城に向かって歩いて行くつもりだった。

 しかし誰かにつけられていることに気が付いた。


「王子様、つけられています……」


「分かりやすい、後のつけ方だな。素人だな……」


「僕には、あんな人相の悪い人に追われる思い辺りはありません!!」


「じゃ、俺かなぁ……俺が死んでも世継には困ってないぞ。この国は。

 弟がいるし……いざとなったら、銀の森の若長にもこの国の王位継承権はあるからな」


 二人は足早に歩いて、早く城に着こうとした。


 近道しようと路地裏にまわったのが良くなかった。


 人相の悪い男が先に回り込んで通せんぼしていた。


「何者だ!?」


「王子様……おれにも恵んでくだせぇ……おれは王子様を受け入れますぜ」


「な……」


 男はキース達より、確実に身長は頭一つ高く、マッチョ体型だった。


「さっきの宿屋で昨晩はお楽しみだったのでしょう?」


「お断りだ。お前みたいな顔はタイプじゃない!!」


「顔で決められても……身体の相性は分からないじゃないですか!!」


「とにかく、断る!!そこを退け!!」


 キースは、男の腕の下をくぐるように、向こう側に行こうとして捕まった。


「おい!?」


 男は短剣でキースを脅してきた。


「綺麗な顔に傷を付けたくなかったら、俺にもヤラシテ褒美をくれよ。」


「バカ言うな!!」


 キースが押し倒されて、男が馬乗りになって来た時、オーリは伸縮自在の腰の縄を思い出した。


 縄を男の首に3重に巻くと、思い切り締め上げた。


「「王子様に何をするんですか!!」」


 魔法の縄である。

 使い手によっては、凶器にもなった。


 男はよだれを垂らして、意識を失った。


 オーリも腰が抜けたようだ。


「キースティン王子、ご無事ですか?」


 宰相のグルルが帰りの遅いキースを迎えに来たのだった。


「グルル、つけてたのか……助かったぞ、オーリ」


「この男の身柄は、神殿に引き渡しましょう。記憶を消して、国外追放です。」 


 キースは強姦未遂事件の犯人を銀色の縄で巻き巻きにしてやった。

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