山村暮鳥「何処へ行くのか」『風は草木にささやいた』

またしても

ごうと鳴る風

窓の障子にふきつけるは雪か


さらさらとそれがこぼれる

まつくらな夜である

ひとしきりひつそりと


風ではない

風ではない


それは餓ゑた人間の声声だ

どこから来て何処へ行く群集の声であらう

誰もしるまい

わたしもしらない

わたしはそれをしらないけれど

わたしもそれに交つてゐた

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