いじめられていた令嬢は前世で飼ってた犬に似てるイケメン義兄に溺愛される

第10話真実

「アルバート様…何を？その女は下層の出の者ですよ」

セーラ様が震えながらアルバート様に声をかけた。

「先程から本当に無礼だな、シルビアこの女性は知り合いかい？」

セーラ様を無視して私に聞いてくる。

「あの…一応学友で、侯爵家のご令嬢です」

虐められていたとも言えずに言葉を濁す。

「学友ですって！あなたみたいな人と一緒にしないで！アルバート様、騙されてますよ！この人に何を言われたのか知りませんがあなたのような方と釣り合うような人じゃありません！」

私が言葉を濁したのを自分で崩した。

アルバート様はセーラ様が何を言うのかじっと聞いていた。

「それにその人は盗人なんです！こんな高価な物を買えるわけないのに見せびらかすように授業中も眺めてたんです！大事な人から貰ったなんて嘘をついて！」

そう言ってあの栞を取り出して見せつける。

私は本人の前でバラされて赤くなる顔を両手で隠した。

「ちょっと見せて…」

アルバート様が手を出すとセーラ様が喜んでそれを渡した。

「これを大事な人から貰ったって言ったって？」

「ええ！そうはっきりと嘘をつきましたわ」

「シルビア、本当かい？」

アルバート様は隠していた私の手をそっと掴んで退けると顔を覗きこんだ。

私は熱い頬を隠して恥ずかしいが頷くと、アルバート様が嬉しそうに両手で顔を挟み込むと上を向かされた。

「うっ…」

ちょうど叩かれた場所に触れて痛みに顔をしかめるとアルバート様の顔色が変わる。

「これは…誰にやられたの？この人かな？」

アルバート様の心配と怒りのはらん声に私は慌てて頬を隠した。

「大丈夫です！大したことはなくて…その…ぶつかって…」

なんと言い訳すればいいのかと戸惑ってしまった。

「見せて」

アルバート様は優しく手を退かせると赤くなった頬を優しく指の腹で撫でた。

アルバート様の冷たい手が気持ちよかった。

「可哀想に…くっきりと手の痕ができてる。僕のシルビアに傷を付けるなんて…」

「え？僕の？」

ワナワナと奥から吐き出すような声に私は耳を疑う。なんか今変な事を言ったような…

アルバート様はくるっと私に背を向けてセーラ様に向き合った。

「君は確かアビット侯爵の娘と言ったな」

丁寧な言葉遣いが消えて、冷淡な声が響く。

周りの人達もアルバート様の態度と声に顔を青くした。

「は、はい…」

さすがのセーラ様も素直に頷く。

「私はアルバート・シスレーだ。それはわかっているようだな。そしてシルビアは私の最愛の妹だ。お前は私の妹を傷つけ侮辱した。この意味がわかるか？」

「アルバート様の妹？」

セーラは目を見開いてアルバート様と私を交互に見つめる。

「シルビアさん…いえ様がシスレー公爵の娘でアルバート様の妹…？」

納得できないのか何度も口にして確認する。

「父とシルビアのお義母様が婚約したのだ。まだ正式には発表されていないがこの私が証明する。彼女は確かに私の妹だ…それをこの様な扱い、許す訳にはいかない。君の父のアビット侯爵にもそれなりの罰を受けてもらう」

「そ、そんな！父は関係ないです！それに…シルビアさん…様がした事は本当です！」

「それはこれの事か？」

アルバート様があの栞を取り出した。

「は、はい！」

「これは私がシルビアに送った物だ、それを盗んだのはお前だろ。シルビアが持っているべき物をなぜお前が持っていた？」

ジロッと睨みつけられセーラ様はガタガタと震えてだした。

「この事は学園にも父にも伝えさせて貰う。それなりの罰を覚悟しておくことだ。他にも何かしてたら…私はお前を許さない」

アルバート様はそう吐き捨てるとセーラ様はガクッとその場に座り込んだ。

ザワザワと騒がしくなる教室をアルバート様はジロッと見渡す。

「傍観していた君達も覚悟するんだな」

「そ、そんな！私達は何も…」

取り巻きの一人が膝を付いた。

「嘘おっしゃい！あなたも一緒に虐めたでしょ！」

セーラ様が必死な形相で睨みつける。

「虐めた…まさかずっと前からこんな事を？」

アルバート様は信じられないとセーラ様達を見下ろすとゆっくり近づいていった。

今にも手を出しそうな雰囲気に私は慌ててその腕を掴んだ。

「アルバート様！私は大丈夫ですから！」

私はピリピリとした空気を放つアルバート様に声をかける。

するとくるっと振り返ったその顔はいつもの優しい笑顔だった。

「シルビア、その傷を手当てに行こう。今日はもう休みなさい」

そう言ってその場で抱き上げられた。

「きゃっ！」

横抱きにされて思わず首に抱きつくと「そのままに」と言われて歩きだし教室を出る。

すると誰かが呼びに言った先生が慌てた様子で駆けつけてきた。

「アルバート様！いったい何が！？」

教師が何事かと声をかける。

「大事な妹が傷つけられました…厳選な処分を求めます。話は妹のクラスの人に聞いてください、私は妹の手当てがあるので」

アルバート様はそう言うと呼び止める教師を無視してサッサと部屋へと私を連れていった。

「おかえりなさいませ…どうしたのですか？」

すると迎えてくれたグレイさんが私達の様子に驚いた顔をする。

「シルビアが傷つけられた、ミーナは手当てをグレイは父に連絡してくれ」

「はい」

グレイさんはすぐに状況を理解したのか部屋を飛び出した。

「シルビア様、こちらに」

ミーナさんが心配そうに私を支えて自室へと連れていかれる。

座らされて頬の様子を見られた。

「女の子の顔に酷いことをしますね！」

ミーナさんがプンプンと怒りながら冷たいタオルで冷やしてくれた。

「私もやり返したからお互い様なのよ」

「え？シルビア様が？」

うんと頷くとミーナさんがニヤッと笑った。

「それは素晴らしいですね、でも痛そうです…アルバート様がお怒りになったでしょう？」

「そうね、ちょっと怒ってたわ」

「ちょっと？」

ミーナさんは首を傾げながらずっとタオルを当ててくれていた。

◆

シルビアがミーナに連れられて部屋へと入るとアルバートは部屋を出ていく。

そしてそのまま職員室へと向かうとそこでは先程の騒ぎにシルビアの教室の生徒達が集められて事情を聞いていた。

「アルバート様！」

すると学園長がアルバートに気が付き青い顔で駆け寄って来た。