宇宙創戦記XTENTION《うちゅうそうせんきエクステンション》

ヒイロ・ユウ

第一部 神生篇《しんせいへん》

第0戦記 プロローグ

 時は「新宇宙暦しんうちゅうれき」…。


 広大な宇宙の海に浮かぶ、一つの青い惑星があった。




「ラニアケア超銀河団ちょうぎんがだん おとめ座超銀河団ざちょうぎんがだん おとめ座銀河団ざぎんがだん あま川銀河がわぎんが オリオンわん 太陽系第三惑星たいようけいだいさんわくせい」、「地球ちきゅう




 これは、かつて「最終戦争ハルマゲドン」と呼ばれた地球規模の全面核戦争「第三次世界大戦だいさんじせかいたいせん」も遠い過去の歴史となりつつある、遥か未来の話である。




 人類は第三次世界大戦で死の星となった地球を「地球再星計画ちきゅうさいせいけいかく」によって元通りに修復。様々な異星人との交信にも成功し、その年の元号を「新宇宙暦」と制定した。


 そして、太陽系・天の川銀河・おとめ座銀河団・おとめ座超銀河団を越え、ラニアケア超銀河団全域までに進出した人類に、第一次世界大戦から数えて6度目の大戦が訪れることになる。




 新宇宙歴2055年、突如現れた謎の地球外勢力である「インベーダー」の侵攻により、ラニアケア超銀河団全域を巻き込んだ宇宙規模の戦争が勃発したのである。


 のちにその戦争は「第二次宇宙大戦だいにじうちゅうたいせん」と呼ばれ、惑星破壊兵器などに加え「アーマード・ギア」と呼ばれる機動兵器の数々を用いた総力戦が銀河各地で行われ、幾多の星が宇宙から消え、太陽系にも深い爪痕を残した。


 だが人類は、高度に発展した敵の科学力と兵器の数々に大苦戦を強いられながら、宇宙環境にも甚大な被害を与える大惨事となる10年間に及ぶ泥沼の戦争に、辛くも勝利した。




 敗戦した謎の地球外勢力であるインベーダーは自らを、多数の銀河団を手中に収める「超銀河団連合国家ちょうぎんがだんれんごうこっかギャラクシア・ヴァース帝国ていこく」であると名乗った。


 そして、自分たちはギャラクシア・ヴァース帝国の一大艦隊である、「ラニアケア超銀河団方面偵察艦隊ちょうぎんがだんほうめんていさつかんたい」にしか過ぎず、「地球人は全宇宙にとって非常に危険な存在であり、放置することはできない。いずれ本国から超艦隊がこの銀河へ押し寄せるであろう」と言い残し、残存勢力は本国へ撤退した。


 多大な犠牲を払いながらも倒した敵が強大な勢力のほんの一部でしかなかったという事実は、ラニアケア超銀河団の人類に更なる絶望と恐怖を与えた。




 そんな絶望と恐怖に立ち止まる暇もなく、人類はギャラクシア・ヴァース帝国本国艦隊の侵攻に備えるべく、ラニアケア超銀河団の戦力と有力者たちを結集し、有能な科学者たちを総動員してギャラクシア・ヴァース帝国に対抗しうる兵器やアーマード・ギアの開発を急いだ。


 政治面では前身となる「銀河連邦政府ぎんがれんぽうせいふ」の上層部が中心となり、ラニアケア超銀河団全域を統治するための政府機関「宇宙連邦政府うちゅうれんぽうせいふ」を樹立。


 そして宇宙連邦政府はその権威の象徴として「星帝陛下せいていへいか」と呼ばれる皇帝を擁立し、初代星帝には、かつて超古代文明の王国の一つであった「アトランティス帝国ていこく」を統治していた王族「アトランディア王家おうけ」の末裔である「アルル・ド・アトランディア」が即位した。




 時は流れ新宇宙歴2079年。




 6度の大戦を乗り越え、前大戦の敵からもたらされたテクノロジーによって、さらに科学と文明を大きく発展させた人類は未知の世界への冒険と新たな可能性を求め、宇宙の果てを目指すべく、いよいよラニアケア超銀河団の外へ進出を開始した。


 しかし、前大戦の破壊兵器の数々によって引き起こされた宇宙環境の変動により、時折発生する時空の裂け目から現れる、謎の生命体の襲来が人類の行く手を阻んだ。


 人類は時空の裂け目を、中から天使の聖歌の様な美しい歌声が聴こえる様から、旧約聖書の創世記に記されたエデンの園に例え「EDEN'S GATE《エデンズゲート》」と呼び、謎の生命体には不気味な赤い光を放ち、鋭い牙や爪を持った禍々しい怪獣の姿をしていることから「魔光牙まこうが」と名付けた。




 だが魔光牙の出現と同時に、宇宙連邦政府内の派閥争いも激化。




 星帝アルル・ド・アトランディアが急没。


 星帝がいなくなった宇宙連邦政府内で、アルルの次男「シャルル・ド・アトランディア」を擁立せんとする「ラングランド・アルベルト中将ちゅうじょう」を中心とした改革派と、長男である「ラウル・ド・アトランディア」を擁立せんとする「セルゲイ・ゴルルコフスキー大将たいしょう」を中心とした武断派が後継者をめぐり争った。


 両者は「天ヶ原宙域あまがはらちゅういき」にて対峙、のちにこれを「天ヶ原あまがはらたたかい」と呼んだ。


 激戦の末、天ヶ原の戦いに勝利したラングランド率いる改革派は、次男シャルルを星帝として擁立し、ともに天ヶ原の戦いを勝ち抜いた将校たち6人と共に「七賢星しちけんせい」と呼ばれる最高意志決定機関を発足。彼らは星帝の影で政治の実権を握った。


 これにより宇宙連邦政府による盤石な政治体制がラニアケア超銀河団内全域に敷かれることとなり、敗北したセルゲイ・ゴルルコフスキーはラウル・ド・アトランディアとともに外宇宙追放刑となった。




 それから10年後の新宇宙歴2089年。




 最悪の予想は的中し人類は7度目の大戦を迎えることとなった。




 ついにギャラクシア・ヴァース帝国本国が宇宙連邦政府へ宣戦布告し「第三次宇宙大戦だいさんじうちゅうたいせん」が勃発。


 ギャラクシア・ヴァース帝国を治める皇帝を超える皇帝「超帝ちょうてい」として君臨する女帝、ヘレル・サタン・ルシファーは外宇宙勢力を下し、多数のマルチ・ヴァースの皇帝たちを配下の将軍として従え、戦力を増大。ラニアケア超銀河団へ侵攻を開始した。


 宇宙連邦政府はギャラクシア・ヴァース帝国本国の超艦隊と正面衝突。もはや全面戦争は避けられぬ事態となり、その戦火は太陽系にも迫っていた。




 さらに、地球人が宇宙へ進出し多数の惑星と交信を持って長い年月が経った今でも、地球至上主義を叫び続ける宇宙連邦政府の圧政や弾圧、異星人への差別などに対する反感が、宇宙連邦政府政権下で爆発。


 この戦乱を好機と見た「反宇宙連邦政府はんうちゅうれんぽうせいふレジスタンス組織そしき REVARSE《リヴァース》」が火星を中心としてレジスタンス活動を各地で激化。


 そこへ漁夫の利を得ようとするかのように「宙域指定機甲暴力団ちゅういきしていきこうぼうりょくだん 星龍會せいりゅうかい」、スペースマフィアの「宇宙犯罪結社うちゅうはんざいけっしゃワルディ・シンジケート」、「宇宙海賊うちゅうかいぞくカルバリアだん」といった、スペースアウトロー集団までもが活動を活発化させ、宇宙の治安は大きく悪化した。




 その一方では、「旧世界きゅうせかい」と呼ばれる第三次世界大戦以前の地球で第二次世界大戦に敗戦し、南極の地下から「地底王国ちていおうこくアガルタ」へ逃げ延びた「ナチス・ドイツ」の残党が始動。


 指導者フューラーである「Dr.エビル」は各地に散らばったナチス・ドイツの残党や、異世界・他の銀河や星系から寄せ集めた選りすぐりのエリートを結集して「真聖しんせいナチス第三帝国だいさんていこく」を宇宙に建国することを標榜とした「機甲十字軍きこうじゅうじぐん」を結成。


 未知のオーバーテクノロジーを用いたアーマード・ギアや兵器の数々で地上へ侵攻を開始した。




 また「聖血神せいけつしん」と呼ばれる異形の神々を信奉し、この世の全ての人類を罪と欲望で穢れた存在である「死血しけつなるもの」と称して、この世に存在する自分たち以外の全ての人類はおろか、自らさえもこの世界とともに破滅させることを目論むカルト宗教団体「ブラディスト教団きょうだん」までもが出現。


 その教祖である、「暗黒大司教あんこくだいしきょうブラドス」も利害の一致により機甲十字軍と手を結び、信徒たちを率いて戦乱に乗じた。




 刻一刻と押し寄せる、かつて人類至上、誰も見たことがない宇宙の全てを巻き込む大戦争。




 前大戦で被害がほとんどなかった地球では、世の誰もが戦争を忘れ無関心・無気力に過ごしていたが、戦乱の予兆を感じ取り、戦うために動き出す者たちも少なからずいた。




 地球の国の一つである日本。その政府機関である「新日本政府しんにほんせいふ」の省庁の一つ「地球防衛省ちきゅうぼうえいしょう」と地球防衛省が保有する戦力「最終自衛隊さいしゅうじえいたい」は、この未曾有の危機に立ち向かうべく重い腰を上げる。


 そして、第367代内閣総理大臣である「阿蘇部晋太郎あそべしんたろう」の協力の元、最終自衛隊の最終決戦兵器を起動させるために、宇宙連邦政府の制約を受けつつも水面下で動き出す。


 その名は、試作型アーマード・ギア「バスターシリーズ」と、バスターシリーズから構成される、合体型スーパーアーマード・ギア「波動氣神はどうきしんジェネバスター」。


 このバスターシリーズとジェネバスターのパイロットには、「ジェネシス・スパイラル・コード」、通称「GSC《ジーエスシー》」と言う特殊な遺伝子コードが一致する5人の少年少女たちが選ばれた。


 彼ら彼女らを「新東京都しんとうきょうと」にある最終自衛隊の秘密基地「最終自衛隊総司令部さいしゅうじえいたいそうしれいぶ」へ招集するべく、隊員たちは奔走することになる。




 その5人の少年少女たちの名前はそれぞれ、


 火星帰りの「帰星子女きせいしじょ」で、水泳の地球代表選手の少女「杏花きょうか・E《イー》・ティアー」。


 大規模人気アイドルグループ「Space Girls369《スペースガールズミロク》」のメンバーで、IQ500の天才少女「皇麻里奈すめらぎまりな」。


 大人気若手小説家の少女「雪月萌ゆきつきもえ」。


 大人気グラビアアイドルで、「新東京大学しんとうきょうだいがく」の女子大生「華園明日美はなぞのあすみ」。


 そして、現在は名前が不明の謎の少年。


 以上の5人である。




 これから待ち受ける想像を絶する過酷な運命と戦いを知る由もなく、それぞれの想いと使命を胸に秘め、彼ら彼女らは戦乱の渦に足を踏み入れてゆく。




 時を同じくして、一人の女性エージェントも動き出す。




 黒色のパイロットスーツを身にまとい、漆黒の闇に咲く薔薇の様なスーパーアーマード・ギア「阿修羅天あしゅらてんデア・シャッテン・ローゼ」を駆る彼女の名前は、「ミア・沙羅さら・シュナイダー」。


 機甲十字軍の一員で、表舞台では大人気ファッションモデルとしても活躍している。




 「実験体を…、回収せよ…」




 彼女もまた、自らの想いと使命を胸に秘めて戦う決意をするのだった。

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