第三章 新たな仲間は突然に
第1話 バディマスコットとの生活
「今度の木曜の放課後、イエローに会いに行ってみようぜ! 近所の空き地で集合な」
まるで野球の約束をする小学生のような口調で言って、
ただ、ユウはこういうおかずが好きだったので、今夜も美味しくいただいた。
夕食後に母は、今日妖バグに襲われて無事だった事を、嬉しそうに父に報告していた。ずっとしゃべりっぱなしの母の様子を見るに、父は恐らくこのマシンガントークに相槌をうつのが精いっぱいなのだろう。母は一方的に一時間程話し続け、最後に「愛してるわダーリン」と言って電話を切った。恐らく父は「僕もだよハニー」と答える
そんな元気な母の様子を
自室のベッドの中央で、ポイラッテがうつ伏せに寝そべっていた。
「人のベッドでくつろぐな!」
「ユウの匂いがするぅ……」
顔をめり込ませて、一心不乱にくんくんと匂いを嗅ぎまくってるポイラッテに一瞬だがぞくりと寒気がしたので、べりっとシーツから引きはがして座らせる。
「嗅ぐな、変態か!」
罵倒された事にほっぺをパンパンに膨らませてブーイングを示していたポイラッテだったが、何かを思い出したように口を開く。
「明日、君のお母さんに暗示をかけて、僕を家族の一員のペットとして記憶に登録するね」
「暗示?」
「僕たちはバディマスコットとしてマジカルヒーローと共に行動する事になるから、できれば家の中は自由に行動したいんだ。君以外に評議会の事を説明するわけにはいかないから、僕がペットという刷り込みをしたい」
「暗示だなんて物騒だな……」
「大丈夫、ペットとして魅力的なビジュアルをしているだろ?」
「してない」
ユウは食い気味に即答したが、ポイラッテはうっとりとした表情で己のたゆんたゆんのほっぺをぐにぐに揉んでる。
「このボディ、気に入ってるんだ。暗示っていっても、ユウが拾ってきた可愛い動物を飼う事になった、っていうぐらいだよ」
「犬とか猫の一般的な見た目ならともかく、おまえ……」
むちむちのファンシーカラーの巨大ハムスター羽根付きである。不審すぎる。
「大丈夫可愛いから! 可愛いは正義!」
自信満々に可愛いを連呼するポイラッテを見ながら、片手間に収納用の段ボールを組み立てる。中にタオルケットを敷くと、自己愛に
「そこがポイラッテの寝床な」
「えっ、僕もベッドがいいよ」
「ペットのベッドはそこなの!」
「一緒に寝たいけど……そっか、婚前交渉ははしたないもんね」
ユウは無言でポイラッテの脳天に手刀をたたきこむ。箱の中で頭をおさえてうずくまったそれを隠すように段ボールに蓋をして、ガムテープでしっかり梱包した。暫く中からボコンボコンという音がして、続けてキューンキューンと子犬のように哀し気に鼻を鳴らしていたが、数分のちにはフゴフゴプギプギと、豚の鳴き声のようなイビキが聞こえて来る。
一体本当に、何の動物だよ! と脳内で突っ込まずにはいられないユウであった。
* * *
その夜。
暗闇。
目をいくらこらしても、見えるのは一面の黒。
黒は好きな色ではあったが、今は不安を搔き立てる。
タールのように体にまとわりつく闇が、ユウの体の動きを縛り、前に進みたいのにねっとりと絡みついて、身動きが取れない。
遠くからカサカサカサという音が聞こえ、それがザカザカザカという音に変わり、徐々に近づくにつれて振動付きでドギャドギャとアスファルトを
それが今日出会った、巨大ムカデの足音であることを思い出した。
「逃げなきゃ。こっちに来る」
必死に体をひねり足掻くが、動かない。巨体が迫る。とにかく息が苦しい。まるで巨人に胸を抑え込まれているようだ。
それに付随して逃げられない恐怖。
今日出会った妖バグの大人の胴ほどの太さがある足。それが間近に寄って来たのでよくよく見ると、実際に人間の胴体がムカデの体にめり込むようにはめ込まれていて、あまりの恐怖と気持ち悪さにユウは悲鳴をあげた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます