第6話 チーム結成

 こうして、俺と優希はじいちゃんの待つ家に着いたのだった。


 「ただいま、じいちゃん。」


 「お邪魔します。」


 家の奥からじいちゃんが出てきた。そして、優希を見て目を大きくした。


 「おう、お主は優希君かい。久しぶりじゃのぉ。小学生3のときにここから町の方に引っ越したから6年ぶりじゃの。真一のじいちゃんじゃ、覚えておるかい?」


 「はい、覚えてますよ。小さい頃、2人でよくヤンチャして怒られてましたから。」


 「そうじゃったの、覚えておったかい。今後も真一をよろしくぞ。」


 「こちらこそ、真一にはお世話になってます。」


 なんだこの優等生みたいな回答は、お前はそんなキャラじゃないだろ。


 「真一、なにか?」


 優希が顔に満面の笑みを浮かべてこちらに振り向き、俺に話しかけてきた。

 超怖いんですけど‼︎‼︎


 「なっ、何もないよ?あっ、あははは。」


 「そう?」


 何とか乗り切れた。

 その後、俺は優希を俺の部屋に案内した。


 「ちょっと待ってて、飲み物とってくる。」


 そう言って俺は、優希を1人部屋に残して飲み物を用意するために部屋を出た。この間に、優希にダンジョンのことを話して良いかじいちゃんに早く相談しないと。


 じいちゃんの部屋に着いた。ノックして返信を待つ。


 「真一か、入ってよいぞ。」


 その声を聞いて部屋の扉を開けるとそこには、真剣に装備のチェックをしているじいちゃんがいた。俺は邪魔しないように静かにじいちゃんに話しかけた。


 「あのさ、じいちゃん。優希に昨日のこと説明しても良いかな。」


 そうするとじいちゃんは手を止めて、しばらく考えていたがやがてこう言った。


 「別に構わんよ。真一が優希を信用できると判断したんじゃろ。それに優希君ならわしが知らない人でもないしの問題ないじゃろ。」


 そう言うとじいちゃんは、また装備のチェックを続けた。

 じいちゃんから許可をもらえたことにホッとした。部屋を出ようとする俺にじいちゃんが話しかけてきた。


 「じゃが、真一。秘密を話すということはバラされるという危険があるだけじゃなく、相手にも『秘密にする』という負担をしいることにもなる。今後、誰かに話すときはわしか隣の勝山田さんに必ず相談しなさい。もし、優希君に話して、彼もダンジョンに行きたいというならわしに言いなさい。」


 「分かったよ。じいちゃん。」


 そして、俺は部屋をでると台所でお茶を用意して優希の待つ部屋に戻った。部屋に入ると優希は本を読んでいた。俺が部屋に戻ったのに気がつくと彼は言った。


 「ずいぶんと遅かったね。」


 「まぁな。じいちゃんに確認してたからね。」


 俺はテーブルに飲み物を置きながら返信を返した。


 「その様子だと問題ないみたいだね。」


 「許可はもらってきたよ。まぁ、ただ話しても信じてもらえるか分からないけどな。」


 「とりあえず、僕に聞かせてよ。」


 そして、俺は昨日のことを最初から話した。

 全て話し終わると彼は言った。


 「ふーん。信じられない話しだね。」


 「でも、君がこんな冗談を言う人間じゃないから本当のことなんだろうね。」


 「まぁ、事実だしな。」


 優希は、頭の中を整理するかのように黙り込んだ。

 俺も口を閉じて静かな時間だけが過ぎる。

 そんなとき、


 「よし。」


 何か覚悟を決めたように優希はそう言った。


 「僕も真一と一緒にダンジョンに入るよ。」


 「え?マジで⁉︎」


 「何?文句あるの?」


 「いや、だってダンジョンは危険なんだぞ!」


 「それは、真一にも言えるよね。それにダンジョンや魔物が本当なら、地上もどこまで安全か分からないしね。それなら、いっそ僕も人を守れるように強くなりたいからね。」


 優希の決意は固く、いろいろ言ったが考えを変えることはなかった。そこで、2人はチームを組んでダンジョンに入ることにした。


 「分かったよ。じゃあ、早速じいちゃんのところ行ってダンジョンに行くか。」


 真一が立ち上がって部屋を出ようとすると、優希が止めてきた。


 「待って。もしかして、明日が何の日か忘れてないよね?」


 「明日?」


 あっ‼︎

 明日は中学の卒業式である。もし、今日ダンジョンに行って怪我でもしたら、欠席するしかなくなる。流石にダンジョンに行きたい真一も今日は諦めることにした。


 「でも、明日なら?」


 そう伺うように優希に聞いてみる。


 「じゃあ、真一は卒業式後のパーティーに欠席するの?」


 「明後日にします。」


 俺はいじけながらそう言った。

 どうやらダンジョンに入れるのは、早くても明後日になるらしい。悔しさはあるが、卒業式やパーティーを欠席するつもりはない。俺はしかたなく諦めることにした。

 そんな俺を見かねたのか優希は言った。


 「僕も明後日で問題ないから、君のじいちゃんに相談して準備できることはしたら?」


 それを聞いて俺は部屋を飛び出した。

 早速じいちゃんの部屋に行き、明後日ダンジョンに優希と一緒に行きたいことを告げた。すると、じいちゃんは当日動きやすい格好でくるようにと言ってきた。


 他のことは、全部じいちゃんがするそうだ。そして、じいちゃんは優希にその日はうちに泊まることを親に許可してもらうように言った。それを優希は了承して、明後日は無事にダンジョンへ行くこととなった。



・・・・・・・・・


SIDE 世界の反応


 あの大災害から1日が過ぎた。人々は、被害から少しずつだが日常を取り戻しつつあった。そんな中、ついに魔物の存在が公になった。最初は、テレビのニュースで謎の生物が撮影されたとして放送された。


 世界の反応は、フェイクだとする者、本当だとする者、この話しに興味がない者の3つに分かれた。そして、しばらくすると情報が集まり出して、どうやら本当らしいということが分かった。


 各国の政府が魔物の存在を認知し始めたとき、同時に魔物が出現した場所の近くに謎の穴ができることを突きとめた。警察が最初に穴を調査していると中で魔物と遭遇した。その報告を受けて政府は穴をダンジョンと命名した。そして、ダンジョンの周囲を壁で囲い、軍を中に入れてさらに調査することにした。


 その結果、人類は怪我人を出しながらも何とか魔物を倒すことに成功した。怪我人が出た原因として、外から持ち込んだ兵器が中の魔物に全く通用しなかったことがあげられる。

 銃が効かなかったため、ナイフで対応したがそれも効果がなく、最後には手や足を使って体術で勝利を収めた。


 そして、魔物を倒したことで様々な戦利品を得ることになった。この戦利品は、すぐさま研究機関に運ばれて秘密裏に調査されることになった。


 調べていくと、魔物が落とす赤い石はエネルギーの塊であり、電気に変換できることが判明した。こうしてダンジョンは、国家が保有する資源という見方がなされるようになった。


 また、魔物を倒した軍人はレベルが上がりステータスとスキルを手に入れたことが報告された。レベルを上げると身体能力の向上や、特殊なスキルが使用できるようになることが確認された。このことから各国は、こぞって軍のレベルアップに勤しむことになった。


・・・・・・



 こうしてダンジョンは、一部の人に認知されていくようになった。たがしかし、このときは誰もダンジョンの脅威を嫌でも認識させられる事件が起きることをまだ知らない。

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