第4話 Dスキル使ってみます

「く…」

「うおぉぉぉ! 何が起きるんだ!?」

「すごーい! あかるーい!!」

「うっ…眩しいわ…」


 あまりの光に目を強く瞑る。


 数秒目を閉じ、光が収まって来たのを見計らい目を開ける。


「「「「…」」」」


 そこには何も変わっていない洞窟だった。


「何も変わっていないんだが…?」


 そう呟いた瞬間、またボードが現れる。


【ダンジョン主、アノムの半径2メートル以内がダンジョンと化しました】


「はぁ?」


 少し怒気混じりに疑問の声を上げる。


 俺の周りがダンジョン? 何を言ってるんだ? 意味が分からない。


「どうしたんだ?」


 ガギルが恐る恐る背後から声をかけてくる。


「あ、あぁ。悪い。ボードに俺の周りがダンジョンになったって書いてあって…」

「アノムの周りが?」


 ガギルは顎に手をやり、少し考える。

 エンペルとルイエは、ガギルの顔を覗き込む。


「アノム、少し動いてくれないか?」

「ん? あぁ」


 俺はガギルの言う通り、洞窟の中、洞窟の外と動き回った。


 これで何かが分かるのか気になったが、こういう考える事、研究系は俺達の中ではガギルが専門だ。


 俺は何分かガギルの言う通りに動いた。


 そして動き回った結果。


「これは、アノム自体がダンジョンになったのではないか?」

「……はぁ?」

「今動き回った時、ついて回ったが、アノムの周りの地面が普通の地面よりも温かく感じたんだ」

「ま、まさか…」

「あぁ。このダンジョンはダンジョン主、アノムに付いて移動するダンジョンだって事だ」


 ガギルは淡々とそう告げた。




 あまりの出来事に静寂になっている中、ルイエが唐突に言う。


「でも、今のままじゃただの床暖房ね」


 まぁ、間違いではないが…節操ないな。


「ルイエ、これは凄い大発見なんだぞ。まずこのDスキルという物がダンジョンにある事事態が凄い。それに加えて移動するダンジョンと来たら

「アノムの近くに居ればいつでも快適で良いわ」

「でもー、折角ダンジョンになったんだから他の事もしてみようよー」


 ガギルの話を聞かず、2人の女子の話が盛り上がりを見せる。


 エンペルの意見に少し魅力を感じるけど…。


「…今はまだ魔王城や人里から近過ぎる。後はまた今度やろう」

「まずは安全が先か」

「うーん、それもそうかー」

「床暖房が動くなら私も行くしかないわね」


 そんな理由でついて来るのはやめて欲しいのだが…ダンジョンが俺に付いてまわる事で、今のところ何か不利益がある訳じゃない。


 増してや床暖房代わりになるのは、火をわざわざ付けなくても良くなる。


 このメリットがあるだけでも儲け物と言った所だろうか。


 だが…。


。それが俺達、パーティーのルールなんだ。なるべく遠くへ行く事は最優先事項だから、移動する。そこを忘れんなよー」


 俺はそう言って、皆んなと洞窟から離れた。




 今はまだ小さな火種。

 それが世界に影響を与える火になるのは、いつの日になるのか…。


 それは、世界が彼等に与える試練次第。

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