第24話 俺は○○○だッ!!



 俺は依頼を受諾したあと、2日ほど馬車に揺れ目的の場所についた。ちなみに今回、三人はお留守番だ。呼ばれたのはAランク冒険者である俺。もし3人ともついてきて、他の人たちの足手まといにでもなったら大変だからな。


 キャシーとシアは、そう言ったら渋々納得してくれた。だけど、ミラは俺が馬車に乗っるまでものすごく行きたがってた。どうやら、Sランクパーティーである強者の灯火に会うのが夢らしい。でもなんとか説得させ、俺だけで来た。


 

 そうして現在に至る。

 馬車を降りて、指定の場所に来たのだが……とくになもない。あるとしたら奥に、草が茂っている森だけ。


 俺は、まさか場所を間違えてしまったのかと慌てていると……。


「――ガサガサ」


 森の奥からなにか物音がした。

 俺はこの近くに迷宮があるのならそこから魔物が出てきてしまったのかと思い、スキルを使う準備をして恐る恐る草をかき分けた。 


 するとそこにいたのは……男二人と女二人。

 まさか、この人たちが一緒に戦う冒険者パーティーなのだろうか?


 俺はまだ迷宮の穴らしき場所で待機している四人に見つかっていないことをいいことに、そんな妄想を続けていた だが、そんなことをしていても意味がない。

 

 意を決して足を進める。


「ん?」


 近づいている草むらの音に気づいたのか、全員の目が俺に向かってきた。それも、警戒心丸出しで。

 俺は変な誤解をされたくないので、両手を上げて草むらからでる。


 すると……。


「俺はAランクパーティー、賢者の集いのリーダー……ロットだッ!!」


 一番前にいた男が、体を目一杯動かして自己紹介してきた。そして返しを待つかのように、俺に向かって目配せしてきた。


 これってまさか、俺もおんなじことをしないといけないだろうか? ロットの後ろにいる三人にすごい冷たい目で見られそうだけど、ここでしなかったらノリ悪いよな。


「俺はAランク冒険者、ロンベルトだッ!!」


「おいらはボロダインどす」


「わ、私はティラです」


「……サリィよ」


 俺が自己紹介すると、ロットの後ろにいた三人は何事もなかったかのように言ってきた。


 な、なんだ。変な自己紹介なんてしなくてよかったのか……。


「いやぁ〜! この挨拶に乗ってくる人が来るなんて、初めてだよ! 改めてよろしく。ロンベルト」


「こちらこそよろしく。ロット」


 俺は出された右手を合わせて握手した。


 変な自己紹介して、恥ずかしく思ったけどなんやかんや空気が軽くなった気がする。さすがAランクパーティーのリーダー。


 あと関係ないけどこうやって出合い頭握手するのって、俺が憧れている冒険者っぽくていいな。


「君ってもしてなんだけど、最近噂になってる史上最速でAランク冒険者になったっていう冒険者かい?」


「まぁ、そうかな」


 すごい。俺はロットたちのことなんて微塵も知らなかったのに、相手は知ってるのか。俺のことはもう、色んな人に知られているのだろうか?


「ほら! サリィ! やっぱり俺の予想が正しかったじゃないか!!」


「ふん! そんなの知らないわよ!」


 サリィという女。言動がツンツンとしている女は、顔を振って知らんぷりしている。


 ん? 一体、何を予想していたんだろうか? 

 まぁ、俺はこの人たちとは知り合いでもなんでもないからそんなの聞く立場じゃないよな。


「ごめんごめん……話について来れてないよな。実はさっき、俺たち以外に誰がAランク冒険者が来るのか予想してたんだ」


「へぇ〜……」


 この人たちには俺がここに来るということは知らされていなかったらしい。


 というよりかは、もしかしてそんな予想していたってことはある程度の時間、ここで俺のことを待っていたのだろうか?

 それだったら悪いことをしてしまった。


「ロンベルトさん。こんなバカの話真面目に聞かないでいいんどす」


「おい! バカって言うなよバカって。俺たち、ロンベルトとはまだ初対面だろ? 今のところは、バカなのを隠せているからそんなこと言ったらバレちゃうじゃないか!」


 ロットはボロダインに言い聞かせた。

 それも大きな声で。


 俺に聞かれたら全て台無しだってこと、気づいてないのだろうか? 


「ロット……自爆してるわよ」


「あっロンベルト。今のは聞かなかったことに……」


「お前ってバカなんだな」


「クソ〜!! 時すでに遅かった!」


 ロットは頭を抱えてうずくまってしまった。

 バカだとバレてしまって気が抜けたのだろうか。

今の言葉のセンスといい、なんかバカっぽい。


 このままだと、ロットの居心地が悪くなってしまう。なんか話題を変えないと……。


「そういえば、Sランクパーティーってどこにいるんだ? もしかしてまだ来てないのかな……?」


「いいや。ロンベルトが来るちょっと前に来たぞ?」


 ロットは何事もなかったかのように立ち上がって言ってきた。


 Sランクパーティーが来た……?

 来たってことはもうここにいるんだよな? 


「じゃあ一体どこに? 俺、一度どんな人なのか話してみたいんだよね」


「おいおいおい……。さすがに友達の視点から言わせてもらうと、それはあんまりおすすめできないな……。」


 俺は急にロットから友達呼ばわりされて、びっくりしたがおすすてできないという言葉を聞いて疑問に思った。


「なんでだ?」


「あのなぁ……あいつらは表向きはめちゃくちゃ正義の味方だったり、優しかったりしてるけど根はただの戦闘狂なんだ」


 ロットはあんまり大声で言うと良くないのか、俺の耳元に手を当てて小声で話してきた。


「Sランクパーティーだとか、いいように言われてるけど力を持て余して迷宮を壊していってる野蛮人にすぎないんだよ」


 力を持て余すということは、スキルが強大すぎるということなのだろうか。それとも、それとも……。


「野蛮人どす」


 ボロダインが俺に追撃をかけるように、もう片方の耳に手を当てて言ってきた。


 野蛮人ってSランクパーティーの人たちを表す言葉としては正反対な気がするんだけど……。


「そんなやばい奴らなのか?」


「あぁ……あいつらは頭が狂ってる集団だ。ちなみにあいらはロンベルトのことを待つのが面倒くさくなって、先に迷宮の中に入っていったぞ」


 この迷宮は、SSSランク迷宮だぞ……?

 待つのが面倒くさくなったからって先に入って行くなんてどうにかしている。さっきはロットたちがSランクパーティーのことを野蛮人と表現していたのがあまり理解できなかったけど、この話を聞くと野蛮人だと思わざるおえない。


「バカなあなたが、あの人たちのことを頭が狂ってるなんて言うんじゃないわよ」


 サリィはロットの言ったことが気に食わなかったのか反論するように言ってきた。


 あれ? 小声で喋ってたのにそんな場所まで聞こえたのかな?

 

「いやでも、本当にあいつら頭狂ってるだろ。SSSランク迷宮に喜んで先に入っていったんだぞ?」


「まぁ、そうだけど……。なんかあなたが人のことをバカにすると、余計にバカに見えて仕方がないの」


「なんだよそれ……」


 ロットは、「嘘だろ……」と信じられないような目でサリィのことを見つめた。


 まぁ今のは確かに、少し言いすぎな気がするんだけどパーティーである人が言うのならそれほどロットはバカなんだろうな。


「おいらはロットのことを元から一番バカだと思っているから、別になんにも見え方は変わらないどすよ?」


「それもそれで、ダメな気がするんだけどなぁ〜」


 ロットは悲しそうに、肩から力が抜けため息をついた。


 サリィと、ボロダインがそれほどいうってことはロットは正真正銘のバカなんだな。


「あの……そろそろ、迷宮に入りませんか?」


 自己紹介のときだけしか口を開いていなかったティラがそう促してきた。


 ナイスフォロー、ティラさん。

 これで、ロットのメンタルは崩れ落ちずにすんだ。


「あっ、すまん。そうだったな。ありがとうサリィ」


「い、いえ……」


「よっしゃ行くぞ! ロンベルト。遅れるなよ?」


 そうして俺たちはようやく、ロットの威勢のいい掛け声と同時に迷宮の中に足を踏み入れた。

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