第16話 お金お金お金


 俺は、3人で寝ていたベットからキャシーとミラを起こさないように出た。  

 そして今日すべきこと、迷宮から持ち帰ったゴブリンキングらしき大量の魔石とおばけの魔石を売るため、いつも来ている売却店に来ていた。


 目の前では、おじちゃんが眉をひそめながら魔石をじっくりと観察している。俺はこれだけ大量に魔石があるので、ドラゴンの魔石換金額1000万リースは超えることはないけど500万リースほどいってほしいと思っていた。


 「全部で2000万リースだ」


 「2000万リース!?」


 2000万!?!?

 やばくない!? な、な、な、なんで!?


 俺は、予想外の予想外の言葉を言われたので困惑して理解するのが遅くなった。


 「何だお前さん。そんな驚いた顔して」


 「い、いやぁ〜。なんでそんな高いのかなぁ〜って……。だって総額だと、ドラゴンの魔石より2倍も高くないか?」


 いくらこんな量の魔石だとしても2倍っておかしいだろ。絶対なにかの間違いだよ。


 「まぁ、そうだな……。まず、このゴブリンキングの魔石。こりゃ冒険者のお前さんなら知ってると思うが、ゴブリンキングなんてめったに遭遇できるもんじゃねぇ。あと、ゴーストの魔石は本体と一緒に消えることが多いからこれもまた希少なんだ」


 「はへ〜……そうなんだ」


 やっぱりあの魔石は、キャシーが言っていた通りゴブリンキングの魔石で間違いないらしい。そしておばけの魔石は希少……。

 ふんふん。なるほどなるほど。そんなんだ。


 「……そうだ。今やお前さんは、女二人を連れてる高みのAランク冒険者だけど知識はまるっきりなかったんだな」


 「嫌味か……?」 

 

 まぁおじちゃんにこういったが、たしかに今や俺はAランク冒険者。

 ちゃんとそういった魔物のノウハウだったり、魔石の希少性だったりを理解しないといけないかもしれない。


 「はっはっはっ! そんなんじゃねぇよ。毎日薬草しか売ってこなかったやつが、こうもいっぱい魔石を持ってくるとこみ上げてくるもんがあるんだわ」


 おじちゃんは目を手でこすりながら言ってきた。

  

 こみ上げくるもん……? わからないなぁ。おじちゃんはなんでそんなに悲しそうにしてるんだ?

 はっ! なんか俺、知らないうちにやらかしたのかな?


 「えっと……ごめんなさい?」


 「はっ! なんで謝るんだ。よせよ」


 「俺はもう行くぞ?」


 そう言って立ち上がった。

 魔石の換金もすんだことだし。別に、少し空気が重くなり始めて居心地が悪くなったので逃げようとしたわけではない。


 さてさて、この大量のお金はどうやって消費しようかな? 


 などと考えながら扉を開けようとすると……。


「ちょっとまて。お前さん、まだ自分にあった服買ってないよな?」


「ん? 買って着てるじゃないか?」


 おじちゃんは何を言ってるんだ?

 ちゃんときれいな白Tを着ているじゃないか。あっ。もしかして、この前貸してくれた服を返せって遠回しに言ってるとかそういうの?


 ははぁ〜ん。おじちゃんのくせになかなかやるな。


 「違う違う。それは普段着だろ? 魔物と戦うときに着るやつだよ」


 そういうことね。戦うときに着るやつか……。

 戦うときに着るやつって、よく他の冒険者たちがきている鎧みたいなものなのだろうか?

 

 「ないなぁ……」


 そんなもの持っていない。

 これまでお金がなくて買っていなかったというのもあるが、正直どこで買えばいいのかわからないっていうのもある。


 だって、周りに防具店が多すぎるんだもん。せめて一つが2つにしてほしいよね。


 「お前さんにはずっとひいきにしてくれてもらってるし、いいところを紹介してやる」



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