第6話 捕食系ヒロイン



「は、離してくださいッ!!」


 俺はヤバそうな雰囲気の悲鳴を聞いて、慌てて袋をバックにしまう。

 そして、女の子の声がした方に走る! なんでそんな面倒くさそうなことをしているかって? そりゃ「生きる伝説最速計画」の中に、女の子を助けてハーレムを築くという項目があるからだ!


「いいじゃねぇか。お前、生きるためにシなきゃいけねぇんだろ? お前は生きることができて俺は気持ちよくなれる。これってWin-Winの関係じゃねぇのか?」


「そこまでだ!!」


 男は女の子を壁に押し付けて動けないようにしている。

 まったく! 女の子にこいつは一体ナニをしようとしているんだ! けしからん!!


「あぁん? 誰だてめぇ……。こいつの仲間か?」


「いや違う!」


「じゃあ引っ込んでろ。これは俺の獲物だ」


 男は女の子の顎を上げて言ってきた。

 なんなんだこいつ……。獲物って、女の子のことをそんなふうに言っちゃいけないだろうが!


「そうはいかない……。目の前で女の子が苦しがっているんだ。助けるに決まってるだろッ!」


「きゃ!」


「なんだ!?」


 俺はスキル闇を使って体を地面に潜り込ませ、一瞬にして女のことを救出した!

 まだこれを使ったことがあるのは数回なのに、こんなにうまくいくとは……。今後もっと技を改良して、強力にしていきたいな。


「大丈夫か?」


 俺は顔に覗き込んで聞いた。ちなみに女の子はお姫様だっこ。初めてしてみたんだけど、これって結構楽なんだな。


 そんなことを思っていたのだが女の子は俺の言葉を聞いて、


「きゃー!! 離れて変態!!」


 お腹を思い切り蹴り飛ばしてきた!


「ボゲボ!!」


 俺はその勢いで壁に吹き飛ばされた!


 こ、この女の子……。めちゃくちゃ力強くないか……? 体が壁にめり込んじゃってるよ……。闇の発動中でよかった。もし発動中じゃなかったら今頃俺の体は粉砕されていたかもしれない。


「あっ。すいません」


「い、いやいいさ……この程度の痛み……ぐはっ」


「大丈夫そうじゃなさそうですけど!?」


 うん。たしかに大丈夫じゃないと思うけど、女の子の前で弱いところはみせれない! 俺はなんかクラクラしてるけど、なんとか立ち上がった。


「おうおうおう! やっと追いついたぜ……。この獲物は俺のだ。もし、奪い取りたいとか言うんなら戦おうぜ? 俺はCランク冒険者だぞ?」


 男は自分のことを指さしながら自慢げに言ってきた。ははぁ〜ん……。そういうことか……。


「ふっふっふっ……。それは残念だな……」


「何がだ!!」


「俺はお前の3つ下のFランク冒険者だッ!」


 俺も決め顔をして言い放った!


「なんであなたが下なのに、そんなに威張れるんですか!!」


 女の子は俺に向かって言ってきた。

 あれ? 何か間違ってたのかな?  

 俺は、後ろを向いて聞く。

 

「えっ……これって俺も言わないといけない流れじゃなかったの?」


「危ない!」


「よそ見すんじゃねぇ!!」


 男は俺の頭めがけてナイフを振り下ろしてきた!


「――――!!」


「なっ!? どうなってやがる!!」


 俺はとっさにスキルを使って反応した。

 ナイフが俺の頭の中に入っている。だけど、痛くはない。逆に体の中にものを入れたことがないので、変な気分だ。


「俺に向かってナイフを振り下ろしてくるなんて殺すつもりじゃないよな?」


 俺は頭の中にめり込んだナイフを取り出しながら男に向かっていった。

 すると男は、


「ひ、ひぃ〜!! お助けぇ〜!!」


 情けない声を出しながら逃げていった。

 たしかに、いまのを見たらそんな感じの反応になるのはわかるんだけどちょっと傷つくよ!


 まぁけど、追い払うことができたんだ。

 良しとしよう。


「ふぅ〜」


「あ、あのっ! ありがとうございます」


 女の子は俺に向かって勢いよく、頭を下げてきた。

 あんな変なものを見て俺から逃げないんだ……。好感がもてるな!


「ん? このくらいいいってことさ」


「良かったらこのあとお礼をしたいので、お食事に行きませんか?」


 お食事? お食事ってご飯のことだよな……。

 まじか!! 俺、一度も女の子からご飯に誘われたことなかったから嬉しいな……。いや、これは誘われたんじゃなくてお礼なのか?


 まぁどっちでもいいか!

 誘われたんだし!


「あぁ、じゃあいこうかな。そういえば、俺はロンベルト。さっきも言ったと思うけど、しがないFランク冒険者。君は?」


「私はキャシー。冒険者……志願者よ!」



   *



「ぷはぁ〜!! やっぱり一番は酒だよな!!」


「はい! この時間のお酒は最高です!」


 俺とキャシーは鼻の下に白いひげを作りながら向き合った。片手には飲みかけの大きなグラス。

 俺たちがご飯にきたのは、冒険者御用達の女神の酒場。ここは男苦しいので、女の子と一緒に来るなんて思いもしなかった。


 ちなみにそろそろ、空きのグラスが10個目になりそうだ。


「ところで、キャシーはなんで冒険者志望なんだ? あんま言いたくないけど、冒険者なんて全然儲からないよ?」


「それはわかってます……。ですが! 私はいつか、冒険者をして運命の人に出会うため頑張るのです!」


 その後俺たちは、いろいろと冒険者について語り合った。そして店の中に人がいなくなり始めた頃。俺たちも明日があるのでお互いに宿屋に別れた。

 のだが、


「ん? キャシーもこの宿屋なの?」


 俺の後ろにずっとキャシーがいる。

 なんの言葉も発さずに、無言でついてきていたから少し怖いんだけど!!


「えぇ。私もよ。奇遇ね」


 そうなんだ。キャシーも同じ宿屋なんだ〜。  


「じゃあ」


 俺はそう言って、自分の部屋のまえにきたのだが……。


「あれ? ここってキャシーの部屋だっけ?」


 まだ後ろにキャシーがいた!

 おかしいな……。たしかにここは俺の部屋なんだとおもうんだけど……。酒に酔って、間違えてるのかな……?

 あぁ〜。わかんねぇ……というか、なんか体全体。が暑いな。早く水浴びして寝たいな……。


「いいえ。ここは、あなたの部屋よ。ロンベルト」


「だよね……。じゃあな。俺は寝るよ」


 俺はそう言って扉を閉めようとした。

 だが、


「私と一緒に寝ない?」


 キャシーがそう言って止めてきた。

 寝る……? 


「それはどういう……」


「ふふふ……わかるでしょ?」

 

 そう言い色気のある笑顔を見せながら、キャシーは俺の部屋の中に入ってきて扉に鍵をかけた。

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