備えるということ

僕は虫歯にならないよう、歯磨きをして備えている。

町の歯医者さん、白瀬先生はきっと喜んでくれるはずだ。


「先生、僕はご飯のあとと寝る前に歯を磨いているんだ」


はははと先生は笑う。


「素晴らしいことだね。予防を大切にしている僕にとっては嬉しいことだよ」


やはり先生は褒めてくれた。


「ただ、僕の予防歯科は徹底しすぎていてね。ごらん」


確かに待合室には誰もいない。

先生の笑顔はひきつっているが、僕たちは笑い合った。

しかし、静かにドアが開いたんだ。


入ってきたおじさんは苦しみながら奥歯を指差している。

先生にも予防できない患者さんが!

先生もアイ・ガッティ!とよく分からない声を上げている。

とにかく先生は患者さんを治療室へと招いた。


患者さんが治療室に入ったと思いきや、ドリルの音がけたたましく響く。

もんぜつするおじさんの声。

僕は手に汗をにぎった。


出てきた患者さんに、先生は2万4千円という生々しい金額の請求書をつきつけている。


次の患者は僕?!

先生が手招きしている!


僕は危険に備えて帰ることにした。


〜危険の背後には危険を察知させる情報が潜んでいるため、それを見逃してはならない〜

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