領地開拓編

第33話 初期段階の大筋の流れ

-side エリク-




「お、早かったな」

「はい。兄上。グリフォンとコカトリスを狩ってきました。なかなか手に入らない肉が沢山手に入ったんですよ。美味しかったので、ぜひ食べてほしいです」

「グリフォン!?コカトリス!?それも大量に。やはり、この島はそんなに危険なのか」

「ああ。大丈夫ですよ。全て倒し終わりましたんで」

「そ、そうか。エリク。強くなったんだな。それはそれとして、こっちも、インフラの整備計画は大分進んだと思う」



 グリフォン、コカトリスは一般的にいえば、1匹でもAランク並みの脅威度である。

 複数いれば、難易度はS。群れでは、計測不可--冒険者ギルドの依頼に張り出された事はない。

 つまり、エリクは、強くなったというには、強くなりすぎてしまったようだ、と側にいたセバスチャンは冷や汗をかいて気づいたが、ほんわかしているジルの手前、口出す事は出来なかった。



「ほうほう。まずは、川に港や橋を建設したいと」

「そうだ。川には魔物がいないだろう?マスク王国の王都や公爵領でも、物流などで使われるのは、川だ」

「へーー。知らなかった」



 エリクはスキルで、[検索]した。すると、本当だという答えが返ってきたので、信じる事にしたのだった。

 電子機器などないこの世界では、通常、この手のことは、かなりの書物を読まなければ、真偽が分からないが、それが一瞬で分かってしまうスキルはやはり破格である。



「まずは、川の簡易インフラの設置で様子を見て、それが出来てから、交通整備に向いている者だけ、街道整備を任せようと思う。力仕事が得意でないけれど、お金には困っているという参加者も多いだろうからな」

「そうですね。とりあえず、川のインフラ整備参加者全員に希望職種を書かせて……。川に簡易港が設置されるまでに、全員の書類を読んで、仕事を割り振れるのが理想でしょうか」

「ああ、理想で言えば、そうだな。川のインフラ整備参加者……この調子だとかなり多そうだから、出来るかは分からないが」

「人手足りませんもんねえ。まずは、文官から募集しましょうか。以前、公爵領の役所で働いていた方もいるんですよね」

「ああ。沢山いると思うぞ。セバス。お前の顔見知りで、優秀そうな奴とかいないか?」

「何人かは心当たりがございます。その者たちに声をかけてみましょう」

「そこら辺は全面的に協力を頼む。できれば、10-20人くらいは欲しいかもしれない」

「かしこまりました。知り合い伝手で、集めてみましょう。時間は多少かかるでしょうが、それが一番確実な方法です」

「そうだな。優秀な者はそう簡単には集まらないから、時間をかけて集めるのが良い」

「では、そちらの事はセバスに任せて……銅鉱山の方は、無事に制圧したので、あとは、お金を加工する場所を鉱山近くに建設したいですね」

「分かった。それに関しても、詳しい者を手配する。この前、会議にきた者たちだ」

「ありがとうございます」

「では、大まかなところは、そんな感じかな。まずは、銅貨の製造、その間に、事務仕事が出来る者を集める。次に、川のインフラ出来る者を集めて、簡易港を設置。最後に、適材適所に人材を振り分けていくために、職業希望を聞いていくといったところか」

「そうですね。大まかな流れはそんな感じでしょう」

「よしっ!そうと決まれば早速、始めるか!」

「あ、待ってください。ジル兄。その前にグリフォンの唐揚げと、コカトリスの卵かけご飯食べましょう。美味しいですから」

「お、おう。分かった、ありがたくいただく。それにしても、エリク。お前、相変わらずマイペースだな。変わってなくて安心した」

「あはは!兄上も、聡明な感じは、お変わりないですね。正直、父上だけだと、不安でしたが、兄上がいたから、領地を任せて出て行けたというのはあります」

「正直すぎるぞ。まあ、たしかに、お前がいない間の公爵家を回していたのは、俺とセバスだったから、間違いではないが。父上には、休んでもらうのが一番だ」

「ですね。美味しいものを沢山食べさせてあげましょう」

「それが良い」



 若干、2人の腹黒さが、見え隠れした会話だったが、これも貴族ならば、必要な事である。ともかく、こうして、領地初期段階の大筋の流れは決まったのだった。



--------------------------------------

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る