親父の再婚相手が俺の幼馴染だった

知足湧生

プロローグ 義母は誘惑する。「私と近親相姦に手を出してみませんか?」


「んふふっ。恥ずかしがらなくても良いんですよ〜?」

「……」


 俺は自分の家にシャワー室の前で、そうほざく相手の女の子を1秒だけ睨んだ。

 相手は俺よりも1つ年上のただの女の子だ──と言いたいところだが残念ながらも現実とは大抵がつまらないもので、俺たちの関係性もに変わってしまった。


「ほらほら〜本当は興奮しているんでしょう、颯流せしる?」

「戯け、お前の身体なんて幼稚園の頃から散々見て来たんだ。今更そんな露出で俺の理性のタガが外れると思ってるのなら自惚れるのも大概にした方がいいぞ月愛るな?」


 そろそろ就寝時間が近づいたため洗面台の前で歯を磨いてる真っ最中の俺に、女がバスタオル1枚の状態で俺の顔を覗き込もうとするが、無視して歯を磨け続けた。


「自惚れてませんよ? 私が男の情欲を掻き立てるようなスタイルを維持してるのは日々の努力の賜物で私が1番わかってますし〜? そう言いながらも颯流の視線が鏡越しにちょくちょく谷間へと向かってるの……気付いてないとでも思いましたぁ?」

「ぐっ」


 俺の斜め後ろに立っていた女に耳元へと艶やかな息遣いを吹き付けるように話しかけて来たせいで、脊髄を突き上げる快感に背中がブルっと震えてしまった。

 さっさと歯を磨き終えてうがいをすると生意気な女へとすぐさま反論した。


「勘違いするな、これは男の生理的な現象であって別に俺は興奮してる訳じゃない」

「ふ〜ん。本当ですか〜?」

「それにここがお前の家にもなったことは渋々納得したから……いや本当はしたくないんだが。とにかくっ! 仮に血縁関係だとしても思春期の家族同士でこれはアウトだろっ! もうこの際は仕方ないから俺も妥協するが、お前もそうするように──」

「へ〜やっぱり颯流は私に欲情してくれるんですね? んふふっ、嬉しいですね〜」

「誰もそんなこと言ってないだろ」

「でも大丈夫ですよ颯流、タオルの下はちゃんと下着を着けてますので」

「はっ、だと思ったよ。どうせ下着だろう……って──え?」


 そう言うとがばりをバスタオルの前を勢い良く開けた月愛。その下には確かに下着を着ていたが、これが物凄い大人っぽいやつで緩やかに顔の表面の温度が上昇して行くのを止められない。


 何でこいつは胸の谷間を露出させるような穴あきのランジェリーを着てやがるんだよ……おまけに家で2人きりという状況なせいで否が応でも、目の前の女の子に触れてみたいという某脳を刺激させられてしまう。


 そんな俺を見て目を細めた女が調子に乗りながら更に畳み掛けてきた。


「ほらどうですか? の下着ですよ〜! 結構似合ってるでしょう? 颯流ったら反応が可愛くて、今すぐに取って食べちゃいたくなるくらいですから〜♪」

「くっ……不本意ながらも似合ってるからそれは認めてやるが、母親になった以上は自分のを揶揄うんじゃねえよ」


 そう、誠に不本意ながらも俺たちは家族──それも義弟と義妹ではなくの関係になってしまい、今日から2人きりでの同居生活が始まったのだ。


 もう一度述べよう……俺と目の前の女のは良くラノベに出てくるような『親の再婚で出来た義妹と俺』じゃなくて、正真正銘『俺の親父の妻となった母親とその息子である俺』という関係なのだ。


「それにほら。このスタイル、男子にとって理想的らしいですよ〜ほらほらぁ?」

「くぁっ…………チッ」

「あんまり我慢しちゃ身体に悪いですよ颯流? ほらほら意地張ってないで、今度はゆっくり……ね〜っとりとぉ、舐め回すように見て下さいよ〜んふふっ」

「っ……黙れ痴女がっ」


 クッソ……これが万乳引力と言うやつだろうか。月愛のやつが小刻みに身体を揺らし始めてるからそれに釣られて2つのメロンが揺れているんだが……目が離せん。


「アハっ。やっとお認めになるんですね。なら今度は直接手で──あらら〜」


 倫理的な身の危険を感じたのでそのまま後ろへと軽く飛んで距離を取ることで、月愛の魔の手から逃れた……はあ、はあ。コンニャロ、正気の沙汰じゃねえぞオイ!?


「残念……ちょっとだけイケると思いましたのに」

「正気かお前は!? だからお前は俺の親父と結婚してあいつの妻になったんだろうがっ! だったら母親として息子を暗闇の道へと引き摺り込むくらいなら、ちゃんと真面な人間へと成長できるように導いたらどうなんだよっ!?」


 すると目の前の気狂いが到底母親らしくないことをぺちゃくちゃと喋り始めた。


「母親が息子の筆下ろしをするのは親としての立派な性教育ですよ? 歴史の授業では今の時代の子供の教育として相応しくないからと省かれてますけどねっ。10歳になるとマラ皮を剥いてもらい、13歳になれば白い布を持ってママが1人でいる時間帯にやってくるのが本来の風習だったんですけど、その頃の私はまだ颯流のことを大好きになってたワケじゃないので、タイミングを逃してしまって非常に残念ですね〜」

「アホか勝手に歴史を捏造するなよ。時は令和だ、いつまで江戸時代を生きてるつもりでいるんだよお前は! それにそれは活春宮の初まりってやつで、男女の交会の手ほどきを受けるやつだろ! しかも大抵の場合その役割は母親の姉妹か近所の未亡人が相場だったはず──」

「へえ〜?」

「ぐっ」


 しまった……! クソッタレ、何で俺の口はベラベラと余計な情報を喋り始めたんだ……これは何気ないネットサーフィンで好奇心の赴くままに色々調べていたときに偶然発見した記事のものだが……これじゃ興味津津だと言ってるようなものだろ!?


「んふふっ……ふふふふふっ。そうでしたか〜颯流は思ってたよりも性に対して好奇心旺盛なんですね〜。これはもう颯流が私で童貞を卒業する日が近いかもですね?」

「いやどう考えてもダメだろ、お前は俺の親父の良き妻であるべきだ」

「それはただの理想像でしょう? それに、あなたのパパが本気でそんなことを気にするとでも思ってますか?」

「っ……確かに気にしなさそうだな」

「そうでしょう? だから誰にも迷惑がかからないんですし、私はいつでも歓迎しますよ〜」

「いや俺の親父が正真正銘のヤリチンなのはこの際横に置いといてっ、道徳的な観点でもやっぱり駄目だろこんなの。……それに、」


 俺は目の前の女を威嚇するようにして彼女の瞳の奥を睨んで見下すように言った。




「──お前に俺が犯せるとでも?」




 仮にも俺はこいつの息子になったんだからな……親と言っても親もまた人間だから間違うこともあるし愚かな選択肢に手を出すこともある。だから自分の親を手助けする形で自分の家族を正しい方向へと導くのは、子供である俺であっても良いと俺は考えている。

 そもそも俺が正気を保っている間はいかに月愛と言えども、俺が木下きのしたさんのことを思っている限りは貞操の危機に屈することは絶対にあり得ないのだからな。

 するとすぐそこに居る下着姿の女の子が可笑しそうに笑い始めた。


「……んふふっ……ふふふふふっ。なら逆に聞きますけど、私が颯流とセックスに至るのが不可能だと……本気で思ってるんですか〜?」

「……っ……」

「私が実力の全てを解放したらそんな些細なハードルなんて今すぐにでも達成出来るんだと、1番よく知ってるのは颯流でしょう?」

「……いや幾らお前の実力が凄くても、こればかりは譲るつもりは毛頭無い」


 少し間が空いてしまったのが情けなかったが手が震えてしまったのだ。月愛……外見では愛想が良く可愛らしいから時々騙されるんだが俺は今までの彼女の実績を忘れたことはない。こいつは猫の皮を被った一種の化け物である……ただの可愛い気のある高校生だと侮っていると手を火傷するぞ、それを良く思い出せ俺。


「んふふっ。だからそうだと颯流に勝ち目が無い無理ゲーとなるので、これから共に暮らしていく中で『私から颯流のオチンチンに触る』のはハンデとして辞めて差し上げましょう。そちらの方が、颯流の勝機が絶望的だとしてもまだ可能性はあるでしょう?」

「はっ、どこまでも俺を見下しやがって。例えそれが那由多の彼方だとしても俺には十分過ぎる」

「ふふふっ……やっぱり颯流はそうなんですからカッコ良くて益々好きになっちゃうんですよ……。それと前半のコメントの返事に、それは私が天才として産まれてきた弊害かも知れませんね……でも颯流に対しては悪気が無いのでこれから一緒に暮らしていく身として、これからも少し不愉快にさせるかも知れませんので予め謝罪しておきます、ごめんなさいね」


 生意気でムカつく奴だが彼女も彼女で努力あっての実力だということは、今までの人生で嫌と思わされて来たので本音を言うともう不快感は感じなくなったんだがな。


「だから私から颯流へ持ちかけるアプローチはあくまでも提案から『陰部に触れないスキンシップ』までに、まけて差しあげますよ♪」

「……そうかよ」

「ええ、だから今日からゲームを始めましょう? 内容は颯流が初体験を迎えられたら颯流の勝ち、逆に颯流が自発的に私に童貞を捧げてくれたら私の勝ちですね♪」

「はっ、良いだろう。母親の誘惑なんて余裕であしらってやるよ」

「ふふふっ、もう今日からの日々が今から楽しみになりましたよ〜。だから颯流、」


 月愛がそう言うとそれぞれの手を自分の艶やかな唇とピーチ尻に当てながら官能的なポーズを取り、思いっきり扇情的な表情と声を出しながら選手宣誓して来た。




「私と不道徳な関係──近親相姦きんしんそうかんに手を出してみませんか?」




 やっぱりこいつも様々な研究してるだけあって自分をどう見せれば男のツボが押さえられるのかを熟知してやがるな。やがて下着姿なまま体をくねくねし始めた。


「アハっ。近親相姦……なんて甘美な響きなんでしょう〜? 言ってる側からお腹の奥が疼いちゃいます……っ! はあ〜背徳感溢れる行為を想像してみただけでゾクゾクしちゃいますよ〜! それにこれは毎日呟くことで潜在意識に刻み込んであげれば颯流も手を出す気になるでしょうね〜」

「全然思わねえし手は出さねえよ、前提条件として俺には木下さんが居るんだ。俺は必ず彼女と結ばれて幸せな学校生活を送るんだ。だからお前はさっさと次の恋を探すんだな」

「そうですか。まあゲーム攻略の初日にラスボスが倒せたら苦労はしませんから、今日から少しず〜つ外堀を埋めていくことにしますよ」

「はっ、包囲網が敷かれても穴を掘ることで下から抜け出すまでだな」

「決してそうはさせませんよ。だから楽しみに待ってて下さいね? 颯流〜」


 くっ、こいつのことだ……実力の全てを遠慮なく使うとそんなことは容易いだろうな……ありありと想像出来る未来に、俺は背筋が寒くなるのを誤魔化せなかった。


 だが月愛から妥協案を引き出してゲームを受けた以上は負けられん。

 俺は誓うぞ、これは俺の誇りをかけた戦いだからな。

 俺は必ず好きな人と初体験を済ませてやるんだ。

 月愛の誘惑に俺が屈することは絶対に無い。


 ……だが俺たちの関係はまだ同級生には知られていない。

 俺と彼女以外に、俺たちの本当の関係を知ってるのは俺の親父だけだからだ。


 俺こと、冨永とみなが颯流と──

 彼女こと、冨永とみなが月愛が──


 ──ほんの2週間前までは、幼馴染の間柄だったということを。




【──後書き──】

 読者の皆様へ、ここまでプロローグを読んで下さり誠に有難う御座います!


 新しくヤンデレ✖️ラブコメものを書いてみたいと思い至ったので早速挑戦することにしました! 読者の皆様が隙間時間に読んで頂き、楽しんで頂ければ幸いです。

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