愛を語るなら闘技場で。

みやこのじょう

第1章 騒乱の始まり

1話・婚約者の座を賭けて

「フィーリア嬢の婚約者の座を賭けて勝負だ!」

「いいでしょう。受けて立ちますローガン殿」


 王宮の広間に響き渡る声に周囲に居合わせた者たちが振り返る。着飾った令嬢たちは扇で口元を隠し、会場の中央で睨み合う二人の青年を交互に見遣った。


 一人はブリムンド王国の第二王子ラシオス。

 銀の髪に黄金の瞳を持つ細身の青年である。


 もう一人はアイデルベルド王国王太子ローガン。

 燃えるような赤い髪の覇気溢れる青年である。


 二人の間に立つのはラシオスの婚約者で侯爵家令嬢のフィーリア。金の髪に赤い瞳、白い肌が印象的な可憐な令嬢は、取り乱すことなく冷静に事の成り行きを見守っている。


 ブリムンド王国第一王子ルキウスと婚約者シャーロットの結婚式を数日後に控え、この王宮には周辺諸国の王族や貴族が多数招かれている。連日開かれている宴の最中に起きた騒動に誰も彼もが関心を寄せていた。


 即位前の社会勉強のため、アイデルベルド王国からブリムンド王国の貴族学院に留学中のローガンがフィーリアに一目惚れをした。そこから猛アタックが始まったのだが、一つ問題があった。フィーリアには婚約者がいたのである。


 王族の婚姻に他国が介入すれば外交問題に関わり、最悪両国の友好関係にヒビが入ってしまう。

 しかし、そうはならなかった。


「ならば剣で雌雄を決するが良い!」

「愛とは己の力で勝ち取るものじゃ!」


 即座に賛同を表明したのは二人の王子の父親である国王たち。通常ならば有り得ぬ話だが、王子同士の決闘話はトントン拍子で決定した。


 現場にいた貴族たちは王族のスキャンダルに既に色めき立っている。連日の宴で話題が尽き始めた矢先に起きた事件。要は余興代わりである。


「この決闘、我がブリムンド王国が取り仕切る!日時は三日後の正午、場所は王都郊外の闘技場!審判役は公平を期すため第三国の者に依頼する。以上ッ!」


 国王の宣言に会場中が沸いた。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る