第38話恋愛IQ0


俺がそう言うと、紅葉はポカンと口を開いて、目を何度かパチパチさせた。


「……どうでもいいって……何それ……嘘だよね?」


わなわなと声を震わせびっくりしている紅葉。


まさか俺がそんな事口走るとは夢にも思ってなかったんだろう。


「嘘じゃねーよ。もういいんだ。……別にその、紅葉が思っているような変な事は俺してねーけどさ、分かったんだよ。俺と西条じゃ釣り合わないって」


「――ッ! そんな事……だって、みどりちゃんだってお兄の事――」


紅葉は首をブンブン横に振って否定する。


が、俺は遮って、


「いーんだよ、もう」


「……ぅ」


ちょっと投げやり気味に言った。


が、それが紅葉にとっては俺が怒っているように聞こえてしまったのか、ベッドの上で三角座りのまま、顔を膝に埋めてシュンとしてしまった。


「あ、わりぃ……」


咄嗟に謝ったけど、紅葉はポツリと「知らない」と言ったきり、俺が何を言っても黙り込んでしまった。



☆★☆


20分経過。


未だに、紅葉は俺のベッドの上で三角座りのままピクリとも動こうとしない。


(多分、さっき俺が言った事を取り下げるのを待ってるんだろうけど……)


俺的には変える気はない。


つーか、変えられない。


成り行きで、口に出してしまったが、それで俺の中で完全にストンと腑に落ちてしまった。


西条は俺とは天地がひっくりかえっても釣り合わない。


その事に気がつくまでどれぐらい時間がかかってんだって話だけどな……。


「はぁ……」


自分の不甲斐なさにため息をついたと同時。


”ピロン”


ポケットに突っ込んでいたスマホからまた着信音がした。


反射的に取り出して、見るとまた皇からRINEが来ていた。


『先輩! 既読無視はダメですよ! 弁当は……そうですね〜分かりました! 先輩がそういうなら明日は作りません。了解です(ペコリ)』


(……テ、テンションたけーな。女子って皆こんなもんなんか? いや、皇が特別テンションが高いだけか……。ん、でも、紅葉だってクラスの男子にはこんな感じなんか?)


経験値0のビギナーな俺にはいまいちピンとこん……。


(と、とにかく返事を返そう……既読無視はさすがにまずいよな……)


そう感じた俺は、慌てて


『今見た』


送信ボタンをポチッと押そうとしたが、その手前で


「待ってお兄、押しちゃダメ」


「紅葉って……お、お前、いつの間に」


急に頭上で紅葉の声がして、びっくりして顔を上げると、紅葉がじっと真顔でスマホ画面を見ていた。


「何だよ……何か文句あんのかよ。何度も言ってるけどな、別に皇とは本当に何もないからな」


また、難癖付けてくるのかと思ったが、紅葉はちょと心配気味に、(つーかドン引きしてる?)


「……お兄、もしかしてまじで毎回こんな淡白な調子でやり取りする気じゃないよね?」


「……え?」

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