第11話【あまりにもあまりな内心】

 俺は俺が行っている学校を半ば程度にもディスりたくはないが慶墺至塾けいおうしじゅくは〝ムラ〟みたいなところがある。〝幼稚舎ようちしゃ〟と呼ばれる小学校から大学まで。いったんココに住んでしまうと親兄弟姉妹親戚、どこかで誰かと繋がっていたりする。


 つまりはこういう事だ。幼稚舎の方で何かしら俺の評判が高まるような事があれば、回り回って高校の方でもそうした話しは知られるようになり、俺の評判は高まる。


 ヤッパ男は優しさでしょ。

 自己の鍛錬しか考えてない自己中さがスポーツ野郎からは抜けない以上、既に奴らのアドバンテージは無いも同じよ。まあウチの候補にもそのケがあるけどな。


 ん?

 振り向けば雨穂あめほちゃんが歩くのをやめてしまっていた。その候補の奴がしゃがみこみ何事か話しかけている。明らかに雨穂ちゃんは後ずさりの体勢をとっていた。

「敵はどのような攻撃をかけてくるのか?」

 んなことを言っている! 怖がられてるの分からないっ⁉

「ちょっと方眼ほうがんちゃん! 学校に着く前になにしてくれてるの?」

「着いてからでは遅いから今確認する必要があるだけだ」

 『学校行かない』なんて言い出されたら困るんだけど!

「なんの確認?」

「敵の戦術を知らねば作戦を立案できないだろう?」

 そもそも作戦立てるトコまでお勉強してないんじゃないの?

「いや、立てなくていいから! 作戦!」

「行き当たりばったりなど論外だな」

「俺がもう立ててるからね」

「貴様が?……」

 なに、その目。

「立ててるから。対イジメのね」

「大丈夫なのか?」

「大丈夫に決まってんでしょ!」

 候補はいかにも〝疑いのまなこ〟といった目で見てきた。

「そんな事よりさ、歩かないと遅刻になるんだけど!」

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