ココ俺の家なんですが・・・

1993年4月、俺は社会人として第一歩を歩みだしたんだ。

俺が就職したのはペットフードを作ってるメーカーで、そこで営業職として仕事に就く。


会社の先輩達が四月三週目の週末、新入社員の歓迎会を開いてくれた。

会場の居酒屋は割と自宅の近くで、歩いて15分くらいの場所だった。

俺の勤務場所はそんなに大きな職場では無く、20人に満たない様なひっそりとした職場だ。

そんな職場だが、クセの強い人ばかりが集まってる。

みんな自分の信念みたいなモノをもって仕事に当たっているので、酒の席でも仕事の話しでもりあがってる。


さすがに午前零時をまわったあたりでお開きとなり、みんなそれぞれに散っていった。


俺も4月の肌寒い風に吹かれながら自宅まで歩いた。

自宅の玄関に入ろうとしたら黒い何かが玄関を塞いでいた。

「こんなトコロに何を置いていったんだ?邪魔だな~」

なんて思っていたら・・・

「気持ち悪い・・・ ウェッ。」

ってそれは動き出した。

えッ? コレ黒い服着た女の人?

''結構酒臭かった"

よりによって我が家の玄関で酒に酔って吐いてる?


こういう場合どうしたら良いのだろうか?

「あの・・・ そこは私の家なんですが・・・ 中に入れ無いので、どいてもらっていいですか?」

俺は冷たく突き放す様に言ってしまった。


「えッ? 女の子が辛い思いをしているのに貴方は見ないフリをするんですか?」


"コイツ自分に都合のいい事言いやがって!"

と思いつつも今度は宥める様に言ってみる。


「気持ち悪いんですか?すぐ目の前病院だからそこで診てもらいます?それともタクシーよびますか?」


彼女は焦点が合ってないような目で俺を見つめながら

「病院だけは勘弁してください。私、そこで看護師してるんです。」

なんて言ってきた。


「看護師してるなら仮眠室とか借りればいいじゃないですか?」


「そんな事したら私の印象悪くなるじゃないですか!4月に入ったばかりなんですから・・・     ココ貴方の家なんですか?今晩だけでいいので泊めてもらえませんか?」


「なんで見ず知らずの酔っぱらいを家に留めなきゃならないんですか?アナタの家に帰ってください。」


「私の家、電車で一時間位の場所なんです。もう、終電行ってしまったし・・・ お願いします。」

彼女は「寒〜い」なんて言いながらしくしく泣き出してしまった。


「ちょっとやめてくださいよ。ご近所が見ていたら何言われるか・・・ もう〜 分かりましたよ。」


俺は諦めて彼女を支えながら玄関に入った。




突然、紗名が怒った素振りで話しだした。

「パパって鬼畜ダネ! 酒に酔って動けない女の子を家に連れ込んで手籠めにするなんて最低!」


俺は娘に反論の言葉をかけた。

「あの? なんでそういう発想になるんだ?

俺から質問するけどこの場合どうする事が正解だったんだ? それにこの子に俺は何もしていないぞ。そんなに信じられなければこの話はこれで終わりだ。」


紗名は俺の目をジッと見て

「分かった!信じるよ。それでどうなったの?」





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