第28話『新たな作戦』


「上手くやったようだな、ヘリオス」


「はい。作戦通り、奴らの陣地にある食料や水場に会長から貰ったコレをばら蒔いてきましたよっ!」


 そうしてヘリオスが取り出したのは、俺がこの世界で作った強力下剤だ。

 このツマノス国では鉱山から金も含めた様々な鉱石が取れるのだが、その過程で捨てられるはずの不要物を俺が拝借し、作り上げた。


「これで奴らは俺たちではなく、トイレと戦う事になるだろう。これぞ誰も傷つけないパーフェクツな戦争という物だ」


「さすがです、会長っ」


 キラキラとした眼差しを送ってくるヘリオス。

 よせやい、なんだか照れるじゃないか。


「そして――ユーリ。そっちは全然全くこれっぽっちも作戦通りじゃないとはいえ、戦果は上々だな。まさかこれほどの同志が集まるとは……」


「儂にとっても想定外じゃったぜ。つっても、これは儂の功績じゃなくてサクラちゃんの功績じゃがな。あの子の慈悲深すぎる心が敵の心も打ったんじゃぜ」


「サクラちゃんは天使だからな。あの優しさに包まれれば非ロリコンもロリコンにならざるを得まい。……とはいえ、やはり素養のない奴はロリコンになれなかったようだがな。それでもサクラちゃんの力になりたいという奴らに関しては現在、講習を受けて貰っている」


 ユーリとサクラちゃんは多くの戦力をこちらに寝返らせた。

 その数は時間が経過するごとに増えており、その数――ざっと三千人。

 元々、我々ロリコニアの人口はたったの二百人だった。それを考えると、単純計算で戦力は16倍という所か。


「講習……じゃと?」


「あぁ、信頼できる同志に講師を任せ、どうしてもサクラちゃんの力になりたいと言っている者達にロリコン化講習を受けて貰っている。あの手この手を尽くし、彼らにはロリコンになってもらう予定だ。そうしなければ安心して同志と呼べないからな」


「さっすが会長! このロリコニアにはロリとロリコン以外は不要。そういう事ですね?」


「入国や滞在に関してはロリコンでなくとも、ロリが嫌いでなければ許可してもいいと思うけどな。だが、俺達と同じくロリの為に戦う兵士となれば話は別だ。ロリを守るのはロリコン紳士でなくてはならない。彼らには立派なロリコン紳士になってもらうつもりだ」


「さすがは会長ですっ!!」


「……頭が痛いんじゃぜ……」


 賞賛を浴びせてくれるヘリオスと、なぜか俺の話を聞けば聞くほど頭を抱えるユーリ。大丈夫かな?


 しかし……今回の作戦は上手くいったが、まだ楽観視する事は出来ない。

 先行していたビッチ魔法使いレイラとビッチ王女クルゼリアなんて、ただの前座に過ぎない。

 その背後にはクソジジイな王様――ツマノス・デスデリア王が指揮する隊が居るのだから。


「サクラちゃんの意向を完全に聞き入れられるのはここまでだな……。あの損害を見て向こうが退かないようならこっちもそれなりに本気で相手するしかない」



 なにやらユーリが画策していたようだが、サクラちゃんの意向は変わらず誰も死なせず、できれば誰も傷つく事すらない事だ。そこには味方だけでなく、敵も含まれる。


「そうは言ってもアコンよ……おそらくもうあのような搦手からめては通じんぞ。ツマノス王は愚かではあるが、馬鹿ではない。そもそも、あの両陣営を先導させたのは二人に経験を積ませるためじゃろうしな。もっとも、ここまでの被害を想定していたとは思えぬが」


「あぁ、分かってる。なんか若いころは結構活躍してたんだろう?」


「うむ」


「だけど……あのクソビッチ王女とクソビッチ魔法使いを除いた今、向こうさん指揮を取れるほどの逸材はもう居ないよな?」


「む? まぁ……そうじゃの。ヘリオスも儂もこちら側に付いておるし、少なくとも指揮に長けた者はもう居るまい」


 なるほどなるほど。


「よし、方針は決まった」


「またろくでもない事のような気がするんじゃが……」


「失敬な。今回は異世界の知恵袋だっての。こう見えて俺は三国志とか読み込んでたんだぞ? ユーリに指示した火刑や兵糧攻めもそれのアレンジだ。人数が少ない以上、通じないと言われようが搦手に走るしかないからな。

 ――いやまぁ、こっちのロリコン同志達が『THE・ロリコン』や精霊の関係上、かなーり強いからもしかしたら三国無双みたく力押しでもなんとかなるかもしれないけど……」


「「? ? ?」」


 俺の言っていることが分からず、首をかしげるユーリとヘリオス……ってそりゃそうだ。いきなり三国志だの三国無双だの言われても分からないよな。失敗失敗。


 そんな二人に、俺は作戦の概要を話すのだった――


  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る