第17話 勘違い?

「はぁ…」

「永遠、どうしたの?」

永遠は、今日は部活に出ることにした。沙希と話したかったし、体を動かせば気分転換になると思ったからだ。

「ちょっと調子に乗っちゃった。」

お昼を断られてしまったことに思ったよりショックを受けている事に気づいた。

「永遠、まあまあ、早く着替えて体動かそう。話も聞くからさ。」

「沙希、ありがと」

着替えてから軽く準備運動をした後、軽く沙希とラリーを始めた。

「それでっ!なにがあったの?」

沙希が地面にボールを数回バウンドさせてから軽くサーブを打つ。

「やっ!ええと、実行委員は一緒にやってくれるって」

永遠と沙希はボールを打ち返ししながら話を進める。

「よかったじゃん!」

「うん!」

「でも、実行委員やるなんてあいつも!ちょっとはやるじゃん」

「そうだよ、ね!でも、面倒だーって言ってたけど」

「まあ、体育祭と文化祭の実行委員って大変だし!」

「でも!森川くんって逃げるのは嫌いみたい。多分、ちゃんとやってくれると思う」

「不良なのに!」

「まあね!」

「でも、それじゃ何で落ち込んでるの?」

「お昼一緒にって誘ったら断られたの!」

「おっと、そうなの?」

「うん!別にいいよって」

「それって!いいって意味じゃないの?」

「え?いい?」

永遠はボールを追いかけるのをやめてしまい、ボールがコートの外に転がる。

「一緒にお昼食べるって意味にも聞こえたからさ」

「えーとー。うーん。」

「永遠、変な顔になってるよ?!」

確かに別にいいって一緒でも別にいいって意味にもとれる。それとも嫌だから別にいいなのか。

「どうなのかな…」

「その後のあいつの反応は?」

「あ?ああ…みたいな」

「多分、いいよって言ったつもりだったのが反対の意味で伝わって困ったんじゃないの?」

「えぇぇぇ…」

「あいつ、日本語力ないよね」

「沙希、どうしよう」

「ま、気になるならもう一度誘ったら?」

「そ、そうだよね!私、ちょっと行ってくる」

「へ?あっ!ちょっと永遠!?」

気がつけば荷物を持って全力で走っていた。

沙希が何か言っていたが聞こえなかった。


「今日も収穫なしか」

今日は、時間があったので秋次は校内をぶらつき怪しい奴が居ないか様子を探っていた。盗撮写真の中には校内で撮られているものもあったので盗撮犯がいる可能性があった。生徒の中にいると思うとなかなか面倒だ。

「帰るか…あ?」

今日に全力で走っていく結城が見えた。気配を消しながら教室の様子を見る。

「はぁはぁ…いない」

なにかあったのだろうか。また面倒なことに巻き込まれていなければいいのだが…。

「そ、そうだよね。放課後だもん。森川くん帰っちゃったよね。はー、なにやってんだろう…私」

秋次は自分の名前が聞こえたので教室に入るとジャージ姿の結城がいた。

「へ?」

「あ?」

結城が振り返りると目があった。

「あ、え、あの」

「お前、大丈夫か?」

結城は、全力で走ってきたのだろう、顔が赤い。また、何かあったのだろうか。

「う、うん。あの!探してた」

「ああ。みたいだな」

「森川くん、部活?」

「いや、ちょっとな」

盗撮犯探してましたなんて言えるはずもない。また面倒な事にならなきゃいいが…。

「そう、なんだ。」

「んで、何の用?」

「そう!お昼の件なんだけど」

「実行委員か?」

「違う。お昼一緒にどうかな?って」

「は?」

「あの、別にいいよ、の意味が分からなくて」

「お前、それ聞くために来たのかよ?」

わざわざ今頃、居るか居ないかもわからないのに走って探して面倒なことする。

「バカだって思ってるでしょ。でも、森川くんがもし、いいよって言ってたのに私が…」

「ああ。バカだな。まったく面倒だな」

なんだってこいつは、こんなにも…秋次にもよくわからない感情だ。だけど、このままにはできないと感じた。

「ごめん、だって」

「明日、約束な。いいか?」

「いいの?」

「ああ。」

「うん、約束だよ。えへへ」

どうやらやっと笑ってくれたようだ。明日もまた何か起きそうで少し面倒だった。

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