第39話 ノワルのイメージと少女の笑顔




「騎士様・・・私たちにもごはんをいただけるんですか?」


「ああ、もちろんだとも好きなだけ食べるといい」


「温かいごはん・・・はじめて食べます・・・」


「「いただきます」」


 ・・・はじめてか、ならお腹いっぱい食べて温かい布団で寝てもらおう、情報は明日聞けばいい。


「もぐもぐ、ぐすっ・・・おいしい・・・おいしいよぉ・・・ヒック」


「・・・よかったら私のも食べるニャ?」


 ノワルがめずらしく自分の食べる分をエルフと獣人の少女に渡すとクレアやリゼが茶々を入れる。


「あのノワルが誰かに自分の分をあげる・・・だと?」


「あの食事に関してだけはストイックなノワルさんが?」


「ノワルさん!何かおかしな物でも食べたんですか!?」


 ちなみに、クレアは本気で言っている。


「ポーション・・・いる?」


 各自のリアクションを聞いたノワルは一息おいた後に尻尾をブンブンと振りながらリゼ達に抗議した。


「ニャーーー!!!私だって人の心はあるニャ!というか今まで私はどんなふうに思われてたニャ!!」


 その問いに各自は辛辣な言葉をサクサクと返していった。


「飲んだくれだろう?」


「食いしん坊?」


 これに関しては2人とも素で言っているようだ。


「え、えっと美味しそうに食べる?」


「(コクコク)・・・」


 クレアは気を使いルルは高速で首を縦に振り全力で肯定している、食事関連のイメージしかないのが悲しいところだな。


「なんで食べ物に関してのことばっかニャ!?森に住む美しきレンジャーとかのイメージはないニャ!?」


「「「「ない(です)」」」」


 息ぴったりに応える仲間達。


「ふふっ!あっはは!皆さんは本当に仲がいいんですね!」


「なんか、皆さんを見ていたら今までのツライことなんでどうでも良くなっちゃいました!」


 少女達の言葉を聞いてノワルは一瞬困ったような顔をしていたがすぐにいつもの調子に戻り仲間とふざけあう。


 ノワルがふざけリゼが怒りクレアはなだめてルルはマイペースにご飯を食べる・・・いつの間にか少女達の顔には笑顔が戻っていた。


 全ての奴隷達がこんな風に笑えるようにと、俺は密かに誓った・・・。


 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・


 朝、昨日遅くまで騒いだせいか少し眠そうな顔をしている少女達から奴隷商の拠点を教えてもらっていた。


「私たちがいたのはここにあるお屋敷です!兵士さんや魔術師さんがたくさんいました!」


「そうか、ありがとう」


「君達には安全な場所を用意してある・・・安心してくれ」


 少女たちはあらかじめ連絡しておいたシグの村に送り、奴隷達の救出作戦は今夜行われることになった。


「そろそろ日が暮れますね」


 襲撃する屋敷に近い森の中で待機しているともう日が暮れてきたようだ、そろそろ時間だ。


「ああ、おそらく拠点は一つじゃないだろうが、教えてもらった場所の兵士を問いただせば残りの拠点もわかるだろう」


 リゼ達の表情は固い、さすがに緊張しているか。


「皆、作戦通りに頼む・・・いざとなったら村まで転移させるゆえ大丈夫だ」


「そ、そうですね!ヴァルディ様から貸して頂いた外套もありますし!」


 リゼ達にはあらかじめ黒い外套を装備させてある、防御力はほぼ無いが魔法に対する耐性が高い。


 この世界でイレギュラーがあるとすれば魔法だけだ。


「では時間だ、行こう」


 巨大な門の中には衛兵が2人、俺が正面から突破しリゼ達は裏にまわる。


 もし裏門から逃げようとする者がいた場合は不意をついて攻撃するという作戦だ。


「ん?なんだ?人影?」


「おい!貴様!止まれ!!ここは立ち入り禁止だ!」


 衛兵が静止をかける・・・が無視をする。


「聞いているのか!それ以上近づくと捕縛す・・・」


「“爆炎の玉”(フレア・ボール)!」


 巨大な火の玉を見た衛兵達の反応は決まっていた。


「な、なんだ!?たっ、退避ィ!!!」


 ドウッ、と門に触れた瞬間に爆発した火球は地面を抉り門を溶かしていた・・・それを見た奥に控えていた衛兵の1人は怯えながらも本来の役割を果たし。


「て、敵襲!!」


「敵は何人だ!?」


「て、敵は・・・ひとり・・・です」


「はぁ!?」


 上官らしき人物が駆けつけると間抜けな声を上げ報告を聞き返していた。


「さてと、まずは一つ目・・・!」


 俺は無い口角を上げるとそのまま次々と屋敷を攻略していった。


 そして最後の屋敷を襲撃しようと思っていたのだが、ここで問題が発生した。


「ん?この屋敷は、結界魔法か」


「貴様!!?あの時の!屋敷が次々に襲撃され奴隷共が逃げていると報告聞いてはいたが、貴様だったかっ・・・!!」


「お前は昨日の貴族か・・・こんなところで会うとは奇遇だな」


 貴族の男はかなり驚いているようだったがすぐに冷静さを取り戻し言葉を続ける。


「まあいい!いくら貴様が強くてもこの結界は破れんぞ!」


「ヴァルディ殿!屋敷の様子がおかしかったので報告にきました!見た所裏門や抜け道も無かったものですから・・・」


 おそらくこの屋敷は結界魔法を使う前提で作られたものなのだろう、それにしても結界魔法に余程の自信があるみたいだ。

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