第36話 ハズレアイテム



「それで、相談の内容はどのようなものだ?」


「見た所、村はかなり豊かになってきているようだが・・・」


「はい・・・村が豊かになったのはいい事なのですが、人が増えた事によって魔獣の襲撃も増加傾向にあります」


「魔獣出現の報告があるとシルヴィス殿が向かって追い払ってくれるのですが、それだけでは手が足りず」


 シグの様子からしてシルヴィスに負担をかけているのが嫌なのだろう。


「それに、もしシルヴィス様でも敵わない魔獣が攻めてきた時は・・・」


「なるほど、村を防衛する手段が無いというわけか・・・それなら助けになれるかもしれん」


 俺が持っている召喚石をシグに渡しそれを使用すればモンスターの召喚権を使わずにこの村を防衛できる。


 自分が召喚した方が強いモンスターを出せるが、召喚権を使ってしまうと色々困るからな・・・それにこの村の周囲にはそこまで強い魔獣はいないから大丈夫だろう。


「ほ、本当ですか!?面目ありません・・・」


「落ち込むことはない、君はよくやっている」


「とりあえずシグ殿にはこれを渡しておく」


 シグに渡したのはここいらの魔獣程度なら敵わないであろうモンスターを封じ込めた召喚石を三つ、そしてもしもの時の為のレアな召喚石を一つだ。


 そして・・・通信石を一つ、もっと早く渡しておくんだったか。


「ヴァルディ様ッ!!?これは全て召喚石ですか!!?」


「ああ、一つを除いてな」


「召喚石!?国宝級の代物ではありませんか!?」


「男爵ですら一つ入手するのに一年はかかった代物を四つも・・・!!?」


 男爵の爵位を持つ者ですら一年か・・・異世界での物の価値は分かったつもりだったが、召喚石はホイホイ見せる物じゃなさそうだ。


「その色が違う召喚石は本当にピンチの時以外使わないように保管しておいてくれ、それとその石は・・・」


 その後、通信石についての説明をし、表に出て召喚石を使ってみようという話になったので実際に使用し現在は目の前に三体のモンスターが並んでいるのだが・・・。


「ヴァ、ヴァルディ殿・・・こ、これは」


「は、はは・・・リゼ・・・私たちこれから死ぬニャ・・・?」


「ボ、ボクこのモンスター知ってます・・・魔境の奥地に住むっていう・・・」


「こ、このモンスター、一体で王都を滅ぼせちゃうんじゃ・・・」


「・・・(ガクガク)」


 この召喚石は全部ガチャのはずれアイテムなんだけど・・・使い道ないからカンストしてるんだよな・・・。


「このモンスターは全て君の支配下にある、気を付けて扱ってくれ」


「ヴァルディ様・・・このモンスター達は全てAランク相当・・・いやそれ以上の力を持っています・・・」


 !?確か、モンスターの序列は基本的にSランクが最高だからかなりの高ランクモンスターという事か・・・。


「私に扱えるでしょうか・・・?」


「大丈夫だとも君の指揮能力はかなりのものだ私が保証する」


「君なら正しく扱えると信じているとも」


「は、はい!頑張ります!本当にありがとうございます!」


 ところで問題はこれだけなのだろうか?この子は色々抱え込む癖があるからな・・・。


「問題はこれだけか?他に手伝えることはあるか?」


「実はもう一つだけ・・・魔獣が出没するようになってから狩人が満足に狩りを行えず村の食糧が不足しています・・・」


 やっぱりあったか・・・しかもかなり深刻な問題だ。


「そうか、よく言ってくれたな・・・それに関してもなんとかしてみよう、君は少し休むといい」


「ヴァルディ様っ・・・///」


「やっぱりお優しい方・・・(とろん)」


「・・・ジーーー・・・ヴァルディ殿はシグ殿に甘くありませんか(ボソッ)」


 リゼは頬を膨らませ拗ねた子供のような顔をしていた。


「どうした?リゼ殿?綺麗な顔がもったいないぞ?」


「なっ・・・///」


「ヴァルディさんはいつか後ろから刺されるニャ・・・」


・・・・・・・・・・・・・・・・・・・


 その後、数日間に渡り周囲の魔獣を狩り続け、村の全員が毎日お腹いっぱい食べても半年以上は確実に保つほどの食糧を確保することに成功した。


 さて、シグの手伝いも終わったな・・・リゼ達と話し合った通り今日辺りに国王に報告に行くか。


「皆、そろそろ準備はできたか?あまり早くても怪しまれるが逆もあるからな」


 俺が声をかけるとリゼが部屋の中から焦ったように返事をしてくる。


「もう少し待ってください!先に外で待っていて下さい!」


「了解した、急かしている訳ではないからゆっくり準備するといい」


 そうして、この後シグとシルヴィスに別れを告げ俺たちは無事に王都へと帰還した。


「2回目の謁見でも緊張するニャ・・・」


「ノワル殿大丈夫だ、今度は貴族もいないだろうしな」


「そうだぞノワル、私達は陛下に報告をしに行くだけだ」


「リゼさんどうしたんですか?この間はあんなに緊張していたのに・・・」


 確かに・・・どうしたんだろう、魔獣を狩りまくったせいで感覚がちょっとおかしくなっているのか?


「初めての謁見であんなことがあったんだ、多少図太くなるだろう?」


「ハハハッ、そうか」


「笑い事ではありません!」


「皆様、国王様が到着なされましたのでお入りくださいませ」


 疑われないように上手く報告しないとな・・・。

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