第32話 王宮への呼び出しと国王からの提案



 俺達が村から王都に帰還し、しばらく経ち・・・それから簡単な迷宮を攻略したり低級モンスターを倒したり色々依頼をこなしていく内リゼ達の腕はかなり上達した。


 パーティーランクも一つ上がった頃、俺達の宿に王宮からの使いが来て国王から話があると知らされた。


「ど、どうするニャ〜!冒険者が王宮に呼び出されるなんて只事じゃないニャ!」


「お、落ち着けッ!わ、私だってこんな事初めてなんだ!」


「処刑とかされたらどうしましょう!?」


 厄介なことになったな・・・よりにもよって国王から直々の呼び出しか。


 まさか、男爵の件がバレたか?いや、あの付近に誰もいなかったのは魔法で確認済みだしな・・・とりあえず王宮に行ってみるのが一番手っ取り早いだろう。


「とにかく落ち着こうではないか、あと処刑するつもりなら、使いではなく衛兵を寄越しているはずだ」


「あ・・・そっか・・・ご、ごめんなさい」


「確か日時は明日で私たち全員への召喚命令だったか・・・」


「とにかく慌てても仕方がない、それより今日受ける依頼のことでも考えようではないか」


「ヴァルディさん・・・!確かにそうですね!ボク達はこれから受ける依頼のことだけ考えましょう!」


・・・・・・・・・・・・・・・・・・・


 そして次の日、俺達は控えの間にて謁見を待っていた。


「うっぷ・・・き、緊張しすぎて気持ち悪くなってきたニャ・・・」


「ノワル・・・お前昨日の夜、緊張を紛らわすために飲んだな?」


「ニャ!?そ、そんなわけないニャ!ちょっとだけニャ・・・」


「ノワル貴様ッ!国王様の御前で二日酔いなど、なにを考えているんだ!」


 しかしノワルは本当にブレないな・・・そこが彼女のいいところでもあるんだが。


「ハハ、いいではないかリゼ殿、案外ノワル殿ぐらいの気持ちでいるのがいいかもしれんぞ?」


「そ、そうニャ!これは緊張を紛らわせるために必要なことだったニャ!」


「ノワルさんは本当になんというか・・・でもノワルさんのお陰でボクは少し緊張がとれました!」


「私もちょっと気が楽になりました!ノワルさんのおかげです!」


「ねむ・・・い・・・」


「ルル殿少しの辛抱だ、これが終わったら今日はゆっくり休もう」


「分かった・・・がんばる・・・!」


 逆にルルはかなりマイペースだ・・・なんだか浮世離れしているというか・・・。


「皆様方、謁見の準備が整いました、お入りください」


「では、行くとするか」


 案内をされ、隔てられた扉を開くと最奥部には黄金や宝石で飾り付けられた空席の玉座がありその中央には貴族達が並んでいた・・・流石はファンタジー世界といったところだ。


 俺達は玉座の前まで行き片膝をついて国王の登場待った、何事もなく終わればいいが・・・。


「国王陛下の登場である!!」


 こういう場合の行動がわからずに少し焦ったがとりあえずリゼ達がしているように頭を深く差げ国王が姿を表すまで待つと思った以上に老いた老人が姿を現し玉座に着いた。


「面を上げよ」


 国王がそういうとリゼ達が一斉に頭を上げるが、なぜかリゼの表情が曇っている。


 リゼの視線の先には国王ではなく、玉座のそばに佇む近衛騎士に向いているようだ・・・。


「今回、其方達を呼び出したのは他でもない、そこにいる漆黒の鎧を纏った騎士・・・確かヴァルディと言ったか?」


 急に名指しをされたので驚いたが、即座に思考を切り替え返事の一つでもしておいた方がいいと思ったので短い返事を返した。


「ハッ」


「聞くところによると其方はこの国に来て早々にAランク冒険者と決闘を行い倒したと聞いたが?」


「その通りでございます」


「戦ってみて其方はどう思った?」


「正直なところ連携は見事でしたが魔法使いの魔法をみて拍子抜けしました」


「ハッハッハッハッ!やはり聞いていた通りの男のようだな!」


 正直な感想を言っただけなんだけどな・・・それに俺はどんな人物として伝わっているんだろうか。


「今回呼び出したのはそのことでな、戦った魔法使いは王宮魔術師と変わりないほどの使い手でな」


「そんな魔法使いを拍子抜けという其方の実力を見込んで頼みがある」


「どうだ?其方王宮に仕えてみないか?それなりの報酬も用意しよう」


「「「「「!!!!!!」」」」」


「申し訳ないがそれはできない、お断りする」


「ヴァ、ヴァルディ殿・・・!!!」


「きッ、貴様ァ!!!国王様が下手に出ていれば調子に乗りおって!!」


「そうだ!!貴様ごとき下級冒険者が断れる立場かッ!!」


 俺が即答すると周りの貴族たちが声を荒げ本性をあらわにする、確かにファンタジーあるあるだけどな・・・。


 散々、罵倒を浴びせられてきた俺だ、今更この程度優しいものだ。


「フン!そんなに、その『貧相なパーティーが大事か』揃いも揃って汚らしい格好を・・・」


「そこの獣人など、獣の匂いがする!森の野蛮人など連れ込みおって!」


「騎士もどきもいるではないか?貴様らなど娼婦がお似合いだ!」


「「「「ッッッ・・・」」」」

 




 

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